第51話 2/13 幸せな猫と無職
いい加減闘病の以外の事を書きたいので2/13アゲイン。お昼前、猫は寝る時間なのに窓を開けろとかカリカリじゃなくてウェットがいいとか散々わがまま言って寝ない。仕方なく抱き上げてギューギューしてると今度は放せとなく。なんて悪いこだ、おまけに尻が汚れてるじゃないか。ウェットティッシュを手の中で温めて尻を拭いてやる。嫌がる割にはちょっと嬉しいらしい。うちの猫はずっと子どもじゃないもんの精神年齢で止まっている。人間に換算すると30代半ばぐらいの歳らしいけど、まあ、猫だからずっと子どもでいいよ。可愛いだけだしね。
猫はひなたで柱に頭を預けてうとうとしている。猫が暖かそうなのはいいことだ。こちらがじっと見ていると起き上がって水の器の前でちいさく「アー」とないた。新しい水に取り換えろと言っている。はいはいと返事して軽く器を洗い新しい水で満たす。猫はそれをしばらくじっくりと眺めた後ようやく水を飲む。そして外を眺めまたぼんやりしている。たぶんそろそろ寝ようかな、どこで寝ようかなとか考えている。こんな時私がソファーに座ると猫が喜んで膝で眠りだすのは知っているが、それをすると3時間ぐらい平気で吹っ飛ぶ。さすがにそれはキツイ。飼い主はなぜかいま桃鉄がやりたくてしょうがないんだ。桃鉄、やったことないけど。
猫はチラリと私を見て、私が机から動きそうにないのを確認するとのっそりといつもの猫用テントに入っていった。これでもうよほど大きな音を出さない限り夕方まで起きてこない。いつもこのタイミングで掃除機かけそびれたなぁと思う。今日はとてもいい天気で、暖かくて、のどの調子が悪いこと以外なにもない。予定は朝のゴミ捨てだけ。世の中は連休明けで忙しいらしいのに暢気なものだ。私を羨ましがる人はたくさんいるだろう。そして私もちょっと幸せを感じていたりする。多分あれだ、猫の幸せはあったかいとお腹いっぱいが大半を占めるというのと同じだ。私はいま腹が満たされていて部屋が温かいから幸せなんだ。まあ貯金が尽きればなくなるタイプの幸せなんですが。そんなこと気にならないくらい今部屋の中は静かで温かい。結局のところ幸せ不幸せを決めるのは自分の心持次第なんだよな。焦ってる時の私なら同じ状況でも不幸を感じて丸まってるだろうし。だけどそんな感受性しかない子供のような自分が嫌いじゃなかったんだよ。でも世の中ってそれじゃダメみたい。
仕事を辞めてから一生懸命怒りの感情をなくそうと努力してきた。節約の為に物欲もなくそうと努力してきた。凪のような、波風立たない平穏な暮らしが幸せなんじゃないかと思ってた。けどそんな理想に近づいた時、私の中から物語が消えた。子供のころからそれだけが支えで、物語を作る事こそが生きる意味だと思ってたのに、なにも思い浮かばなくなった。
今少しづつ怒りの感情を思い出している。怒るのはすごく疲れるけど、無駄かもしれないし怒らない人に憧れてもいるけれど、私にはどうやら必要らしい。自分の中にずっといた、すぐ怒る「無敵の少年」を取り戻したい。現実はどうであれ、彼がいれば私は空だって飛べる。その結果墜落して死んでも構わないんだった。そう思って生きてたのに、上手く世間に溶け込めないのが悲しくて忘れかけてた。
まあ少年は生活能力ないから大変なんだけどね。取り合えず今日は猫の真似をして丸くなって眠る。そんな日。
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