第7話 後日談2

「確認したいこと?別にいいですけど。この工場は殺害現場の可能性もあるからあまり荒らさないで下さいね。

 もう、荒らしちゃっている人もいますけど」

 そう言って、櫻井刑事は横目に前嶋社長を捉える。

「あれは、不可抗力です」

 そんな訳あるかぁー!もうちょい、マシに意識を切り取る方法あったやろ!どこに角田の体を棚に思いっきり跳ばす必要があるねん!

「まぁ、確かにそれもそうですね」

 いや、納得するんかーい!

「じゃぁ、私はちょっと確認してきますね」

「因みに、あの技ってどうやってやるんですか?」

「ああ、あれはねぇ……」

 ああ、思いっ切り無視された。知ってたけどね!


「先輩、何を見てるんですか?」

 おっと、びっくりした。頼むからスーッと背後に忍び寄るんじゃなくて、いつもみたいにうるさくしといてくれ。

「ああ、ちょっと郵便受けを見ているんやけど……」

「それは見たら判りますよ。郵便受けを見て何をしているんですか? って訊いてるんです!」

 何だろう、微妙に体の中から湧き上がってくる憎悪は。

「あ、そう。これ見て何か気付かん?」

 パンパンになった郵便受けの中身を地面に並べる。中身は殆どがチラシと茶封筒であった。

「開けれたんですか?」

 多分、郵便受けが開けれたのか? ということを訊いてるんだろうなぁ。さっきの例があるからな。何か違うことを聞いてるんかなぁー?

「いや、ダイヤル式やったけど、解錠番号に合わせてあった」

「ふぅ〜ん、そうですか。不用心ですね」

「で何か気付かん?」

 しわしわになったチラシも丁寧に伸ばして並べていく。

「借金の督促状毎日来てるじゃないですか」

「いや、中元、それはちゃうで。最初の内はや。先方に状況の確認と少しでも早く入金してもらうため穏やかに促すもんが催促状。で、支払われていない事実や新たな支払期日、支払われなければ法的手段をとる旨などを記載し、取引先へ支払いを強く促すのが督促状や。一応明確な違いがあるんやから覚えとかんと」

「すいません。勉強不足で」

「ほんで、金融業者からの返済要求はほんまに毎日来とるか?」

「あ!来ていません!1日だけ!」

 そんな世紀の大発見みたいに言わんでも。櫻井刑事といい、胡桃といい大袈裟に言うやつが多い。

「うん、確かに1日だけ来てないけど、これだけ来ていて毎日来ていて1日ないとすると1日だけここから取ったと考えるのが無難やろ?」

「あ、でも何で角田は1日だけ督促状を取ったんですか?」

 私がどう答えようか迷っているとパトカーが近づいてくるサイレンの音が聞こえてきた。どうやらパトカー群は大川沿いに来たようだった。今は"大ちゃん"もいなくなっているから野次馬もいなくなっているのだろう。


『新しい出会い』了


 拙作をお読みくださりありがとうございました。

 続きも更新するつもりです。

 これからもよろしくお願いします。



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