第2話 冒険者協会と職業

【めぐみんside】


王都に着いたので、真っ直ぐに冒険者協会に向かいます。

 中に入り紅魔族の受付のお姉さんに、

「お姉さん、手っ取り早くお願いします !」

 受付のお姉さんを急がせて機械を操作させました。


「う~ん、智力は紅魔族としては低いかな ?

 魔力は紅魔族の中でもトップクラスね。

 生命力や筋力、敏捷値はかなりヤバいわね。

 幸運値は……逆の意味で、ヤバいくらい低いわ 」


「アークウィザードに成れますか ?」

 心配しながら、ゆんゆんが聞いています。

 自分の婚約者だから気になるのでしょう。

 私は、ソッと紅魔族の受付のお姉さんに彼が、ゆんゆんの婚約者だと教えてあげました。


「ゆんゆん、アンタの婚約者は職業、選び放題だよ。

 アークウィザードはもちろん、ソードマスターやアークプリースト。 ルーンナイトにも成れるよ」


 私は職業欄の下の方から目が離せなかった。

 お姉さんが解説した他にも可能な職業があり、一番下に ポツンと一つ知らない職業が記されていた。


 ハーフボイルド


 なんでしょう、この紅魔族の血が騒ぐ職業は !


「俺は、アー「ハーフボイルドでお願いします !」

 アラシの発言をさえぎり私が答えていました。

「わかった、わかったから深紅の目を輝かせながら迫るのを止めてくれ、めぐみん !

 実は私も気になっていたんだ。

 ルーンナイトの下にあるから上位職……いや幻の超級職かも知れない 」


 なんと、この私にも知らない職業があったなんて !

 私と紅魔族のお姉さんの気持ちは重なり、アラシの職業は『 ハーフボイルド 』に決まった。


「 『 ハーフボイルド に決まった 』じゃないわよ、めぐみん !

 いくらなんでも、やりすぎでしょう !」


 いやいや、紅魔族ともあろう者が何を言っているのでしょうか、ボッチ娘は。


「ちょっと待ってください !」

 冒険者カードを無造作に仕舞い出て行こうとするアラシを呼び止めました。


「どうしたのよ、めぐみん。 アラシに何か用なの ?」

 このボッチ娘、もう独占欲を発揮しているみたいですね。

「アラシと名乗っていましたね。

 私はアナタに質問があります !」


 横で、キャンキャンと五月蝿うるさいゆんゆんを無視して、この得体の知れない男の顔を睨み付けていると、ニヤリと口角を上げたコイツは、なんと私を横抱きにして歩き始めたではないですか !


「何をしているのですか、早く下ろしなさい !

 ……ヤメロゥゥゥーー !」


「アラシが、めぐみんをしている !

 めぐみんもアラシにしがみついているから、本当は満更まんざらでもない !?」


「おかしな事を口走るのはやめなさい、ゆんゆん !

 あなたの婚約者は変態ですか ?」

 私とゆんゆんのやり取りを見ていたアラシは、

「俺に聞きたい事があるんだろう ?

 ここでカードを操作する気は無いし、公衆の場で秘密の話しをする気も無い 」


 じたばたと抵抗して暴れる私を苦もなく抱き抱えていられるのは、筋力がヤバいくらい凄いからなのですか。


 ゆんゆんの案内で、王都の紅魔族が経営するテレポート屋に連れて来られた私は王都の人々にジロジロ見られて、いい恥さらしです。


 里の近くにテレポートしたアラシは、私をお姫様抱っこしながら、ゆんゆんを従えて族長の家に向かっている。

 幸か不幸か族長の家までの道すがら、同級生に会うことが無かったのは、せめてもの救いでしょうか。

 族長の家に着くと入口はゆんゆんが開けて、ずんずんと奥に入って行く。

 中にいる使用人達も圧倒されて、ただただ頭を下げるだけである。

 まるで、アラシがこの屋敷の主人みたいだ。

 紅魔族でも、これほど図々しい男を私は知らない!

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