第一章 第4話 蜥蜴型生物達を相手に運動確認
俺にとっては、初めての人類との邂逅(ファーストインパクト)だったのだが、蜥蜴型の生物から助け出した彼女は早々に気絶してしまったので、仕方無く周囲の状況を確認する事にした。
「[ヘルメス]、降下挺のマルチセンサーを最大限で維持し、母艦【天鳥船(アメノトリフネ)】は周回軌道から周辺宙域の情報収集をしながら、惑星各地に【探査ブイ】を隠蔽モードで降下させろ。
そして人に察知されない範囲で、全ての事象を記録させて精査するのだ」
《――了解しました――、ですが呉れ呉れも安全性を考慮し、PS(パワードスーツ)を脱ぐのなら、防御フィールド(バリアー)を展開しながら活動して下さい》
その返事に、俺は脳内で”判った”との意思表示をしながら、先ずは生命体の確認を行う。
近くには彼女の関係者と思しき2体の現地生命体が居て、彼女と同じくバリア・バルーンで保護している。
やや遠くには、故郷の資料に有った【馬】と酷似した生物が3体存在し、その内2体は何やら破損している物体を牽引している。
恐らくは、彼女達の所有物と思われるので、危害を加えずに保護して置くべきだろう・・・。
そんな事を考えていると、降下挺のマルチセンサーからの警戒音アラームが鳴り、脳裏に周囲の生物移動が映し出された。
「ふ~む、かなりの数がこちらに向かって来てるな・・・、[ヘルメス]、正体は?」
《確認致しました。
先程”マスター”が対処しました、蜥蜴型の生物で凡そ20匹、
大きさはまちまちですが、マスター達に向かって一直線に押し寄せて来ます》
その情報に俺の口角は釣り上がり、他者から見ると獰猛な笑みを浮かべる。
「ちょっと試してみたいから、防御フィールド(バリアー)を切って、此の惑星での運動確認をしてみよう!」
《まさか、又・、やる気ですか?!
前回での【恐獣惑星】で、存分に訓練したじゃないですか!
本当に身体を動かすのが、お好きなんですね・・・》
やや、諦めている様な疲れた声音で[ヘルメス]が反応し、
《・・・でしたら、なるべく殺さない様にして、標本サンプル確保に努めて下さいね。
詳細に分析しますので、検体は多い方が助かります・・・》
「・・・了解だ・・・、但し標本サンプルの死亡や破損は大目に見ろよ。
あまり手加減し過ぎると、面白く無いからな」
その俺の言葉を聞いて、[ヘルメス]は降下挺を隠蔽モードで滞空させて、彼女達をバリア・バルーン毎船内に回収して、馬達にもバリア・バルーンを投射して安全状態を確保する。
徐ろに俺はPSパワードスーツを脱着し、インナースーツも解除する。
次の瞬間、圧倒的な現地の空気に晒されて、俺は初めて此の惑星の外気を肺腑一杯に取り込んだ・・・。
「はぁ~、中々良い空気じゃないか!
此れが、今後俺が暮らしていく事になる、此の惑星の息吹なのだな~」
息をゆっくりと吐きながら独り言ちて、手足を伸ばしてストレッチを始めていると、漸く蜥蜴型の生物の群れがクレバスから顔を出して、短い手足を素早く動かし一心不乱に俺目掛けて突進して来る。
「おお、漸くのおでましか、さあ、楽しませてくれよ!」
大小様々な蜥蜴型の生物は、警戒心が存在しないのか、一瞬の躊躇も無く俺に襲いかかって来たので、俺は嬉しくなって感謝の印として、先頭の蜥蜴型生物に向けてアッパーカットを放つと、ものの見事に蜥蜴型生物は5メートル程後方に飛んで、ひっくり返ったままノックダウンしてしまった。
続いて右方から迫って来た蜥蜴型生物に向けて、左足での回し蹴りを叩き込むと、右足を軸にそのまま一回転させて、左方から鉤爪で切り裂こうとして来る蜥蜴型生物に対しては、その鉤爪を左足で薙ぎ払い、鉤爪を叩き折ってやった。
鉤爪はそのまま飛んで行って、他の蜥蜴型生物に突き刺さったが、蜥蜴型生物達は意にも介さずに突っ込んでくる。
俺は面白くなって来て、跳躍して蜥蜴型生物の背に乗ると、そのまま八艘跳びよろしく、蜥蜴型生物達の背を踏みつけながら跳躍し続ける。
暫くそうやって遊んでいると、明らかに蜥蜴型生物達の動きが鈍化して行く。
どうやら、長時間の素早い動きは蜥蜴型生物にとって辛いらしいので、仕方無くとどめを刺す事にする。
八艘跳びしながら、足先に感じる蜥蜴型生物の背から、大体の骨格が把握出来ていたので、蜥蜴型生物の脊椎の急所に背中から、足先での【浸透勁】(しんとうけい)を叩き込む!
此れには耐えられなかったのか、次々と動きを止めてしまった蜥蜴型生物を、亜空間ゲートを開き亜空間収納BOXに収納した。
「さて、良いぞ! 我々を収容してくれ」
そう[ヘルメス]に声を掛けると、降下挺は隠蔽モードを解除して地表に降りてきたので、カーゴルームに馬車と思しき残骸を収納させて、一旦、母艦【天鳥船(アメノトリフネ)】に戻る事にする。
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