第21話

 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 須賀さんと

 ベランダで いつもの雑談中…



 内緒にすることでもないから

 打ち合わせの帰りは

 木村さんに送ってもらって

 哲くんがマンション前で

 待ち伏せしていた事…


 その時 木村さんに

 助けてもらったことを話した



「咄嗟に恋人役をしてくれたんです…

 木村さん、凄いですよ!

 自然すぎて演技に見えなくて

 もう、ドキドキしちゃって…」




 すると…



「……アイツに…何かされた?」


「え…っ…」


「鍵、開けて…」


「はい?」


「今、そっちに行く…」



 …カラカラカラ



「いや、サトが居るから…っ…!

 す、須賀さん?」



 既に彼の気配は

 ベランダには なかった



 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆



 ・・・・どうなってるの?

 ・・・・・・・・・この衝動は・・・何?



 玄関に急いで向かう私…



 毎日のように

 隔て板越しの会話だけでも

 満たされていた…はず…



 なのに …今の私は



 彼の顔が見たい…

 今すぐ 彼に会いたい…って思ってる




 勢いよく 玄関ドアが開くと

 吸い込まれるような突風が吹いた




 玄関に入ってきた須賀さんの

 広げた腕の中に

 あっという間に包まれた


 …まるで抱きしめられるのを

 待ってたみたいに

 彼の背中に腕を回し

 身も心も預けてしまう




 はじめてカラダを繋げた あの日…



 ━━"アミさんは俺を 好きになる"━━



 その暗示と共に

 おでこにキスを落とした 須賀さんは


 今、私を包んだ瞬間に

 あの時と同じ おでこにキスをした



 解錠…



 掛けられた 暗示が

 全身にヒビを入れていくように

 音を立てて駆け巡る



 心臓がドクンと高鳴り

 暗示が言葉通りに発動した…



 本気になるのが怖くて

 考えないようにしてたのに

 抱きしめられると

 頑なに閉ざしていた気持ちが

 堰を切り 今にも溢れそうになっていた




 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜802 仁 side~



「あぁ〜…」


 なんちゃって滝行…

 頭から熱めのシャワーをかぶって

 浴室に 大きなため息を響かせた



 車の中で告ったことを後悔した



「恋多き…世間お騒がせ俳優…ハハッ…」


 好き勝手 週刊誌に書かれてる


 女たらし、二股・三股…

 いちいち否定するのも面倒だから

 噂は尾びれも背びれもついて回り

 俺の印象も悪いまんま


 覚悟は していた




 全ては…優の夢を叶えるため


 優の才能を

 ここで止めるわけには いかない


 週刊誌の標的ターゲットを 優ではなく

 俺に向けさせる…ゴシップ駆除


 実際に 書かれた人とは

 恋愛に発展することも無く ただの売名

 リアルな恋は 片手で余る程の数しか…



 ホントの俺は…

 恋 とぼし…ヘタレ俳優…



 何やってんだよ まったく!

 告るタイミング…違うだろって…



 アミさんは 困った顔してた…

 そりゃそうだ…

 前触れも何も無い

 いきなりの告白だから



「うわぁ〜っ…取り返しつかねぇ…」


 遅かれ早かれ言うことには

 なったとは思うけど

 


「今じゃないだろ…」


 さっき、あの男性になじられた時…

 アミさんは 反論してくれた…

 それこそ、俺の事…

 どんな男かも知らないのに



「嬉しかったなぁ…」



 アミさんを抱きしめた時の

 柔らかい感触…


 演技でも なんでもない…

 素のオレだった…



 狂わされる…



 心の奥まで 覗かれてるような視線に

 ゾクゾクした


「…はぁ…やべぇ 重症だ」



 ── バタンッ…



 ん?…優、コンビニでも行ったのか?



 ところで 俺は どこで

 寝りゃいいんだ?



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜803〜



「ベッドは、どっち?」


 腕の中に閉じ込められたまま

 囁かれた声に導かれ

 寝室に なだれ込む



 抱きしめられたまま 誘導尋問…



「…仁に 何されたの?」


「な、何も…っ…」


「正直に言って…」


「…く、車の中で告白されたけど

 聞かなかったことにしてって

 言われて…」


「うん…それから?…」


「頬…触られて…」


 

 聞かれたことに

 次々と正直に答えてしまう

 包み隠さず言葉が漏れてくる



「あとは?…何された?…」


「手を繋いだ…

 だ、抱きしめられた…」


「……セフレの彼は どうなった?」


「もう終わったから

 来ないでって…言ったよ…」


 須賀さんは 体を離すと

 苦しそうな顔で言った


「アミ…っ…

 他のオトコに触らせないで…」



 息のかかる距離で名前を呼ばれ

 カラダが疼いた


 脱力してしまうくらい深くて…

 一瞬でも離れたくないと思うほどの

 長いキスをした



 唇が覚えていた

 須賀さんの優しさを…


 指先が覚えていた

 須賀さんの温かさを…



「事故じゃないよ…もう…」


「うん…わかってる…」




 隣の部屋には サトが寝ている



 お互いに声を必死にこらえて

 激しくカラダを重ねる


 抑えきれない高揚感に包まれた


「…っ…アミ…ぃ…」

「ゆうっ…ぁん…」


 自然と名前も囁くように呼びあって

 貪り続けた



「もっと…俺を欲しがって…っ…」



 その言葉に カラダは反応して

 ギュッと締め上げた



「私の手…離さないで…」



 手のひらを重ねると

 優しく握ってくれた



 もう…認めるしかない…

 もう…ごまかさない…


 私は、須賀さんを…



 優を……



「はぁ…っ…ぁ…」




 彼と一緒に羽ばたいて 一緒に堕ちる…

 そして 彼を作り上げる すべてのものを

 本気で欲しいと思った…



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜




 後処理をして息を整える…


 ベッドの上

 向かい合わせで寝っ転がった


「ごめん…智くん、居るんだったね…」


「そうだよォ…(´^`*)」


「今すぐ…

 アミさんを抱きたかったから…」


 また疼く…

 どうなってるんだ、私の身体は…


 言葉一つ一つにドキドキする



「まだ、さん付けですか?須賀さん…」


「え…っと…」


「私は もう平気だよ…」


「心の準備が…まだ…(/// ^///)」


「優…」


 照れくさそうに笑う須賀さんを

 呼んで見つめる…


「……:( :*'н'*)::;プルプル

 やー!笑っちゃう(ノ∀≦。)…」


「何だよ、それ…(´∀`)」


 気を取り直して

「アミ…」


「はい…」


「ずっとアミのそばに居たい…

 大切にする…」


 真面目な顔で

 言葉を選んで気持ちを表現してくれた


「…ありがとう よろしくね!」


 笑顔を向けると

 彼は また

 暗示のキスをおでこに落として


「ぅん〜っ、気持ちよかったァ~!」


「感想言うのか…ふふふ(*´艸`)」



 このまま…優の腕の中で……



「やべっ、戻らなきゃ…怪しまれる…」


 

 そうだった…現実に勢いよく戻された



「仁には…俺から

 頃合い見て アミとの事、話すから…」


「うん…」


ゲンさんとさとしくんは

 既に公認だから言ってもいいよ(*´꒳`*)」



 ・・・・・・・・・



「はぇ?なんだって??こ、公認!?」


「(ΦωΦ)フフフ…」



 ジジイもサトも…喜んでくれるかな


 心がとても あったかい…

 これも、優のおかげなのかもしれない…




「あぁ…やっぱりもう1回…」


「ダメです…お行きなさい……」


「明日も明後日も…するからなっ!」


「発情期か…(。´-д-)ハァ-」


「変態だから、許して♡」



 ギュッ…

 なかなか離してくれない…




 まぁ、いいや…

 抱きしめられることを 素直に喜ぼう…





 ホントに戻らなくていいのかな?



(´。>ω(•ω•。`)…えっと…



(つ・ω・(-ω-*)…ん〜


(´。>ω(•ω•。`)…まだ?


(´⸝⸝⸝•ω(•ω•⸝⸝⸝`)…ん?


(´,,・ω・)ω-。)…ピトッ♡


(*>ω<)ω<*)…ぎゅ〜ん♡




「はい、お行きなさい…」


「やっぱり?(ノ∀≦。)」



 *・゚・*:.。.*.。.:



 自室に戻る準備をして

 玄関でもう一度 私を抱きしめると



「離れたくないなぁ…( ̄-  ̄ ) ん〜」


「玄関あけたら

 仁王立ちで待ってるかもよ?

 木村さん…(*´艸`)フフフッ」


「怖っ((( ;゚Д゚)))帰る!

 じゃあ、おやすみ!」


「おやすみ…優…」


「…んはぁっ…(//∇//)ゞ」



 照れながら、出ていった


(*´ー`*)ふふっ…




 さきっちょにも

 報告しなきゃ…ね…


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