第一章 第1話 運命の出会い

 いよいよ惑星降下軌道に降下挺が軌道変更した途端、警戒アラートが脳内に鳴る。


 


 《〈ビィーッ! ビィーッ!〉 降下予定地に存在する現地生命体を複数体確認、詳細データを開示致します》




 主幹(メイン)コンピューター端末の仮想AI[ヘルメス]が、脳裏に降下予定地の詳細データを開示した。


 降下挺が着陸する予定だった場所は、荒廃した大地で付近に人家も無く、人目に付く事は無いと判断して予め最適地と[ヘルメス]が判断し、自分も賛成した場所だったのに、たった降下挺に乗り込んで惑星降下を始めて降下軌道に乗る、僅か30分程の間に現地生命体が複数出現したようだ。


 恐らく、付近を縦横に走る大地の裂け目クレバスから地上に出て来たのだろう。


 


 (ふむ…、地下にまではセンサーを届かせてはいなかったからな、これは考えてみると今更ながら迂闊だったな…)




 そう脳内で独り言ちて、複数の現地生命体の詳細データを確認する。


 先ず目立つのは、約体長4メートルの四足歩行している蜥蜴型の生物・・・


 此奴は鋭い牙と鋭い爪を持ち、既に他の現地生命体をその牙と爪で傷つけているようだ。


 一方、傷つけられている現地生命体の方は、計3体いる様でその内2体は蜥蜴型の生物によって殺されているのか、身動き一つしていない。


 たった1体動いている現地生命体は、どうやら剣と盾を保持している様だが、他に武器の類いは持っていない様で、かなり文明面で原始的な種族と窺える。


 だが、その容姿やセンサーで拾えた反応から、この現地生命体はどうやら自分と同じで、〈始祖種族〉による種シード計画によって、あらゆる天体に散布された同じ根源を持つ【人類同胞(じんるいどうほう)】という同種族だろう・・・。




 (・・・これは緊急事態だ、一刻も早く救わなければ不味い!)




 そう判断して俺は、 降下挺に載せてきたPS(パワードスーツ)を、標準ノーマルモードで着込み命令を発した!




 「[ヘルメス]、俺はPS(パワードスーツ)で一気に降下しその勢いのまま蜥蜴型の生物を排除し、同胞を救い出すぞ!」




 《――了解しました――、ですが呉れ呉れも安全性を考慮し防御フィールド(バリアー)はMAXで展開して下さい》




 「当然の心配だが、無茶をするつもりは無いので、防御フィールド(バリアー)はMAXのままだ!」




 《…有り難うございます! それでは、気密ゲートを抜けて下部ハッチから降下して下さい…》




 その[ヘルメス]の指示通り、薄いエネルギーフィールドで出来た気密ゲートを抜けて、下部ハッチに移動する。




 「良いぞ! 投下しろ!」




 《…了解、下部ハッチオープン…》




 次の瞬間勢い良く空中に投げ出されたが、防御フィールド(バリアー)で覆われたPS(パワードスーツ)は、一切の風圧も感じない―――。


 暫くの間自由落下に身を任せるが、やがて此の惑星の重力バランスを感覚で覚えたので、今一度降下予定地に居る現地生命体の状況を精査してみる…。


 なんとほんの僅かの間に、たった1体残っている現地生命体は剣と盾を失っていて、蜥蜴型の生物の前足で組み伏せられている…。


 


 (…不味いな、急ぐとしよう…)




 PS(パワードスーツ)の機体制御バーニアで加速を掛けながら、肩部に有る砲塔キャノンからバリアー・バルーンを蜥蜴型の生物に組み伏せられている現地生命体一体と倒れ伏している二体に発射した。


 バリアー・バルーンは、今にも食い付こうとしていた蜥蜴型の生物から見事に現地生命体を救い出し、そのまま安全な空中に滞空し始めた。


 その一連の状況が理解出来ないらしい蜥蜴型の生物は、野生の勘なのか空の彼方から凄まじい速度で落ちて来る俺に気付いて視線を向けた。


 だが、当然ながらその行動は既に遅きに失しており、次の瞬間にはPS(パワードスーツ)の蹴りを蜥蜴型の生物は上半身に受けて爆散してしまった。


 なるべく被害を拡散せずに終わらす為に、慣性制御をPS(パワードスーツ)に施していたお陰で、殆ど周囲に衝撃波は生まれなかったが、流石に至近には砂埃が舞っている…。


 始めての惑星降下が、些か派手になってしまったがそんな事よりもバリアー・バルーンで保護した現地生命体が気になった来た。


 安全な空中に滞空させていたので、ゆっくりとバリアー・バルーン毎地面に落着させて確認してみると、どうやら現地生命体は気を失っているようだ…。


 鎧を着込んでいるものの、若干華奢な体付きと豊かな髪の毛が兜から出ていて、若い女性な事が確認出来た・・・。


 考えてみれば俺にとっては初めての生命体との接触で、コールドスリープ中の催眠学習で学んで来た知識でしか、同種族である【人類同胞(じんるいどうほう)】を知らない俺は、若干の緊張を強いられた―――。


 暫く彼女を見つめていると、やがて気が付いたらしい”彼女”はゆっくりと目を開くと、俺を視認してから弱々しく言葉を発した・・・。


 


 「――――――・・・神・・・様・・・?――――――」




 そう弱々しく”彼女”は呟くと、そのままゆっくりと目を閉じて失神してしまうのだった・・・




 此れが、自分【ヴァン・ヴォルフィード】と【アンジェリカ・オリュンピアス】との出会いである。

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