第一章 第5話 邂逅やり直しの為の事前準備
一先ず、母艦【天鳥船(アメノトリフネ)】の居住空間にある、休憩スペースで俺は寛ぎながら本日あった様々な出来事を反芻して考えてみた・・・。
(此の惑星に降下しようとしたら、妙な状況に陥ったものだな・・・、だがこれも有りだと考えよう、
此の惑星に到着してから、【探査ブイ】を此の惑星の周回軌道衛星上に128機配置し、マルチセンサーを地表に向けて精査させてたが、地下にまでは届かせていなかったし、当然地上に配置させて無いから、現地生命体や諸々の詳細なデータは得られていない。
俺の我が儘だったが、自身の足で始めての人類居住可能惑星へ足跡を残したいと云う願いは、思わぬトラブルが伴ってはしまったが、実験的な試みとして現地生命体との遭遇と各種資料の回収、そして地表面へのマーカー・ポイント設置が行えたから、成功と見てよいだろうな)
そんな風に、良いように考えを進めてから、捕まえて来た蜥蜴型生物のデータを[ヘルメス]から受け取る。
「・・・ふむ、前回の来訪地であった【恐獣惑星】に居た、蜥蜴型恐獣の小型版と同等と見てほぼ良いな・・・。
実際に手合わせしてみても、あまり強くはなかったからな」
そんな事を独り言ちながら、詳細な資料を空間投影させて確認していると、一つのデータが目に付く。
「おい[ヘルメス]、此の蜥蜴型生物のデータで心臓と融合している石の様なモノは何なんだ?
何かの器官なんだろうが、恐獣惑星での似たような恐獣には無かった代物だ、詳細な解析をする為に2、3体解体してみてくれ!」
《・・・了解しました・・・》
[ヘルメス]も気になっていたのか、簡単に了承して作業に取り掛かる。
その間に、【人類同胞(じんるいどうほう)】たる彼女達3名の健康状態と、センサーで調べた身体構造のチェックを行う事にした。
医療用ベッドで寝かせている彼女達3名には、鎮静効果剤と【命水(アムリタ)】を服用させてある。
これで彼女達3名は、滅多な事では病気にも罹らないし、毒物等を接種しても忽ちに酵素分解してしまうだろう。
ただ、恐らく文明レベルが故郷の【アース】からしてみると、持ち物や服の素材からして中世以前程度と考えられるので、母艦【天鳥船(アメノトリフネ)】船内での目覚めは混乱を引き起こすに違いない。
なので、もう少し調査してから、マーカー・ポイント設置をした場所である、彼女達との邂逅場所に戻ってから目覚めさせるつもりだ。
暫く間、彼女達3名の様々なデータを確認していると、[ヘルメス]から重要な情報が上がって来た。
何と、例の蜥蜴型生物の奇妙な石に近しいモノが、彼女達にも発見されたと言うのだ!
但し、彼女達の身体には蜥蜴型生物と違い、心臓に癒着しているのでは無くて、ほぼ身体の中心線のど真ん中からやや下方の臍の下辺りに存在しているというのだ。
俺の身体で云えば、分かりやすく考えるとほぼ【丹田】の辺りと思われる。
(・・・うーん・・・、此れは一体何なんだろうな?
臓器とも思えないし、何らかの病気で出来たモノとも思えない。
恐らくは此の惑星独自の、生命体にしか宿らない代物と思えるが、断定も出来ない・・・、
暫くは様子見する事にしよう・・・)
一旦、此の奇妙な石の事は棚上げして、他には彼女達の大脳皮質だいのうひしつから視覚野しかくや、聴覚野ちょうかくや、運動野うんどうや、嗅覚野きゅうかくや、味覚野みかくや、体性感覚野たいせいかんかくやを外部から精査して、言語及び生活習慣を確認して、俺の外部ライブラリーにアップデートして置く。
此れで俺は、彼女達と問題無く会話出来るし、最初こそ戸惑うかも知れないが、同等の生活スタイルを行えるだろう・・・。
さて、[ヘルメス]には引き続き此の惑星への調査と、預けた蜥蜴型生物の詳細な解析を命じて、俺と彼女達3名と馬達そして壊れたままの馬車を、マーカー・ポイント設置をした場所である、彼女達との邂逅場所に戻り、もう一度彼女達との出会いをやり直す事にしよう。
マーカー・ポイント付近を目に見えない様に防御フィールドで隔離して、俺達は降下艇に再度乗り込み防御フィールド内に降下した。
そしてほぼ同じシチュエーションにしてから、俺は彼女を揺り起こす。
「君、大丈夫かい?」
そして、ゆっくりと彼女は目を開けて、俺を視認すると言葉を発した。
「・・・貴方は何方(どなた)ですか・・・?」
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