第32話
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~
夜9時過ぎ…街で遊んで
友達の家に戻る途中
雨が降ってきた
雨宿りを兼ねて
飲み物とお菓子を買うのに
コンビニに寄った
週刊誌の陳列に何気なく目をやると
仁さんの名前が飛び込んできて
「うぉぉ…熱愛だって?!」
思わず声が出てしまった
一緒にいた友達が 次々と声を上げる
「木村 仁って、かっこいいよな!」
「また女 取っかえ引っかえだろ?」
「次は女優か?それともアイドル?」
「俺もモテた〜いっ!!!!」
友達と頭を突き合わせて雑誌を覗いた
「あ…?」
「うわぁ!キスしてるぅぅぅ!」
「一緒に部屋に入ったってことは?」
「間違いなく ヤってますよね~ヘヘッ…」
「いいなぁ〜俺も彼女欲しいィィ〜」
「・・・・・・」
これ、うちのマンションか?
姉ちゃん…ぽいけど 似てる人?
いや、まさか…姉ちゃんには 優さんが…
「どした?さとちん!」
「え?…あ、なんでもない(*´꒳`*)」
「寝みぃ〜(。ρω-。)」
「寝かせねぇよ!これからゲームだぞ」
「朝メシ用のパンも買って行こうぜ…」
「・・・・・・」
明日 姉ちゃんに…確かめないと…
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翌朝…
〜 優 side 〜
ギャン泣きした俺の様子を見て
心配だからと言って
事務所に泊まってくれた桃李に
退職願を渡す
「ゆ、優さん!何これ!」
「ごめん、だいぶ おかしな精神状態で
夜中に書いたものだけど…」
「ちょっと 待ってくださいっ!!!
籍はここに置いたまま
向こうに行くって話だったでしょ!
じ、仁さんは
この事 知ってるんですかっ?」
「昨日 会ったけど
取り込み中だったし…
桃李から渡しておいてよ」
「嫌です!受け取りませんよ!
優さん、ダメですって!」
「…飛行機、16時だったよな?」
「そ、そうですけど…」
「しばらく日本に戻らないからさ…
その辺ブラブラと
散策して空港に向かうから」
「優さん、昨日…何があったんですか?」
「…昨日?
何だっけなぁ…あんま覚えてないやぁ」
桃李に言ったところで
何も変わらない…
俺が…忘れればいいだけ…
アミに出会う前の俺に戻れば…
「優さん、僕…チカラになりますから!
頼ってくださいよ!」
「最初は ナヨナヨして頼りなかったのに
…変わったな、桃李!(´▽`*)アハハ」
「僕は、優さんも仁さんも
大好きですからっ!」
「ハハッ…桃李からの告白か…」
アミにも…
言って欲しかったな…
・・・・・・
「昨日は…かっこ悪いところ
見せちゃったけど…
おかげで 色々吹っ切れたよ!(*´꒳`*)
長い間、世話になったね…桃李」
「優さん!…
YJから去るなんて、僕 認めません!
待ってますから!
必ず 日本に帰ってきてくださいよ!
しつこく電話しますからね!
無視しないでくださいよっ!」
「わかった、わかった(´∀`*)」
「ゆ、優さんっ…!!!」
ヒラヒラと手を振って
事務所を後にした
楽しかったことも 苦しかったことも
全部、ここに置いていく
まっさらな俺で
再出発する…
*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜
〜 アミ side 〜
AM 5:00…
ベッドの中…
一睡も出来なかった
昨夜の出来事…
優は海外での仕事を早めに切り上げ
逢いに来てくれたのに
私は 木村さんを巻き込んで
目の前で 優を切り捨てた…
ひどいやり方で…
ホント最低で…最悪で…
体を起こすと
酷い目眩と吐き気に襲われた
自分でも驚くほど 相当なダメージ…
バチが当たったね
私の初恋……
初めて私の全部で 好きになった人
名前の通り 優しくて 優秀で
音楽に対して真っ直ぐで…
あんな人、二度と現れないだろう…
まともな恋愛をした事の無い私を
充分すぎるくらい
幸せな気持ちにしてくれた彼との恋を
姑息なやり方で 終わらすなんて …
「はぁ〜 …性格悪っ…」
瞼が重い…
ドレッサーの鏡を覗く
(*°∀°)・∴ブハッ!!w…酷い顔…
「土偶だ…」
どれだけ出てくるんだ?と思うほど
たくさんの涙が流れ落ちた
今までこんなに泣いたこと あったかな?
ブーッ、ブーッ…
電話が震えた
。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆
「もしもし、サト?早いね!」
──「姉ちゃん!僕 今帰ってるから!」
「うん…」
── 「着いたら話があるから待っててよ」
「……うん」
優しくてフワフワしたサトの声に
また泣けてきた
私と優のことを
泣いて喜んでくれたのに
…ガッカリさせちゃうかな
サトが帰ってくる前に
少し、シャキッとしなきゃ…
*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜
〜 仁 side 自宅にて 〜
眠れなかった…
昨日のアミさんのことを
ずっと考えていた
そこら辺にいる女優より
本気の演技
優のために
あそこまで体を張るなんて
… 凄い女性だと思った
「はぁ…」
俺とキスをしながら
涙を流すアミさんは綺麗で…
優のことを考えていたんだろう
それでも良い…
相手が他の男を思っていても
今 口づけてるのは俺だって思ったら
妙に気持ちが
このまま離したくなくて
無我夢中で柔らかな唇と舌を貪った…
俺はアミさんに 完全に堕ちた……
ブーッ、ブーッ…
「もしもし…桃李?」
── 「仁さん…朝早くすみません!
優さん、今日の16時の便で
アメリカへ戻ります」
「…うん」
──「マスコミにも一報入れました」
「ありがとう…」
──「優さんが 退職願置いていきました」
「……そうか」
──「仁さん、受け取りませんよね?
だって、籍をここに置いて
アメリカに行くって話でしたよね?」
「退職願は 俺のデスクに置いておいて…」
──「えっ、受け取る気ですか?!
昨日 何があったんです?!
優さんがあんなに…取り乱すなんて!
僕にも教えてくださいよ!
隠し事は、団結を壊すんでしょ!?
だったら…」
「悪い、桃李…また頼みがある」
……俺も 複雑なんだよ
*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜
〜 智 side 〜
AM 6:10
【CHIMNEY】に着いた
管理人室を覗いてみると
ジジイが 既に起きていて
めちゃくちゃ
スローモーションで作業していた…
そんなにゆっくり動いてたら
日が暮れるぞ、ジジイ!
「おはよう、ジジイ!」
「お、
「後で手伝いに来るから無理しないでよ!」
「おぅ!」
*・゚・*:.。.*.。.:
~803~
「(*」´□`)」ただいまぁ!」
リビングに入ると
姉ちゃんが見当たらない…
寝室にも居なくて…
「トイレかな?」
キッチンで手を洗って 少し待ってたけど
なかなか戻ってこない…
ユーティリティの扉を開けると
シャワーの音が聞こえた
でも服を脱いだ形跡がない
「…姉ちゃん?」
恐る恐るバスルームを覗くと
洗い場に座り込んで 服のまま
シャワーを頭から被る姉ちゃんが…
「姉ちゃんっ!!!
何してるの!!??…冷たっ!!!!」
お湯じゃなくて 冷水…
慌ててシャワーを止める
「あ!サト!おかえり…(*´꒳`*)」
姉ちゃんの体は 冷えきっていた
「おかえり じゃないよぉ!!
ちょっと待ってて!!!」
バスタオルを取りに行って
姉ちゃんを包んで
バスルームから連れ出した
すると姉ちゃんは
「サトぉ…私、最低だ…
優に…ヒドイ言葉 吐いちゃったの…
傷つけちゃったよぉ…っ…」
か
言葉を振り絞っていた
「後で話 聞くよ!
とりあえず体温めないと風邪ひいちゃう!
お湯張るから お風呂入って…ね?」
コクコクと頷く姉ちゃんは
魂の抜け殻のようで
相当、姉ちゃん自身も
傷ついてる様子だった…
何があったんだ?
*・゚・*:.。.*.。.:
しばらくして
ホカホカになった姉ちゃんが
リビングに戻ってきた
いつも明るくて優しい姉ちゃんが
笑顔も作れなくて
こんな状態になるなんて…
「……大丈夫?」
ブンブンと首を横に振った
大丈夫じゃないらしい…
泣き腫らした顔…
…あの週刊誌 絡みかな?
「…言いたくなかったら
話さなくていい…でも 心配だから聞く!
…何があったの?」
昨夜の事をポツリポツリ
姉ちゃんは話してくれた
僕でも だいたいのことは理解出来た
過酷な出来事だった
母親のこともあって
ちゃんとした恋愛が出来なかったこと
優さんに出会って
"好き"の意味を理解したこと
週刊誌の写真のことも 全部吐き出した
姉ちゃんがここまで
大変な思いをしていたことは
僕には到底 想像出来なかった
「もう…どうしようもないよね…
優の夢だから…
私が一緒に居ることで邪魔してる…
離れるしかなかったの…
こうするしか…なかったの…ぉ…」
ガックリと
肩を落として項垂れている姉ちゃんが
不憫でならない
"何かあったら僕が守るから!"
前に軽々しく言ってたけど
所詮、僕は まだ子どもだ…
優さんのことを好きだということ…
傷つけたことを後悔していること…
今の姉ちゃんの気持ちを
汲み取ってあげることしか出来ない
落ち込んでいる姉ちゃんに
何もしてあげられない 不甲斐なさ…
ブーッ、ブーッ…
姉ちゃんのスマホが鳴った
「姉ちゃん、電話鳴ってる…」
ディスプレイを覗くと
"YJ 園さん"と表示されていた
「僕、電話に出ていい?」
姉ちゃんは頷いた
「もしもし、園さん!智です!」
──「智くん!? 朝早くごめんね!
近くにお姉さんいる?
伝えておいて欲しいんだけど…」
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