第16話

 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜じん side〜



 メンズ化粧品の

 アンバサダーを引き受けた


 Goff化粧品社屋での打ち合わせに

 ゆうも行きたいと言った


 いつもの変装だと濃いから

 メガネのみ!

 普段、顔出さないで歩いてるから

 誰に会っても、あの"U"だとは

 思わないだろう…



 会議室前で優を待たせ

 中へ入っていくと 担当者の2人と

 撮影スタッフ数名…

 その中に羽玖井はくいさんがいた



 "ココに勤めていたんだ!"



 馴れ馴れしくすると

 勘ぐられる可能性もある

 初対面風の挨拶を交わした


 初めてのアンバサダーの話で

 緊張していたけど

 顔見知りがいるというだけで

 気持ちが少し落ち着いた


『あとで こっそり話しかけようかな…』


 俺らしくもない

 ちょっとウキウキした気持ち

 ふふっ、ガキかよ…



 *・゚・*:.。.*.。.:



 羽玖井さんと初顔合わせだった

 引越しの挨拶


 少し疲れてそうな印象だったけど

 妙に色気があって


 でもなぁ…俺の顔見た反応が

 いまいちで…

 普段なら

 "どこかで見たことある!"って顔で

 じーっと見つめられるんだけど…



『…もしや、俺の事知らない?!Σ(・ω・ )』



 普段から伊達メガネぐらいで

 街中歩いても、バレることが多いのに…


 名刺をじっと見つめて

 動けなくなってる羽玖井さんに

「あまり有名ではないので!」って

 わざと大笑いしても、反応が薄い

 …嘘だろ?!∑( ̄□ ̄;)ガーン…



 まだまだなのか、俺の知名度…

 チ───(´-ω-`)───ン


 悔しかった…

 自分のことを知ってもらいたい一心で

 あれから さらに

 仕事に対する気合いが

 変わったような気がする



 ゆうは、

 ちょうど曲の打ち合わせで

 手が離せずにいたから

 代理で挨拶したわけだけど


 "覆面プロデューサー兼

 シンガーソングライター"で

 売ってる優には

 会っても顔バレしないように

 注意をしておいた


 まぁ…何かあったら

 いつもみたいに俺が助けてやる!

 お前の夢を叶えるためにもな!



 そんなお隣さんは

 何度かマンションで顔合わせても

 媚びを売られるとか

 そういうことはなくて

 普通に接してくれたことが嬉しくて…

 

 今回の仕事を機に

 もっと親しくなりたいと思った



 *・゚・*:.。.*.。.:



 だけど マネージャーに扮した優を

 紹介した時だった


 再三 顔バレしないように

 釘を刺しておいたのに

 優を見た羽玖井さんが

 びっくりした顔をして…


 そして

 コソコソ優と話している…


『顔…見たのか?

 いつの間にそんな親しく…』


 顔バレだけは御免だ…



 ・・・・・・・・・っ・・・



 …いや、そんな感情じゃない

 これって…





「・・・・・・」


「木村さん?」


 黄桜きざくらさんに呼ばれて

 我に返ったけど



 この業界…

 いつ、どこで見られているか

 わからない…


 あのストーカー女優に

 顔を見せてしまった失敗から

 学んだはずじゃなかったのか?


 ゴシップで人気が下がって

 優の夢が潰されたら

 たまったもんじゃない

 今まで積み上げてきた努力が水の泡だ…



 "…優に 注意しないとなぁ"



 *・゚・*:.。.*.。.:



 802号室の前


 "この時間なら、居るだろう…"

 鍵を開けて入ろうとした




 ━━【ガンッ!!!!】



「えっ…」



 前に話していたことを思い出す



 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆


 "俺がオンナと寝てたらどうするんだ?"

 "その時は ドアチェーンでもしとけ!"


 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆



「……マジか…」



 部屋に…オンナ…?

 相手は……


 まさか……いや…そんなはずは…


「・・・・・・」


 イライラする…



 静かに鍵を閉めて帰った



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜




 〜802号室〜



 ジジイから

 私の母親の話を聞いたという須賀さん


 ちょうどいいじゃない!

 私がどうして 男と距離をとるのかを

 これ以上、何も起こらないように

 踏み込んでこれないように

 私の言葉で伝えないと!



 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆



「だったら俺と

 その運命を書き換えない?」


「"芸能人あるある"とか言いながら

 本当は俺がアミさんを求めていることは

 わかってるんでしょ?」


「俺は…アミさんがいい……」


「無理かどうかは、俺が決める…」



 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆



 あれ?…私の話、刺さってない?


 これでも全力で拒否ったのよ!!!

 言ってる意味、わかってない?


 好きとか愛してるとか…

 どうでもいいって!無理だって!!

 信じていないって言ったのよ!!!!


 それなのに…私を抱きしめたまま

 そういうことばかり言って…



 拒絶して、苦しくなってる私に

 追い打ちをかけた…



「俺たちがどうなるかなんて

 誰も口出しできないよ…」



 流されそうになる…

 須賀さんに惹かれてるって

 自覚させられる…



「簡単に言わないでよ!!!!!…やめてっ!!!」



 にっこり笑いながら

 さらに須賀さんの顔が近づく



「俺がアミさんを

 運命の人だと決めたら

 …止められると思う?」



 どうして踏み込んでくるの?



 お願いだから……




 もう…止まってよ……








「アミさんは 俺を…好きになる…」



 優しく暗示をかけるように

 容赦なく甘い視線を向ける



 おでこに軽くキスを落として

 私に術を掛けた須賀さん



 見つめられて動けなくなる



 私たちの背中を押すかのように

 月から放たれる

 柔らかくて青白い光…


 狂おしく

 長くて溶けるようなキスをするまで

 そう時間は掛からなかった



 。゜⋆。゜⋆



 しばらく味わって 唇を離すと


「…っはぁ…また事故っちゃったね」

 目を細めて

 悪戯イタズラな笑みを浮かべる彼


「どうせ、当て逃げなんでしょ…」



 気が遠くなるようなキスをした後に

 可愛くないことを言う私は

 ホントにどうしようもない…


 素直に受け止めれば…楽なのに

 今までのクセで反発する



「え〜!かなりの猛スピードで

 正面衝突したつもりなのに

 クラッシュしてないのぉ?

 頑固だなぁ(๑¯ㅁ¯๑)」



 オトコって そういうもの…

 甘い言葉をささやいて

 結局は 逃げるんだ…


 そう、自分に言い聞かせて

 意地悪なイヤミを盛ったのに



「この流れでいくとベッドIN…?」


 素知らぬ顔で

 そう投げかける彼に

 思いっきり吹き出した


「(*°∀°)・∴ブハッ!!w

 この前と同じこと言う?」


 そして、切ない顔をしたかと思ったら


「ねぇ、アミさん

 セフレの彼…ちゃんと清算して…」


「わかってる……

 って!…私は まだ…っ!!!」


「アミさんに

 俺の言葉を信じてもらえるように

 俺の事をになってもらえるように

 全力でよ…」



「だから…そういうことは言わないでっ!

 はぁ〜……(。´-д-)…」


「それとも カマキリの

 求愛行動でもしようか?

 …ってか…あれ?どうやるんだ?」


「知らんのかい( ¯∀¯ )アァ〜…」


「んん〜(´^`*)仕方ない…

 アミさんに

 言葉で伝わらないなら

 カラダで伝えた方が良いな…」


 そう言ってリビングの隅にある

 ベッドに運ばれ


「はぁぁ?…ちょっ、ちょっと待ってっ!」



「…この前は我慢したけど

 今日は どうなっても知らないよ?」


「ダメっ!!!!ダメだってっ!!!!」


「どうして拒否るの?

 さっき、言ってたよね? 

 "オトコとの距離は

 セフレがちょうど良い"だっけ…?」


「いや、言ったよ!言った!

 言ったけどっ!」


「じゃあ、俺とも

 セフレ感覚で出来るでしょ?」


 どれだけ嫌がっても

 聞く耳を持たない…


 セフレとかじゃない…

 そんな軽いもんじゃなくて…



「…違うの!須賀さんとは、違うっ!」


「……じゃあ、何?」


「そんな関係じゃなくて…ちゃんと…」



 向き合わないと

 悪い気がする…

 正面から堂々と

 ぶつかって来る須賀さんには

 応えなきゃいけない気がする…


 今まで私が見てきた須賀さんの行動が

 私を素直にさせる…



「…俺との事

 考えてくれるってこと?∑(°∀° )」


 驚いた顔をしたかと思ったら…

 須賀さんはニッコリ笑って


「うわぁ…やった!”(*>∀<)o」


「いや、あの…違うの!

 ちょっと私の話 聞いてよ!

 って〜…きゃ〜ぁ!!!」



 私たちはベッドに沈みこんだ



「だからっ…!!! ほ、ほら!!!!

 木村さんが入ってくるかもだしっ!!!!

 す、須賀さんは 芸能人だからぁッ!!!!


「まだ そんなこと言ってんのっ???

 鍵は もう閉めてあるっ!!!!

 俺はカマキリだっ!!!…以上っ!!!!…」


「…か、カマキリって」




「…それでは始めますか(*´꒳`*)」




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