そのナナ 八尺様さん

「やっと出て来やがったかい!張り込みご苦労だったねくねくね、あとはアタシらに任せな!」

 驚きに目を回しながらも、くねくねは仲間の怪異たちにSOSを送った(……らしい。方法はまるでわからないが)。たちまち辺りにあの黒いモヤが満ちたかと思うとその中から、口裂け女を始めに滲み出るように次々と現れる姿。

 宇宙人に真っ先に飛びかかったのはターボばばあ、流石に速い。

「キェぇぇぇ!」先の雪辱に燃えている老婆の奇声が響く。抱きついて両足でバタバタと連続キック、これは強力そうだ。宇宙人は体をブルリと振るわせると、配達員のバッグを掴んでいた手を離し、ターボばばあを振り払おうとその襟首を取る。

 するとすかさず、その下に這い込んだのはてけてけ。

「キィキィ!」配達員に両手でしがみつくと、下半身の無いその体でどうやって動いているのか、浮遊している宇宙人の足元から配達員をサッと引き摺り出す。4〜5メートルほど距離を置いた、その場に次に現れたのは。

「ぽぽぽぽぽ……」2メートルを優に頭一つ超えそうな長身の白い服と帽子の女、八尺様だ。

「ヒィィ……!」立て続けに起こる異常事態に周章狼狽するばかりの配達員の男を抱き抱えると、もろともにその姿が闇の外に消えていった。

(あの人を、助けた?)

 それは見事な連携プレイ。早苗は目を見張る。そして思い出す、くねくねは言っていた、自分たちは人間に危害を加えるつもりはないと。

 やがて八尺様は再び、一人で闇の中に帰ってきた。宇宙人を睨んでいた口裂け女が、視線をサッと八尺様に。

「八尺!ノッコ達もたのむ、に連れ出しておくれ!」

「ぽぽぅ!」頷きなからそう一言、どうやら「はい」と言ったようだ。その姿がフイと消えたかと思うと、一瞬でノッコ達三人の背後に出現する。三人束にまとめるように背中からぐるりと長い両腕を回すと。次の瞬間!

 ノッコ達三人は、にいた。そう、宇宙人の出現したあの場所は、半径およそ10メートル程の、ドーム状の暗闇で覆われていた。その中にいたはずの彼女達は、八尺様によって外に連れ出されたらしいのだ。だが、わずかな距離とはいいながら、どうやって移動したのか?キョロキョロと辺りを見回す三人。すると。

「ぽぽぽぽ……」

 八尺様が何か、そっと語りかけてきたようだ。

「逃げてって。八尺様さん、そう言ってます」

「わかるのノッコ?」「はい。あと、あの人をお願いしますって」

 ノッコの指差す先に、道路にうずくまったままの、あのムーバーの配達員。

「何か様子が変だよ?ケガしてるのかも!早苗、ノッコも手伝って!」

 行動力なら、仁美は誰にも負けない。彼女にもこの事態に困惑はあったはずだが、我に帰ったような顔で二人に声をかける。そして。

「フラットウッズはきっと毒ガスを使うよ!気をつけて、みんなに言ってあげて!」

「ぽぽ!」仁美の言葉に、八尺様は白いワンピースをサッと翻して闇のドームに向き直り、そしてその姿は瞬く間に三人の眼前から消えた。

「大丈夫ですか?しっかり、どこか痛い所は?」

 男は仁美の呼びかけに、胸を押さえてうめくばかり。顔色は青ざめ、しかし額には脂汗。ショック症状だ。

「……早苗、やっぱりこの人どこか痛めてる!救急車!」

 早苗が取り出した自分のスマホ。見れば、先ほどの禍々しいLIMEのフレンド申請画面のまま。早苗は思い切った気持ちで承認ボタンを押してその画面を閉じると、すぐさま119。

「……ええ、男性が一人、道に倒れているんです。声掛けしてますが返事がありません。お願いします……仁美!救急車が来てくれるわ!

 ……え?!」

 早苗も、仁美もノッコも、固唾を飲む。あの黒い闇のドームが、みるみる小さくなっていくではないか!

 そしておそらく十数秒もかからなかったに違いない、それはその場から跡形もなく消えた。フラットウッズは?そして怪異たちは何処へ?

(異界に……ひきずりこんだんだわ……!)

 何事もなかったかのような街並み。だが三人と共に、そこには苦しむ男が取り残されている。つまり今までの出来事は幻でも悪夢ではなかったのである。


「さぁて、ここからが本番だよ。ここでなら人間を気にせず遠慮なく戦える。覚悟しな、変なの!!」

 そこは一体何処なのか、闇に包まれた空間。謎の怪物と、取り囲む怪異たち。

「あらかじめ言っといてやる。今すぐ頭を下げて謝れば、手荒なことはしないでおいてやるよ……さもなかったら!!」

 口裂け女の宣告に、さっと飛びのくターボばばあ。もちろん「さもなかった」場合に備えて虎視眈々のままだ。挟み撃ちにする位置には、キイキイと鳴くてけてけ。

「フラララララ……フラーーーーーーー!!」

 怪物の返事は大きな雄叫び。何を言っているのかはわからない。だが。

「ふぅん、やっぱりおとなしくする気は無しかい?上等だね!!」

 口裂け女が顔のマスクをかなぐり捨てる。大きく裂けた口をニヤリと大きく歪めて、そしておもむろに肩から下げたあのポーチから、ズルズルと取り出したもの。どうやって収まっていたのか、それは長い革の鞭だ。

「人間の見るとやらで覚えたのさ、あたしみたいなのには、コイツが似合うってねぇ!」

 仁美がその場にいれば、きっとこう言ったに違いない。「妖怪人間ベミー!」

「さぁいくよっ!……って、何だいくねくね!邪魔をおしでないよ?!」

 鞭を振り上げた口裂け女の腰に、なぜかくねくねが背後からしがみつく。

「あ、あねさんちょい待ち、待った待った、まずいよ!アレはね、宇宙人なんだって!」

「はぁ??宇宙人んんん??」

「さっきのお嬢さん、ノッコのダチの一人が言ってたんだよ。アレ、昔アメリカに現れた宇宙人なんだって!大変だよ?宇宙人なんて、下手にやっつけたら宇宙戦争の引き金になったりとかいろいろ……ヤバイって姐さん?!」

「ああ?ちょ、くねくねお前、人間の見る映画の見過ぎだ!!宇宙人なんているわけないだろ?!……離せコラ!!」

 もつれる二人にじれるのはターボばばあ。

「ちぃぃぃぃぃぃ!!だからって、先に暴れて人間に手を出したのはアイツの方じゃないかい?!理があるのはこっちだよ!だったらあたしが!!」

「待って待って婆ちゃん!」「うるさいよくねくね!!」

 あわや飛び掛かろうとしたターボばばあを、背中から抱き留めたのは八尺様だった。

ぽぽぽーぽ、ぽぽぽぽ、ぽぽぽぽぽぽぽうかつに近づいちゃダメ、あれは毒ガス使いなんだって!」

「「「「毒ガス?!」」」」

 八尺様の言葉に思わず声をそろえた怪異たち(もっともてけてけはキイと一声鳴いただけだが)、するとそれをまるで待っていたかのように!

「フラーーーーーーーー!!」

 宇宙人(?)が両手を揃えて上に上げると、そのスカートが釣られるようにふわりと持ち上がる。見よ、その中心部から噴き出して来る、緑色の煙!!

「……ぐはっ!」「目がしみるぅぅぅぅ!」「こりゃたまらん!」「キュイー!」

 物理・化学・生物学、いかなる人間の科学でも分析不能な怪異の。だが怪物の発するその気体は強烈な作用を与えたのだ。喉も目も焼けるような刺激と痛み。

「ちくしょう、何だいコイツ、ゲホッ!!」

「いや、ゲホゲホ、だから宇宙人だって姐さ……ぐはぁ!!」


「あーあ。もぅ、なかなか繋がらないなぁ……あ、来た来た、コネクト信号!

 もういいわ、今日もザコしか釣れなかったし。帰るわよフラフラ君。

 ここをこうして……ポチッとね♪」

 ドーナツ屋のあの少女ヤスデが、手元の装置を操った。


「ちきしょう……ゴホン!あいつめ、もうただじゃおかな……ええ??」

 猛毒ガスに咳き込みながらも、ようやくくねくねを振り払って。口裂け女が反撃の鞭を再び振り上げた時。

「フラララララ……ウィーン・ウィーン・ガチャコラガチャン!」

 奇妙な声(というより機械音)をあげながら、怪物の姿が変わる。両腕を胴体に引き込み、フード状の頭がパタリと、蓋のように被さる。その胴体も短く太く、丸い鉢を伏せたような形となり、その下に広がるスカートは、今は美しい円錐台形。

 やはり仁美がこの場にいたならば、彼女はこう叫んだだろう。

「アダムスキー・タイプ!」と。

 そして自ら空飛ぶ円盤U・F・Oに変形した宇宙人(??)は、そのまま天高く飛び去った……怪異の作りだした異空間をも飛び越えて。

「そんなバカな……こんなことがあるってかい?!」

 自分達のホームグラウンドであるその異界を、たやすく脱出する宇宙(???)。

 咳き込む喉に悔しさと驚きをこめながら、口裂け女は叫び、手にした鞭を地に投げつけた。


 やがてその場に、救急車が到着した。車を降りて来た救急隊員を案内し、男を引き渡す仁美と早苗。

「こちらの方がここに倒れていた、皆さんは……そうですか、わかりました。ご報告ありがとうございます」

 一応お名前を、問われた二人は学生証を見せ、名前と電話番号を告げた。

「どうやら肋骨を骨折されているようです。何か事件かトラブルの可能性もありますね。もしかしたら警察からお二人に連絡がいくかも知れませんが、その時は申し訳ありませんが……」

 二人が了承したのを受けて、救急隊員は男を救急車に乗せて去っていった。

「『通りがかっただけ』か。そうよね、そう言うしかないわよね」

 仁美がつぶやく。そう、救急車が来るまでのわずかな間に、二人と申し合わせていたのだ。そう言おうと提案したのは早苗。

「まさか誰も信じてくれやしないもの……宇宙人だなんて……誰も……早苗の言う通りだよね、だけど!悔しいよ……」

 気性の真っ直ぐな仁美。嘘をつかねばならぬこと、それは無論さりながら。人を傷つけるあの宇宙人を、秘密にして野放しにするしかない自分が許せない。

 そして。

「ねぇ、ノッコ!」呼びかけた仁美の言葉は厳しい。

「君、本当にあいつのこと知らないんだよね?そうだね?でも君の友達の変わった人達、みんな『あいつを狙ってた』みたいだけど?!」

 その剣幕に押されたノッコは、喉から声が出ない様子。なんとか辛うじて一つ頷きを返すと。

「いいよ、あたしノッコが好きだから、。でももし、あたしになにかあいつのことで隠してるなら!もうあたし、君の友達じゃいられない。それははっきり言っとくよ!!」

「仁美!」さっと二人に背を向けて一人去ろうとする親友を呼び止める早苗。だが仁美は振り返らず、ただ一言。

「ごめん早苗、ちょっと一人で考えたいの……だから今は、ごめん!」

 その背中には取り付く島もない。夕焼けの陽がようやく落ちていくその先をさして、仁美は小走りに歩き去っていった。

 そして振り返ればそこに、両の目に今にもこぼれそうな涙をたたえて立ちすくむノッコの姿。

「ちょっとそこまで、一緒に行こうよノッコ……ね?」

 早苗は我知らず、ノッコの今日は小さく思える肩を抱いてそう促していた。


 早苗はノッコを誘って、電車でわざわざ一つ先の駅で降りた。昴ヶ丘の繁華街からはやや離れた、辺鄙な街並みのその駅前にあったのは、一軒の個人喫茶店。あまり流行らなさそうなその店だが、実は早苗の父俊介の。早苗も何度か連れられて来たことがある。彼曰く、

「ふふ、まぁこのお店はね、内緒だよ?正直きれいじゃないし、お茶も料理も美味しくはないかな。この駅前に一軒だからお店が続いてるようなものだね。でもその分お客が少なくて静かだろう?僕は気に入ってるんだ、考え事にはいい隠れ家さ」

 そう、今はこの店のその寂れたところが好都合なのだと、早苗は思う。女子高生二人というのはこの店にとっては変わった客種だろう、他に客がいるなら目立つところだが、期待した通りの貸し切り状態だった。

「何がいい?遠慮しないで。そう……じゃぁ二人でクリームソーダにしよう。小さい頃ここで私、お父さんに言ってそればっかり頼んでもらってたんだ」

 ソーダを二つ頼んだ早苗は、改めてノッコに向き合った。いつものあの無邪気ではつらつとした笑顔が消えて、しおれた花のように首を垂れているその様子に。

「仁美の言ったこと、気にしてる……よね……?大丈夫だから!」

 努めて笑って見せる早苗。

「私、仁美のことなら何でも知ってる。仁美はね?嘘が嫌いなの。だからさっきは不機嫌だったのよ。でもあれは、仕方なくみんなでついた嘘よ?ノッコだけのせいじゃない。それはきっと、仁美だってわかってるはずだから」

「仁美センパイ、嘘が、キライなんですね?だから……わたしのこと嘘つきだって思ってる……だから」

「待ってノッコ、そんなこと……」

「仁美センパイ、さっき言ってました。『君の友達の変わった』って。わかるんですわたし、ずっとそう言われてきたから……お化けさんたちのことは、誰にも信じてもらえたことないから……!」

 ノッコのテーブルに伏せているはずの視線が、早苗には突き刺さるように感じる。そう、確かに仁美は怪異たちのことを信じてはいなかった。ノッコの言葉を「飛び切りの面白いペテン」だと。そして早苗自身はと言えば、そうと知りながらコウモリのように、二人にどっちつかずの曖昧な態度を取り続けていたのだ。

(違うよノッコ、一番の嘘つきは私だ……だってあなたは!)

 そう彼女だけが、一つも嘘をついていない。なのに嘘つきと呼ばれる。おそらくこれまでも、沢山の周囲の者が彼女の純心をそうやって踏みにじって来たのだろう。早苗は胸の潰れるような思いがする。

 気まずい沈黙が数呼吸。早苗は重い口で問うた。

「ねぇノッコ、クラスでお友達、出来たかな?」

 答えはない。ノッコはじっとテーブルの面に目を落としたままだ。そして。

「わたし、ずっと前に八尺様さんに一度、言われたことがあるんです……

『もう私たちのことは忘れなさい』って」

「え……?」

 ノッコは早苗の顔を見ない。伏し目がちだった視線を、今度は目の前にいる早苗を飛び越えるように、向かいの壁と天井の境を見つめて言う。

「確か、中学に入る頃だったと思います。わたしそれまで、遊ぶときはずっとお化けさんとばかり遊んでて。お化けさんたちはそういう時、お化けさんの国に連れて行ってくれたんです。広いお花畑があって、人は誰もいないところに」

(異界だわ。神隠しの世界……)

「いろんなお化けさんと遊んでもらえましたけど、一番お世話になったのは多分八尺様さん。子供が好きなんだって、そう言ってました。縄跳び、あやとり、かけっこ……いつもわたしの相手になってくれてたんです。

 でも。中学に入る時。八尺様さんにこう言われたんです。

『ノッコはもう大人になりかけている。私達がつくる、子供のための世界にはもう連れて行ってあげられない』って。『これからは人間のお友達と遊びなさい』って。そうじゃなかったら、『独りぼっちになってしまうから』って……

『だから私達のことはもう忘れなさい』って!『あなたが望むなら、忘れられるように術をかけてあげることも出来る』って!でも!!

 わたしはそれはどうしてもイヤでした、うんって言えませんでした。

 八尺様さんの言った通り、わたし、中学でもずっと独りぼっちでした。だけどそれでも構わないって、お化けさんたちとずっと友達でいたいって、ずっとそう思ってきて。お化けさんたちもとうとう、忘れさせることはあきらめてくれました。でもその代り、いつかちゃんと人間のお友達もつくるようにって。昴が丘のお化けさんたちの代表の口裂けさんから、その時だけはとってもとってもきつく言われました。

 それでわたし、あの日、思い切ってセンパイたちにお願いしてみることにしたんです。オカルト研究会に、入れて下さいって。

 わたし……とっても嬉しかったんです。センパイたちはわたしの話をちゃんと聞いてくれたって。わたしもサークルでいろんなお話を聞かせてもらって、おウチにも来ていただいて……とっても楽しくて……だけど……もう……」

「……ノッコ!」

 向かい合って座っていた席から立ち上がって、早苗はノッコの隣に座り、溢れた涙の伝うその顔を胸にかき抱いた。テーブルの上で、取り残された二つのグラスの中で、アイスクリームがしばし、ただ溶けていく。

 そして。落ち着くまでどうにかなだめた後、家まで送ろうという早苗の言葉にそっと首を振って、ノッコは店の入り口から一人分かれて帰って行った。


 次の日の朝。登校して教室に入った早苗に、クラスメイトの一人がサッと近づき呼びかけて来た。

「ねー早苗、仁美、今日休みなんだって?珍しいね」

「仁美が?」

 級友は、早苗のその反応に首を傾げる。

「え、知らなかったの?なんで休んだのか、早苗なら知ってると思ったのに。今朝わたしの家に電話があったのよ、先生に休むって伝えて欲しいって……変ね?」

 誰に対してもさっぱりした気持ちのいい態度の仁美は、クラスの人気者だ。彼女とも仲は良い。だが、流石に一番の親友の早苗を差し置いて何故と、これは妙だと思ったのだろう。そして。

「なぁに?そんな怖い顔して。あれ、もしかして仁美とケンカでもしたの?

 ……え?……まさかね」

 当たらずしも遠からず、図星を刺された気持ちの早苗。ますます硬くなるその顔色に、級友は少し気まずくなったのか、そそくさと早苗の側を離れていった。

 一方早苗も通学カバンを置くと、入ったばかりの教室を忙しく出て行った。赴いた先は、1ーCの教室。入り口で、しかし中の視線から隠れるように佇み様子を伺う。

 登校後、1時限前の教室。おはようと声を掛け合い笑いさざめき合う一年生たち。忙しなくも賑やかな中で。

 ただ一人ぽつんとうなだれて、机に腰掛けているノッコがいる。

(ノッコ……!ああ、でも!)

 駆け寄って声をかけてあげたい、だが足は前に進まない。かけるべき言葉が見当たらないのだ。悔しさに唇を噛みながら、早苗はその場を立ち去った。

 そう、今のままでは、自分は仁美にもノッコにも対峙できない。二人にキチンと意見が出来る、そのためにはが必要なのだ。


 放課後。ある場所を目指して街をしばし彷徨った後、早苗は、静かに決意する。

「そうね。やっぱりこれしかない」

 スマホを取り上げ、LIMEを立ち上げ、音声通話。

「モシモシ?ワタシメリーサン、チョットビックリシテルオニンギョウ。サナエチャン?アナタカラワタシニデンワダナンテ……ドウシタノ?」

「メリーさん、あなたに私、お願いがあります。口裂け女さんのいるあの路地が、私だけだとどうしても見つかりません。あの路地自体がもう、あなた方怪異の世界なのですね?

 私、口裂け女さんに伺いたいことがあるんです。私を、あの路地に案内していただけませんか?」

「ワタシメリーサン、ミチアンナイガトクイナ、オニンギョウ。イイヨ、サナエチャン。ショウテンガイノ、ポストノトコロデ、マチアワセ。ドウ?」

「ありがとうございます、すぐ近くです。そこでお待ちします……!」

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