第12話

 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 ジジイが救急車で運ばれ

 詳しく検査をするため

 少しの間 入院することになった


 一緒に見舞ったサトと途中で別れ

 1人 マンションに戻った


 真っ暗なリビング

 ポケットに一度戻した鍵を

 ダイニングテーブルに置いた


 ん?


 ポケットには、まだ異物感…



「あ…ここに入ってたのか…」



 リップのサンプルを

 気分転換に少し、唇にのせてみる


「いい香り…」


 だけど 気持ちは重たいまま



「はぁ〜…」



 居て 当たり前だったジジイが

 外で倒れてたのを目の当たりにして

 恐怖だった



 ── このまま 死んでしまったら… ──



 最悪のことを考えながら

 涙を堪えて

 必死にジジイを呼び続けていた…


「…助かって、良かった」


 少しだけ涙で視界がゆがむ…



 ピンポーン.•♬


 インターホンが鳴った



 ディスプレイには…




 変装無しの

 須賀さんが映っていた



 ゴシゴシと目をこすって

 中途半端に靴を履いて

 ドアを開けると

 


「玄関が閉まる音が聞こえたから

 帰ってきたんだと思って…

 これ、アイス!

 良かったら食べ…て…

 …っ…どうした?何かあったの?」



 さっき拭ったはず…

 ハラハラと落ちてくる雫



「アハハ…拭いたんですよ!

 拭いたんですけど…おかしいですよね!

 須賀さんの顔みたら……

 なんか安心しちゃって…っ…」



 病院で…

 さっきまで 傍に居てくれた

 須賀さんを目の前にして

 込み上げてきた…安堵というか

 何と言うか…っ…


 下を向いて頬を拭ってると




 バタンっ…



 玄関ドアが閉まった…



 差し出された袋に

 入っていたアイス達は…



 コロコロと足元に転がった




 伸ばされた腕に引き寄せられ




 ドンっ…




 クルっと身体が回転したかと思ったら

 かくまった時みたいに

 玄関ドアと須賀さんに挟まれ

 見下ろされた視線に とらわれる




 あの時と違うところは

 私は…須賀さんに







 ……キスをされている



 残りの涙は

 彼が吸い取ってくれた



 時々漏れる吐息…

 カラダを密着させて

 噛み付くように 互いの唇を求めた



「イチゴ…食べたの?…っ…」


「…ぃゃ…リップの…サンプル…ぅ…」



 一言ずつ 交互に発しては 唇を合わせ

 さらに彼は 私の腰を引き寄せた



「……もっと 口開けて…っ」


「…っあ……」



 私は彼の胸ぐらを掴んで

 何度も激しく唇を絡ませた



「ぁ…はぁ…っ」


「…ぅ…苦しっ…ぃ…っはぁ…」


「…っはぁ…はぁ…」



 リップ音が止まらない

 上手く呼吸ブレスも出来ないまま

 角度を変えながら

 より深くついばんでいった



 *・゚・*:.。.*.。.:



 どれくらい

 時間が経ったのか…わからない

 やっと唇が離された時には

 2人とも肩を上下させるほど

 息が上がっていて


 彼は私を 愛でるかのように

 おでこや頬にもキスをくれて

 ふわっと抱きしめた


「どうする?この後…」


「はい?」


「部屋に あがらせてくれないの?」


「あげませんよ…」


「この流れからいくと ベッドINでしょ?」


「それ…芸能人あるあるですか?」


「え?」


「無いですね…」


「え──っ!…」



 ゆっくりと体を離すと

「アイス…ありがとうございます…」


「あ、…落としちゃってごめん」



「おやすみなさい…」


「お…」


 向かい合ったまま

 後方のドアノブを回しドアを開けた

 今度は私が彼の体を

 ゆっくり回転させる

 須賀さんの胸に手を置いて

 優しく押し出した



 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆



 バタンっ…



「…え?オレ…追い出された‎ぁ〜( ꒪⌓꒪)」



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 完全にバグった…



 玄関のドアを閉めると

 ズルズルとしゃがみ込む


 このドキドキは、何なの…

 苦しすぎる…

 あんなに夢中になるって…


 自分じゃないみたいだった



 どうかしてる…正気になれ!



 ↻ Now loading……



 相手は芸能人っ!!!

 今のは ほんの出来心だって!!!!

 彼は こういうことには 慣れてるのよ…

 誰にでも すること…でしょ…?


 何度も自分に言い聞かせる



 ━━ 勘違いしたらいけない ━━



 玄関に落ちていたアイス達を拾い上げて

 リビングへ戻った



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜優 side〜



 自室に入ると

 まっすぐ洗面所に向かう


 異常に冷たい水で

 バシャバシャと顔を洗った



「・・・・・・何してんの、俺」




 アミさんの涙を見て


 愛しい

 抱き締めたい

 キスしたい


 一度に押し寄せた衝動に駆られ

 無我夢中だった



 アミさんも…それに

 … 応えてくれたんだよね?


 フワフワしていた気持ちが

 強固になった瞬間だった



 "このまま…言ってしまおうか"


 血迷った…



 鏡に映る ビショビショのオレ…


 イチゴの香りも 熱さも 柔らかさも…

 まだ感触が残っている 潤った唇に

 指を滑らせてみる



「はぁ〜…全然足りねぇよぉ…」


 あのキスで もっと

 ひたひたに…

 満たされたかった…



 何も…追い出すことねぇだろ…



「・・・はぁ」



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 翌朝



 管理人室で

 ジジイの名代みょうだい…それは大袈裟か(ノ∀`笑)

 見よう見まねで作業をした


『午前中のうちに

 共有部の掃除を終わらせて

 午後から病院行って…』


 管理人室で作業しながら

 昨夜のことは 考えないように

 今日のスケジュールを整理していると


 コンコン…

 窓口をノックする音に振り返る


 にこやかに手を振るサトが居た


 管理人室に入って来て

「姉ちゃん!(*´꒳`*)」


「サトっ!!!! 学校は?」


「今日 休んだよ…

 ジジイのことも心配だし

 ほら、次期管理人の僕にも

 できる仕事あるんじゃないかって(*´꒳`*)」


「サトぉ〜!」


(っ´>ω<))ω<`)ギュッ


「走ってきたから

 お腹すいたァ〜(*´艸`)

 あ、少し荷物も持ってきたよ!」


「はい、鍵!

 冷蔵庫にサンドイッチ入ってるから!

 ついでに荷物も置いておいで!」


「行ってくる〜εε=(((((ノ・ω・)ノ」


 ほんと…優しい子に育ったなぁ…

 自慢の弟だよ、サトは



 …あの子を幸せにするのは

 この私なんだ



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜優 side〜



「朝メシでも、買ってくるかなぁ〜

(*´Oゞふぁ~」



 寝不足…

 昨日の出来事に

 ちょっとアドレナリンが…


 ね…わかるでしょ…


 …(´ρ`*)コホンコホン



 ガチャ…

 玄関ドアを開けると


「あ、ゆうさん!」


「お!智くん!あれ?学校は?」


「ジジイのことが心配だから

 休みました!」


「そっか…心配だよな…」


「昨日は、本当に

 ありがとうございました!m(_ _)m」


「いやいや、お礼とかいいから…」


「姉ちゃん、心強かったと思います…

 優さんがそばに居てくれたから」


「そうかな〜アハハ(´∀`)」


「近いうちに

 僕、ココに引っ越します!」


「そうなのか!実家出ちゃうの?」


「…あそこは 実家じゃないです」


「……え?」


「…強いて言えば、牢屋…かな(*´꒳`*)」


「……っ…」


「じゃあ、僕はこれで…」


「あ、うん…( ˆ︶ˆ)」



 バタンっ…

 智くんは部屋に入っていった



 聞き間違いかと思ったけど…



 『今、牢屋って言ったよな…』



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜




 〜咲 side…会社にて〜



「はぁ〜…」


「どうした?

 アミのこと心配か?」


「アミはいつも

 1人で何とかしようとするから

 心配なんだよね…

 智くんのことも爺ちゃんのことも…」


「アミなら上手くやるだろ…」


「手伝えること、無いのかなぁ〜」


「あ!…咲…次の休みに…」


「そうだね…一緒に

 爺ちゃんのところにお見舞い行こうか」


「えっ…あ、あぁ〜そっ…そうだな!

 そうしよう!」



 …ちょっと強引だったかな?

 そうでもしないとしゅん

 いつまでも…っ…


「忘れてたっ!

 咲に渡しておけって

 アミから預かってたんだ!」



 手渡されたもの…


「これ、何だろう?」


「リップのサンプル…

 パインのフレーバーだってよ」


「おお!私の大好きなパイナポー!」



( ˙꒳​˙) ジ~~~


「な、何だよ…」


「唇、荒れてる?」


「…はっ?? し、知らん!(///ω///)」


「じゃあ、私が使お〜っと♡(´∀`*)フフッ」


「………」




 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜アミand智〜



 ジジイの様子を見に

 サトと一緒に病院に来た



「心配かけて、すまねぇな…」


「ホントよ!びっくりしたんだから!」


「いつも僕に冗談ばかり言ってるから

 優さんから連絡が来た時

 "仮病だから放っておいて!"って

 言っちゃったんだぞ!(´-ω-。` )」


「ボハハハ!ひでぇな、そりゃ!」



 3人で笑った…



「須賀つぁんにも、迷惑かけたんだな…

 お礼言っといてけれ…」



 …昨日のことが蘇る

((-ω-。)(。-ω-))フルフル…忘れろ!!!!



「私が狼狽うろたえてる時に

 救急車呼んでくれて

 病院にも付き添ってくれたんだよ…

 ・・・・・・あ、何か必要なものある?

 下に売店あったから買ってくるよ?」


「手拭い、何枚か欲しいな…

 あと、くし

 オールバッツにしないと

 しっくりこねぇだよ」


「ジジイ!病院で

 めかしてる場合かよ!(ノ∀`笑)」


「じゃあ、行ってくるね!

 サト、何か飲む?」


「じゃあ、コーラ!」


「りょ!」



 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆



「あの人は、病院には来ないと思う…」


「そうけ…」


「僕、近いうちに 姉ちゃんとこに移るよ」


「うん、それならワシも安心だ…

 出来損ないの母親のせいで

 たくさん我慢させてすまねぇな…」


「僕には 姉ちゃんが居たから平気(*´꒳`*)

 ジジイも ばぁちゃんもね!

 それに次期管理人だから ジジイから

 仕事も少しずつ教わらないと…」


「師匠と呼んでけれ…( ˙罒˙)カタカタカタカタカタ…」


「うわぁ…

 入れ歯をカタカタ鳴らすな!ヒィ(゚ロ゚;ノ)ノ」



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 日が暮れているのも忘れるほど

 ジジイとサトと

 和やかな時間を過ごした


「明日は学校行くから、授業終わったら

 まっすぐ病院行くからね」


 笑顔のサトと途中で別れた



 。゜⋆。゜⋆



 食材を買って

 マンションに差し掛かった頃



「あの…っ…」



 後ろから声をかけられ

 振り向いた

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