第3話 神様転生 !

大江戸嵐おおえど あらしside】


 ……ここは、何処だ ?

 気がついたら俺は、この白い空間に居た。

 まさか、このシチュエーションは異世界なのか !?

 そもそも、俺は自分の部屋で漫画を読んでいただけなんだから、はずだよな。 ましてや、俺の本当の姿は……


「ようこそ、死後の世界へ。 江戸川明えどがわ あきらさん、貴方は先ほど、不幸にもお亡くなりに成りました。

 短い人生でしたが、貴方の生は終わってしまったのです」


 突然に声をかけられて前を向くと、そこには水色の長い髪の残念そうな姉ちゃんがいた。

 そして俺は気がついた。

 このシチュエーション、それも寝落ちする前に読んでいた『この素晴らしい世界に祝福を !』の世界だと。


 俺の様子を不思議そうに見ている姉ちゃんは、すぐに砕けた口調で話しかけてきた。


「あら、あまり驚かないのね。 私はアクア。

 日本において、若くして死んだ人間を導く女神よ 」


 最初の厳かな雰囲気は演技だったのだろう?

 さっそく、化けの皮が剥がれ始めている。


「さて、貴方だけに構っている時間は無いから、サクサク進めるわよ !

 貴方には、二つの選択肢があります」


 ああ、漫画と同じで人の話しを聞かないタイプだな。

 面白そうだから、黙っておくとしよう。


「一つは人間として生まれ変わり、新たな人生を歩むか。

 そしてもう一つは、天国的な所でお爺ちゃんみたいな暮らしをするか ?」


「じゃあ、三つ目の異世界転生を頼む !」


 女神アクアは、ビックリして俺を見ている。


「まあ、ラノベの定番だからな !

 それとも間違っていたか、女神さまよ 」


「違わないわよ ! まったく、最近の日本の若者はスレて可愛くないわね。

 それじゃあ、特典のことも解るわね。

 さっさと、そのカタログから一つ選んでよね !

 選びなさい。 たった一つだけ。 貴方に何者にも負けない力を授けてあげましょう 」


「カタログに載って無いモノでも良いのか、女神さま。

 例えば、俺の中に封印されたの解放とかでも ?」


 俺の問いかけに駄女神が笑いだした。

「プ~クスクス。 やだ貴方、厨二病だったのね。

 本当なら上司の神に聞かなければダメなんだけど、 !」


 よし、言質を取った !

 神々はけがれを嫌うからはつけないことに成っている。


江戸川明えどがわ あきらさん。

 貴方をこれから異世界に送ります。

 魔王討伐の為に勇者候補の一人として、魔王を倒した暁には、神々からの贈り物を授けましょう。

 世界を救った偉業に見合った贈り物。

 たとえどんな願いでも、たった一つだけ叶えて差し上げましょう」


 俺の居た場所に魔方陣が現れた。


「さあ、勇者よ !

 願わくば、数多の勇者候補達の中から、貴方が魔王を打ち倒す事を祈っています。

 さあ、旅立ちなさい !」


 光に包まれて転生する前に俺は間違いを指摘した。


「言うのを忘れていたが俺の名前は、大江戸嵐おおえど あらしであって、女神さまが言っていた江戸川なんたらでは無いのを指摘そびれてしまったことを謝るよ 」


 女神アクアの顔色が、髪の色と同じ真っ青に染まり始めていた。

 空からは、複数の天使達が降りてくる。

 真実を知った時の女神アクアの顔も見たかったが、白い世界から転移してしまったから残念ながら見ることは叶わなかった。




 ◇◇◇◇


 気がついたら、神殿の前に居た。

 俺の異世界ライフは、これからだ !

 まずは、腹ごしらえをしようとポケットを探ってみたが、財布には日本円しか無い…………


 この世界の銭は


 アノ駄女神め、無一文で放り出しやがった !

 冒険者協会に登録するにしても、エリスが無いと登録出来ない。


 途方にくれていると、黒髪で深紅の目をしたオッサンが声をかけてきた。

 名前を聞かれたので、


「我が名は、大江戸嵐。 異世界より勇者候補としてやって来た者。 そして本当の姿はだ !!」


 俺の名乗りを気に入ったオッサンと意気投合。

 オッサンの住む里に招待されることに成ったのは必然だろう。





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