筋肉は裏切らない〜異世界の脳筋〜

ナギさん

第1話 筋肉ァァァァァ!

 俺はいまから死ぬのだろう。事故などではなく、幸せに死ねる。老衰だ。これ以上ない、自分なりに最高の人生だったと思う。

 真暗な世界でそんな事を考える。


 次は、どのような人生が待っているのだろうか。


 そんなことを思いながら、俺は完全を意識を手放すのだった。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「1267、1268、1269、1300」


 僕の名前はミナト。ここ、カクイ村に住む17歳の成年である。ここで皆に言ってお  かなければいけないことがある。それは、この世界は僕にとって異世界ということだ。


 剣もあれば能力スキルなども存在する。しかし、僕には周りから『ゴミ能力ごみスキル』と言われている『重力操作(自分だけ重くする)』という能力を持って生まれてきてしまった。


 実際前世の記憶がある僕からするとなんで弱いんだろう? と思うのだが、この世界はまだ科学が発展していないような世界なのでしょうがないのかもしれない。


 直接的に人に鑑賞をするような能力ではないので弱いと言われているのだろう。


「あ、父上」


「ミナト、そろそろ飯にしよう」


 父の言葉が聞こえる。


「わかりました、父上」


 僕はそう答える。


「修行のやり過ぎは厳禁だぞ? ミナトの能力は体に負荷がかかりすぎる」


「父上、問題ありません。他よりも修行をせねば、他を超えることばかりか追いつくことすら叶いません」


「それはそうだが・・・・・・」


「僕の能力は他人に干渉することはできず、私にしか効果がありません。その時点で最初が遅れているのですから、他よりも何倍も何十倍も頑張らねばならぬのです」


「う、ううむ・・・・・・」


「父上は僕に甘すぎます。僕はもう17ですよ? 成人まであと一年、そろそろ子離れしてください」


 冷たいと言われようがどうだっていい。そもそも前世の年齢を考えればすでに百歳を越えているのだから、正直父親に甘えるような年ではない。僕にはむこうでの記憶が残っている。というより、最近思い出したという方が正しいだろう。


 だから今までの17年間の性格は残っているし、それまでの記憶もある。ただ昔の記憶を取り戻しただけに過ぎないのである。


「まあ、頑張っているのは良いことだな」


「ありがとうございます。そんなことよりも早く飯にしましょう。腹が減りました」


「ご飯は一緒に食べてくれるのに・・・・・・」


 そんな父の言葉を無視して家の中に入る。家に入ると、美味しそうな匂いが鼻に中に広がる。


「おかえりなさい、ミナト」


「ただいま帰りました、母上」


「義兄様、おかえりなさい!」


「お〜セン、いい子にしてたか〜?」


「いい子にって、そんなに時間が立ってるわけじゃないよ?」


「義兄として義妹のことは気になるのだよ」


 妹と言っても義理の妹である。身元不明の少女を父が拾ってきたのだ。出会った瞬間にめっちゃ可愛いって思ったのは内緒の奉公でお願いします。


「ミナト、机におかずを持って行ってもらってもいいですか?」


「わかりました母上」


 お盆に複数のおかずを乗せて、机に持っていく。ついでにお米と味噌汁をお盆に乗せて、家族全員分のご飯を机に置く。


「運んでくれてありがとうございます♪ カイさんが来たら食べましょうか」


「父上が僕を呼んだのに一番遅いとは何事なのでしょうか」


「なんででしょう・・・・・・」


「外へ見に行ってきます」


「お願いします」


 そう言い、僕は外に出て父を探す。そういえば、父はあの会話の後家に入ってこなかった。何故なのだろう・・・・・・。


 そんな事を考えていると、一つの声が響く。


「み、ミナト! 見つけられてよかった・・・・・・盗賊がこの村を襲ってきた! 今すぐ家族全員を連れて逃げろ!」


「なんでまた盗賊なんて・・・・・・」


「今村の男達が交戦してる、だから今のうちに――」


「エンさん、母と義妹を守っていてください」


「え? あ、ちょ! ミナト!」


「エンさん独り身ですよね。お願いします」


「独り身は余計だコラッ! って、なんで盗賊の方に向かうんだ馬鹿! ・・・・・・ったく、死ぬんじゃないぞ」



 その場につくと、村の男達と盗賊が激しい戦闘を繰り広げていた。地面を見ると、そこには何人もの負傷者が倒れ込んでいる。しかし、これは僕らの村の者ではなく・・・・・・。


「・・・・・・やっぱり・・・・・・」


 盗賊の方だったのだ。


「とりあえず、僕の方もやりますか」


 前方から馬鹿なのかと思うほど単調に剣を下ろす盗賊。


「真剣白刃取り! からの筋肉ァァァァァ!」


 そのまま剣を奪い取り、地面にめっちゃ深くブチ込む。そして、手ぶらになった盗賊の腰辺りを持ち・・・・・・。


「そしてまた筋肉ァァァァァ!」


 地面にぶっ刺す。


「え?」


 盗賊が素っ頓狂な声を上げる。何故こんなことができるようになったかと言うと、とにかく筋トレをしまくったからである。自分から言わせてもらう。僕は脳筋だ! ま、そんなことよりも・・・・・・。


「僕の方は終了だなっと。父上のところに行くか」


 そして俺は、地面に埋まった盗賊をそのまま放置して父のところへ行くのだった。

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