第23話 対峙

 いざ、犯人との対面。

 あくまでも殺人だったと仮定した推理やし、いかにも心配があるというような口振りをしたが、今回の推理にはある程度自信がある。

 何より、物証を基に組み立てた推理には筋が通っている。


「先輩、ノックしてください」


 そんなことを胡桃に言われて思考が中断される。そう、私たちは今私が犯人とする人物の部屋の前に来ていた。


 コンコン。

「浜元です」


 はい、どうぞ、という返事が返ってくるまでの間が——ほんの数秒だったかのように思うが——もの凄く長い気がした。

 普段は犯罪者——推定無罪の原則があるから判決が出るまでは罪人ではないが——を守るべき弁護士が、1人の人間を糾弾しようとしている。

 私はこんなことをするべきなのだろうか。

 推理があっている、間違っている以前に私にそんな権利があるのだろうか。

 なぜやろうか。前の事件の時は特に思わなかったのに、今回はそんな思いが心の底では渦巻いていた。


 扉を開けて、中に入るとこれから糾弾しようとしている人物が佇んでいた。

 南雲巧

  ——まだあどけなさが残る、少年の姿がそこにはあった。

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