第一章 第12話 戦闘後の後始末

 さて、此奴等の処分方法を検討するかな。




 30人に及ぶ人数を どの様に処理するか相談する為に、アンジー殿のバリア・バルーンを解除して、彼女の意向を聞くことにした。


 バリア・バルーンを解除した瞬間、アンジー殿は私に向かって直立不動になると、深々と頭を下げてきた・・・。




 「大変感謝する! 私と妹達は貴方のお陰で救われた。


 是非、全ての案件が解決したら、私からの礼を受け入れて貰いたい!」




 と発言して来たので、




 「いや、礼など要らないですよ。


 アイツ等王国軍のやりようが、あまりにも俺の美意識から逸脱しすぎていて、我慢出来なかっただけなのですから」




 と返事して、それよりも王国軍人の処理と、彼女の部下と言われていた2人の死体の扱いを相談する。




 現在の我々には、馬車と馬が数十頭を保持されている。(王国軍人達が乗っていた馬達含む)


 もう、俺は彼女に対してある程度の真実を明かすつもりなので、【時間凍結】すれば、亜空間に生きたまま収納出来る事を教えて、どうするか相談する。




 「・・・2人の遺体は、出来れば遺族に返却してあげたいと思うので、余裕が有るのなら亜空間に保存してくれると幸いです・・・。


 王国軍人達は死んだ者であれ、生きている者であれ、此処に置いて行くことになると、他に私達を追跡している王国軍に発見されてしまい、私達の痕跡を辿られる事になります。


 出来るのであれば、亜空間に閉じ込めて置いて、落ち着いたら処分を考えましょう・・・」




 そのアンジー殿の意見を尊重して、基本方針はその方向とした。


 


 [ヘルメス]に命令して、降下艇を中継点にさせる事で、母艦【天の鳥船アメノトリフネ】に有るカーゴルームに、亜空間を通して転送する。


 アンジー殿は、空間に開いた大きい亜空間ゲートに目を丸くしていたが、それ程には驚かないで先ずは彼女の部下2人を丁寧に亜空間ゲートへ送り出した。


 次に馬を時間凍結して順に亜空間ゲートへ送り、改めて王国軍人の持ち物を確認しながら、重要そうな物を接収して、俺が時間凍結を掛ける事で、王国軍人達を亜空間ゲートに放り込んだ。


 


 そして[ヘルメス]に命令して、死んだ王国軍人を使い、詳細な此の惑星の住人たる【人類同胞】のデータを解析させる。


 一通りの後始末が終わったので、隠蔽インビジブルシートを別の場所に張って、周囲を降下艇に警戒させた上で、改めてアンジー殿との自己紹介をやり直した・・・。




 「・・・改めて自己紹介をさせて頂きます・・・。


 私の本当の名前は、 【アンジェリカ・オリュンピアス】と申します。


 【オリュンピアス公国】の第一公女にして、公国に於ける公位継承者としての、第一位にあたります。


 妹達は、【リンナ・オリュンピアス】【リンネ・オリュンピアス】と言い、第二、三公女にあたります。


 卑劣にも公国を突然の奇襲によって蹂躙した【フランソワ王国】によって、追われる立場にあります。


 現在、我々の祖父が統治する【オリンピア大公国】に向けて、助力を求めて逃避行している最中にあります。」




 その内容を聞かされて、幾つかの疑問点を解消出来たので、今度は俺の自己紹介をする。




 「俺もその貴方の真摯な言葉に対して、改めて自己紹介させて貰おう。


 俺の真実の名前は【ヴァン・ヴォルフィード】と言い、出身は此の星では無く、あの夜空に輝く星の彼方から来訪した。


 此の星に来訪した理由は、貴方と同じく故郷である【アース】を外敵に滅ぼされてしまい、同じ種族である人類同胞を求めて、星の海に漕ぎ出したのだ・・・。


 そして星の海を渡ること5回目にして、漸く同じ種族である人類同胞に出会えたのだ。


 だが、此の星では未だに同族同士での諍いを繰り返していて、まだまだ統一した国家など夢のまた夢の状態の様だ。


 そんな中、短い付き合いながら荒野にて懸命に生き残ろうと努力し、妹達を必死に守り、王国に殺された部下の死を悼み、王国軍人の卑劣極まる行為に歯噛みしていた姿は、俺の心の琴線に触れて共感させてくれた。


 俺は、心の中から自然に湧き出した共感を信じて、アンジェリカ・オリュンピアス公女に助力したいと思う。


 是非、貴方の進む道に同行させていただけないだろうか?」




 その俺の申し込みに対して、アンジェリカ・オリュンピアス公女は威儀を正すと、畏まった様子で返事してくれた。




 「・・・やはり、貴方様は此の世界に千年に一度降臨された、星界からの異邦人エトランゼ【星人ほしびと】であらせられますのですな?


 貴方方、【星人ほしびと】は過去5回降臨された際に、私の故国と同じく大国によって滅ぼされかけた小国を救う事で、その大国を懲らしめて新しい王朝を打ち立てたと伝承されております。


 どうか、こちらからもお願い致します。


 私に貴方様の、偉大なる御力でのご助力を戴きたい!」




 こうしてお互いに自己紹介と願いを交わしあった俺と彼女は、お互いに助け合いながら努力して行く事を誓い合ったのであった・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る