第一章 第14話 姉様のお相手を吟味する 【リンナ・オリュンピアス】視点
◇◇◇【リンネ・オリュンピアス】視点◇◇◇
私と【リンナ】が目を覚ましたのは、全然今迄見た事のない場所だったの!
何だか全体が白っぽい色で清潔感に溢れた部屋で、見たことも無い魔導具らしき物が溢れている・・・。
そんな辺りの風景に混ざって、見慣れた女性が居る・・・姉様だっ!
「「姉様?!」」
私とリンナは、姉様の胸に飛び込みワンワンと泣いてしまったの・・・。
暫く私達3姉妹は、全員で泣いていたのだけど、父様と母様の事を姉様に報告しようとすると、姉様が制してきたの。
「・・・今は、貴方達からの報告は聞いて上げられないの。
それよりも、貴方達を無事に催眠状態から回復させてくれて、王国軍から救ってくれた恩人に挨拶しようと思うの・・・」
そう説明されて、若干不満に感じたけど、姉様と私達を救ってくれた恩人と聞かされては、オリュンピアス公国の公女が、お礼もいえないのか、と思われるのは非常に恥ずかしいと思い、姉様に連れられて白っぽい清潔な部屋を出て、別の部屋に出向いたの。
何だかやけにピッチリと隙間のない扉を開けて、部屋に入ると狭い部屋に簡易なテーブルが置かれていたの。
其のテーブルの上には、果実ジュースらしき飲み物と焼き菓子が置かれていたの。
寝ていた期間がどのくらいか判らないけど、凄くお腹が空いてるみたいで、思わずグウッと私とリンナのお腹から盛大に鳴っちゃた・・・。
すかさず姉様が、
「・・・大変感謝致します・・・、リンナとリンネもお礼をしなさい・・・」
とお腹の音を誤魔化す様に言われたけど、部屋の主である男性はそれを手で制して、
「先ずは、二人共お腹が空いてるだろうし、アンジーも暫くまともな食事を取っていないだろう?
取り敢えず落ち着く為にも、軽く食事をしてくれないか?」
と言ってくれたので、姉様に無言で瞳で訴えると、姉様は顔を赤らめながら頷いてくれたので、早速、
果実ジュースらしき飲み物を飲ませて貰い、焼き菓子を頬張ったの!
(なにこれ?! スッゴク美味しい!!)
何の果実か判らないけど、甘いのにスッゴクさっぱりとした飲み心地で、幾らでも飲めそうな果実ジュースと、公国でも指折りの菓子店から取り寄せたと言っていた焼き菓子よりも、明らかにサクッとした歯ざわりの焼き菓子は、まるで溶ける様に口の中で無くなっていく・・・。
あっという間にお菓子を食べ尽くして、ジュースも飲み干してしまった私達を見て、漸く人心地がついた私は部屋の主である男性を観察出来たの。
彼は、姉様と同じくらいの年齢に見えて、身長は姉様より高い・・・
それよりも何より、服越しでも判る筋骨隆々の身体は、武人と一目で判る程なの。
精悍な顔付きをしていて、決して美形では無いけど、非常に人好きする微笑みを浮かべて、私達を優しく眺めている・・・。
(・・・公国では、一回も見た事の無い男性ね・・・)
そう思いながら、観察を続けていると、私達が直ぐに果実ジュースと焼き菓子を食べ尽くしたのを見て、温かい湯気が立つパン類とスープを亜空間から取り出して見せたの。
更に食器セットと、各種のジャム類等を同じく亜空間から取り出し、テーブルに並べ始めたわ。
「うわあ、温かい料理だよ!
なんで亜空間から取り出した筈なのに、温かい料理が出てくるの?!
普通は冷めた食材や、お菓子しか亜空間に入れられない筈なのに?!」
そうリンナが驚いているのを聞きながら、私は幻術では無いかと疑いながら、味見を兼ねて彼に頭を下げて食べ始めたんだけど、また、驚いちゃった!
(・・・なにこれ?! 本当に焼き立てのパンと温かい野菜スープなんて、信じられない!
亜空間だろうと、時間経過は行われるから、食物は直ぐに腐ってしまうから、比較的に長持ちする焼き菓子の類しか亜空間に入れて居られない筈なのに?!)
そんな中、
「・・・俺もこの際食事にしようと思うから、アンジーも妹達と一緒に食事をしようじゃないか!
何か、ご希望の料理かお菓子は有るかな?」
と彼が発言し、
「・・・ありがとうございますヴァン、特に好き嫌いも無いので、ヴァンの判断にお任せして頂きますね!」
と姉が返答した言葉に、私とリンナは驚いてしまったの!
彼に「アンジー」と呼ばせて姉が了承しているのは、もしかすると身分を隠しているのかも知れないと思っていたが、彼のことを「ヴァン」と姉が呼んだ事にショックを受けちゃったわ!
普通、公国や王国そして帝国でも、妙齢の女性が同じくらいの年の男性を呼ぶ場合、家族や恋人でも無い限り名前のまま呼ぶことは有り得ないのが常識だし、ましてや姉は堅苦しい性格をしているので、これまで私達以外の家族である両親にさえ、御父上様や御母上様と日頃から呼んでいる。
ましてや、この堅苦しい姉は【紅の公女将軍】として、周辺国家にも知られている上に、適齢期にも関わらず浮いた噂一つ無い堅物で有名なの。
そんな姉が、同じくらいの年の男性に対して名前だけで呼ぶなんて、有り得ないわ!
そんな事を考えながら食事を続けていると、「ヴァン」と姉に呼ばれた彼は、お祖父様の統治する大公国で人気の【アサリのパスタ】と海藻サラダを亜空間から取り出して、また、新しい果実のジュースをテーブルの並べてくれたの。
私達は、公国では噂でしか聞いた事のないアサリのパスタの食べ方が判らないので、彼からフォークで適切な量を巻き込んで食べる事を教えて貰い、美味しい食事を堪能させて貰ったの。
一時間程食事を楽しみ、大分リラックス出来たところで紅茶を振る舞って頂き、私達は各々の素性と現状を確認し合う事となったわ。
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