第5話 振り向けば奴がいる !

【めぐみんside】


 昨日は、あまり眠れなかった。

 朝に成り、居間に行くと食卓にお肉が出ていた。

 貧しい我が家で、お肉を見るのは何年ぶりだろうか。


「姉ちゃん、肉だよ、お肉 !」

 朝から、こめっこが興奮しています。

 私が困惑していると母ゆいゆいが教えてくれた。


「あなたが寝ている時に、昨日のアラシくんが訪ねて来て、一撃クマを置いて行ってくれたのよ。

 それに、こめっこに、ジャイアントトードもね 」


 高レベルの獣の肉は臭みが少なく美味しい、沢山の経験値も入るはずだ。

 なにより、久しぶりの肉を食べない理由はない !

 父ひょいざぶろうを押し退けて、朝のバトルに参加した。


 ◇◇◇◇


 学園の登校中、前方にボッチ娘が歩いているのを見つけた。

「おはようございます、ゆんゆん。

 朝からボッチをこじらせているのですか ?」


じゃ、ないわよ !」


 朝からテンションが高いですね。

「でも、相変わらず植物に話しかけているのでしょう ?」

「それを言っちゃダメェェェー !」


 ゆんゆんをからかうのは、このへんにして……

「それはそうと、アラシは一緒じゃないんですか ?」


「なんか、ギリギリまで剣の素振りをしていたよ。

『スキルを取っただけでは、稽古しないと役に立たない』と言っていたよ」

 私の質問に答えた後、ゆんゆんは何かに気づいたのか、意地の悪い顔をしながら、


「ふ~ん、めぐみんはアラシのことが気になるんでしょう ?

 アラシって、カッコいいもんねぇ~ ♪」


「何を言っているのですか、このボッチが !」

「フフンだ。 今のめぐみんなら、ぜんぜん恐く無いんだからねぇ~ ♪」

 私は駆け出した ゆんゆんを追いかけた。

 鬼ごっこは教室まで続いたのだった。



 ◇◇◇◇


 昼休み。

 私と目があったゆんゆんは、自分の弁当を取られないように警戒していた。

 私は、それを無視してカバンから弁当を取り出した。


「めぐみん……それ、お弁当 !?」

「何処かの転入生が我が家に獲物を貢いでくれたので、母が調理してくれたのです」


 ゆんゆんは心当たりがあるのかうなずきながら、

「へぇ~。 そういえば朝早くアラシが出かけるから不思議に思っていたけど、そんなことをしてたんだぁ。

 へぇ~、ふぅ~ん。 めぐみん、アラシにお礼を言った後、一緒にお昼ご飯をたべましょう !」

 そう言うと、ゆんゆんは私の手を強引に男子クラスまで引きずっていった。


 おかしい、ボッチのゆんゆんが何故こんなに強気なのだろうか ?

 どうして私はこの手をふりほどけないのか ?

 ぼんやり考えこんでいたら、目的の男子クラスに着いてしまった。


 男子クラスに入ったら、

「出来れば、私も参加させてくれないかな ?」

 声のした方に振り向けば、胸部装甲はゆんゆん以上のモノを装備するあるえが居た。

 しかし、ゆんゆんはあるえを気にせずにアラシに声をかけている。


「アラシ。 私とめぐみん、あるえと一緒にお弁当を食べましょう 」

「おぉ~、ゆんゆんか。 めぐみんも昨日ぶり !」

 片手を上げて、ニカッ と笑うアラシ。

 気のきいた挨拶をしようとしたのに声が出てこない。

 何故か顔が火照ってしまい、私はうつむいてしまった。


「和が名はあるえ。 紅魔族髄一の発育にして作家を目指す者 !」


「アラシだ、よろしくな。 あるえは小説家を目指しているのか。

 実は俺も趣味は小説を書くことなんだ。

 よかったら今度、読み合いでもしないか ?」

 アラシが笑いながら言うと、あるえの顔が真っ赤に成り、


「同士よ ! 紅魔族に私と話しが合う男子がいたとは !

 是非とも、アラシの作品を読ませてくれたまえ !」


 あるえと意気投合するアラシ。

 婚約者だからか、余裕綽々としている ゆんゆん。


 おかしい。頬が熱くて胸が苦しい。

ボッチのゆんゆんに怒鳴りつけたいのに言葉が出てこない。

私は、いったいどうしてしまったのだろうか ?

いくら考えても答えが出なかった。

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