第一章 第15話 公国の現状把握
(・・・成る程な・・・、そういう事か・・・)
諸々の状況を聞いて、俺は彼女等の立場を大凡理解出来た・・・。
つまり、彼女等の故国である【オリュンピアス公国】は、一般に王国と呼ばれる【フランソワ王国】から、突然【公都テルミス】が奇襲を受けて半日程でテルミス城と城下町は失陥してしまったそうだ。
王国軍の手により、彼女等の両親である公王夫妻は殺されてしまい、辛うじて親衛隊の護衛を受けて妹達は助け出され、帝国と王国の戦争に王国側として参戦していたアンジーの元に連れ出された。
だが、その直後に王国軍は駐屯していた公国軍に奇襲を仕掛け、公国軍は善戦したが数の暴力で追い立てられたらしい。
その後、必死の逃亡戦をアンジーは、妹達を載せた馬車を守りながら繰り広げた様だが、最終的にアンジー以外の部下とは逸れてしまい、例の荒野でのクレバスでの蜥蜴型魔獣にアンジーが襲われて、俺と邂逅する事になった訳か・・・。
一連の流れは理解したが、幾つもの疑問点が浮かび上がって来る・・・。
そもそも、何故、王国は友軍たる公国に対して、奇襲を公都と駐留軍に仕掛けたのか、理由は?
そして、この奇襲行動に王国が移るにあたり、軍隊の隠蔽規模が大きすぎて、どうやって国境を越えたり街道を進んだのか?
更には、そうやって奇襲を掛けるにあたり、情報遮断はどの時点から始まっていたのか?
他にも疑問点はあるが、取り敢えずこの3点を知りたいと思い、彼女等も同意してくれる。
なので、先程の自己紹介で教えた、彼女等の言うところの【星人ほしびと】の力を見せる事にした。
現在の様々な情勢を知る為に、此の惑星の全域に【軌道探査ブイ】を衛星軌道に配置させているのだが、その説明をしても彼女等には理解できないだろうと考え、魔法的な表現で精霊に各国を見張らせていると教えて上げて、実際に軌道探査ブイが地上に打ち込んだ【ランドジグ】から受け取る、様々なデータから彼女等にもわかり易い「動画」を見せて上げる事にした。
中でも、彼女等が最も知りたいと思われるオリュンピアス公国の様子を、リアルタイムで見せて上げた。
当初、船内の空間に描き出された立体映像に驚愕していた彼女等も、5分程見てたら落ち着いてきて、目を皿のようにして立体映像を見つめ始めた・・・。
暫く見つめていたアンジーが、俺に尋ねて来た。
「・・・ヴァン・・・、何とか今見えている民衆の声や、駐留している王国軍の声が聞こえないだろうか?
見ているだけでは、会話内容が判らないので、推測しか出来ない・・・」
「判った、雑音も拾ってしまうから、ピックアップした個人に絞り声を聞いてみよう」
そう言って、[ヘルメス]に音声を拾い上げさせた・・・。
住民A「・・・この王国軍による、戒厳令ってやつは何時まで続くんだ!
この戒厳令の所為で物流が制限されたから、商品が入って来ねえから店を開く事も出来やしねえよ!」
住民B「ああ、王国軍が街道に設けた関所と城門での取り締まりで、小麦を始め野菜類も王国軍が真っ先に接収しまくってやがるから、おこぼれしか俺達に廻って来ないぜ!」
住民C「どうやら、王国の奴等は公爵様夫婦を殺害した後、公国を王国に組み込む為の代官を王国から派遣して、正式に王国領直轄地にする魂胆らしいぜ!」
住民D「何でも【紅の公女将軍】様に軍を率いさせて遠征に参加させたのも、この王国軍による奇襲を行う為の策略だったって話しだ!」
住民A「なんてこった・・・、それじゃあ、かなり前から王国は公国を攻めるつもりだったのか・・・?」
住民B「なんでも、噂では紅の公女将軍様の軍も、王国軍の奇襲を受けて壊滅してしまったそうだよ・・・」
住民C「王国の奴等はなんて汚えんだ! つい2週間前まで公国は友邦国家だったのに、宣告も無く奇襲して来やがるなんて・・・」
住民D「この分だと、王国の従属国は全て王国の直轄地にしてしまう為に、いきなりの侵略を受けるんじゃねえか?」
住民A「おい、王国軍の巡回部隊がやってくるぜ! 家に籠もろうや!」
住民B「そうだな、因縁をつけられて、家を失ったり最悪命を失った奴もいるからな!」
住民C、D「「そうだな!」」
そんな会話が立体映像と共に聞こえて来て、彼女等は一様に沈んでしまった・・・。
(・・・無理も無いな・・、彼女等にとっての故国が敵国の侵略を受けて、無理矢理の接収行動に民衆が塗炭の苦しみを受けている姿は、心が引き裂かれる思いだろう・・・)
そう考えて、俺はアンジーに提案した。
「今後、他の地域でも今見て貰った様に、動画を出来るだけ集めて置く。
そして〈此れは〉と判断したものを、アンジーに見て貰い相談の上で行動しよう。
それまでは、従来通りに交易都市に船を隠蔽モードで近づき、情報収集をした上で大公国に進路を取る。
それで良いかな?」
「・・・ありがとうヴァン!
貴方に迷惑を掛けるけど、お願いするわ!」
「構わないよアンジー、俺も王国のやり口には辟易する思いだ!
奴等に一泡吹かせてやるのは、俺も願うところだ!」
そう言って、俺は降下艇を隠蔽モードのまま上空100メートルくらいの高度で、交易都市に進路を取らせた。
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