第13話

 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 ジジイを見舞って

 明日もまた来ると言って

 サトと病院前で別れた



 食材の買い物を終えて

 マンションに差し掛かった頃



「あの…っ…」



 後ろから声をかけられ

 振り向いた



「このマンションに

 お住まいの方ですか?」



 可愛らしい女性…

 グラサンは掛けてないけど

 もしかして、メスカマキリ?



「…何か、御用ですか?」

 警戒しつつ返事をした



「こちらに羽玖井はくいアミさんって人、

 住んでいませんか?」



 アアアァァ( °∀°)ァァアアア…来たか…



羽玖井はくいは、私ですけど…」


 そういうと

 相手は途端に怒りの形相に変わり

 近づいてきた


「私、奈良ならと言います!」



 …そういえば てつくんが


 "彼女の名前、彩夜さよって言うんだ…

 苗字が奈良だから 英語表記にすると

 Sayo Nara…さよなら…"




彩夜さよさん…」


「…アハッ…知ってるんだ、私の名前」


「そっちも私の名前 知ってるね…

 教えてもらったの?」


「そんなこと、どうだっていいのよっ!!!

 …てつと今すぐ別れてっ!!!!!」


「別れるも何も

 哲くんとは 付き合ってないけど?」


「隠れて会ってるの知ってるんだからっ!!!

 家にあったゴムの在庫もなくなるしっ!!!!

 …あんなに優しかったのに

 アンタが誘惑したせいで 哲がっ…!!!!」


「うわぁっ〜…

 ゴムの残量まで確認してるの??

 怖っ!!!…(*つ▽`)っ)))アハハ!!!!

 …じゃあ しっかり彼を監視しておけば?」


「はぁ??!!」


「私は 誘惑なんかしてないっ!!!!

 哲くんから声を掛けてきたのっ!!!

 私のことばかり責めてるけど

 アナタにも原因あるんじゃない??」


「何言ってるのっっ!」


「哲くんに よそ見されたくなかったら

 私に文句言いに来る前に

 自分で何とかしろって言ってんの!!!

 人のせいにしないでよっ!!!

 はぁ〜(。´-д-)

 めんどくさっ!!!!…っ…」



 ━━【バチンっ!!!!!】

 


 ふらつくようなビンタが飛んできた


「痛っ…」


「…っ…哲とは 二度と会わないでっ!!!!!」



 そう吐き捨てると

 ズカズカと歩いて帰って行った



「言われなくても もう会わないしっ!!!!」


 遠ざかる彼女の背中に叫んでやった



 現に何度か送られてきた

 哲くんからのメッセージ…


 "彼女に別れるって言った"

 "今後のこと 話がしたい"

 "アミに会いたい…"


 仕事やジジイのこともあって

 忙しかったから返信できず

 既読スルーが続いていた


 まさか…

 彼女が家にまで来るとはね〜

 よく場所がわかったなぁ…


 おまけに家の常備ゴムを持参って

 マズイでしょ・・・(  ¯⌓¯)ア゙ア゙ア゙

 バレるよ、そりゃ…


「(´▽`*)アハハ…笑っちゃうわ…」


 人通りもなかったし

 何よりジジイに見られなくて良かった…



 振り返って

 マンションに向かおうとすると

 今の修羅場を 壁にもたれ

 腕組みしながら見物してた者、1人…



 いや、1匹か…



「カマキリ…」


「痛そうだね…」


「・・・・・・最悪っ(ボソッ)」



 カマキリの前を通り過ぎて

 鍵を挿し入れ 自動ドアを開けた



「お菓子買いに行こうと思って 外に出たら

 キャンキャン言い合いしてたから

 行くに行けなかったよ(´▽`*)アハハ」


「それは どうも

 すみませんでしたね!(`-´)」


 恥ずかしいやら、ムカつくやら…

 エントランスを抜けて

 足早にエレベーターに向かうと

 後ろから いてくるカマキリ…



「なんで尾いてくるの?

 買い物行けば?( `^´* )」


「わぁ〜ぉ!お怒り気味のアミさん…

 タメ口になるんだァ〜〜(。・о・。)

 興奮するぅ( ´‎ࠔ`* )ヘヘッ」


「…変態なの?」

 スタスタ((((((`-´))


「そうみたい!

 俺も今 気がついた!( *´︶`*)」


「…ふざけてるでしょ!!!

 階段で行くっ!!!! ≡┏( `Д´)┛」


「いいから いいから!」



 腕を引っ張られて

 一緒にエレベーターに乗り込んだ



 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆



 頬がジンジンと痛む…

 耳鳴りも鳴り止まない…


 目を合わせないように

 俯いていても

 須賀さんが、グラサン越しに

 じっと見ているのがわかる



「…ほっぺ、赤くなってる」


「グラサン掛けてるのに

 赤いとか わかるんだ?凄いねぇ…」


「だって、カマキリだし…」



 意味不な返事をしながら

 少し距離をとって 私の前に来ると

 手を伸ばして左の頬に そっと触れた



 ビクッ…


「ごめん!…痛かった?」


「・・・・・・」



 須賀さんのひんやりした手に

 頬が冷やされていく


 だけど

 かえってドキドキして

 体もポカポカと熱を上げる


 頬から手が離れ もう一歩

 須賀さんが近づいてきたその時

 エレベーターのドアが開いた


 振り切るように

 自室へ向かって歩いてると

 後ろから話しかけられる


「彼氏、いないんじゃなかったっけ?」


「いないよ…」


「じゃあ、さっきのは何?」


「教えない…」


「気になるから 教えてよ!

 俺ら キスした仲じゃん♡」


「勘違いしないでっ!!!

 あれは事故っ!!!!

 ご想像にお任せしますっっ!!!!!」



 鍵を開けて

 部屋の中に入った


 バタンっ…



「・・・・・・はぁ〜・・・」


 須賀さんには

 …見られたくなかった

 …知られたくなかった



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜ゆう side〜



「・・・・・最後、敬語に戻ったし…」


 勘違い?

 あんなキスしておいて…

 事故っていうか?


 無かったことにされるのかな…

 …ショックぅぅぅ(´△`)


 ご想像にお任せしますって…何だよ!

 だいたいの検討は ついてるっつうの!


 聞いたら…

 話してくれるかと思ったのに…



『…男の浮気相手ってところだろ?』



 今日は…

 ベランダには 行かない



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 切羽詰まると…声が聴きたくなる



「もしもし?さきっちょ?」


 ──「お!アミっぺ♡

 爺ちゃんの調子どう?」


「心配かけてごめんね!…

 今日見舞ったら

 カテーテル手術も視野に入れてって

 担当の先生に言われた」


 ──「そっかぁ…

 早く良くなるといいね!

 なにかあったら遠慮なく言ってよ?」


「……うん」


 ──「おや?早速何かあったのかな?‪‪‪w」



 さきっちょには、隠さずに言う



「バレたよ…」


 ──「バレ…えっ!例のセフレか!?」


「さっき、彼女が家に来て

 ビンタ一発 喰らいましてん…」


 ──「ぎゃ〜っ!彼女が来たの?!

 ビンタされたって?…うわぁ大丈夫?」



 私のことは

 何でも…と言っていいほど

 話してある 唯一の相談役

 ありがたい存在



 ──「…それで?

 今の気持ちは どうよ?」


「誘惑なんかしてないってぇの!

 人のせいにするなって

 言ってやったわ(◎`Д´)ゴルァ」

 

 ──「いくら相手から誘われて

 関係を持ったとしても

 彼女がいることは 知ってたんだから

 結局 両成敗よ…」


「……やっぱり?‪( ˙꒳​˙ )‬スン」


 ──「そろそろアミっぺも

 真剣に 恋愛したら?」


「知ってるでしょ?…

 親が親だけに自信が無いの…

 遺伝子ってあなどれないよ!アハハ!!!!

 形は違えど 今の私も…

 現にあの母親ひとと同じ…」



 小さい頃から

 いちいちオトコが発する言葉に

 一喜一憂して

 泣いたりわめいたりするはは

 そんなのばかり見てきたから



「ねぇ、さきっちょ…

 私にも 本気の恋愛 出来るのかな…」


 ──「出来るのかな?

 …じゃなくて恋愛のよっ!!!

 アミっぺは幸せにならなきゃダメぇ!!!

 親なんか、関係ないっ!!!!

 アンタの人生なんだからっ!!!」



 泣きそうになる…

 本気で叱ってくれる友…

 なかなかいないよ…

 …みたぁぁ



 ──「前に進めなくなったら

 止まればいい…

 後ろを振り返ったっていいんだよ…

 私もいるんだから、だいじょぶだァ〜」



「・・・・・・」


 ──「おや?もしかして…

 感動で泣いちゃったかしら?」


「いや、最後にジジイ降臨したよね?」


 ──「あら、わかった?≧(´▽`)≦アハハハ」


「(*°∀°)・∴ブハッ!!元気出たよ!ありがとう!」




 私も変わる時なのかな…


 さきっちょが居てくれてよかったよ…



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜ゆう side〜


 次の日…

 昨夜の修羅場が気になりつつも

 曲作り合間の息抜きがてら


 俺は あるところへ足を運んだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る