5.江戸時代とファッションについて考える
物語で描くものに、ファッションもありますよね。
私、服装の描写を長々とするのは得意でないのですが、今回書こうと思っているものは江戸風の異世界です。
服装を「着物」と表現しては、ちょっと簡素というか乱暴ですよね。そもそも、主人公は海外から初めて異文化の地に来るのですから、生で見た着物をどう思うのか。
考え出したら、江戸の服装をちょっとおさらいする必要があるなと思いました。
公式の場での服装を洋装とすると、明治時代に定められたことで、日常でも和装から洋装へと様変わりました。とは言え、着物は現代にも受け継がれる日本の文化ですよね。
古くは布そのものに価値があり、配下に自分の着物を脱いで褒美とする、なんてエピソードがあったりします。ちなみに、古代では褒美を現す「禄」の代表的な品が布でした。
さて、江戸以前になれば、庶民は着るものがあるだけありがたい時代もあったでしょう。
それが、江戸の町で大きな呉服問屋が栄えて取引が行われ、町民も少しずつお洒落に気を配れるようになったんですからね。平和って大切ですね。
勿論、江戸時代になってすぐ、庶民がお洒落になったわけではありません。少しずつ様変わりしたんです。
武士達の公的服装もそうですが、庶民の服も、初期、中期、後期と見比べると違いが出てくるんですよ。服装は世相を表すものだなとも思えます。
現代でも、服装のトレンドカラーが景気の良し悪しを現していると言いますからね。
まぁ、トレンドカラーって言っても、ファッション業界が季節ごとに出す流行らせたいカラーと、実際流行したカラーがあるわけですが──景気を現すのは後者です。
どんなに「今年は赤が流行るよ!」と言ったところで。不景気なときに、来年も流行るかどうか、着回せるかどうか分からない色を買いはしませんからね。
話が少しそれましたね。
江戸の変化はどうであったか話を戻しましょう。
まず、階級格差があったので、色の制限は当然ありました。
初期は動乱の戦国時代から平穏な時代へ移るなか、庶民の懐が潤うにも時間を要しました。
なので、初期では色味どうこうなど言う余裕もなかったでしょう。着ていた小袖(袖幅が狭く、袖丈も短い着物)も、麻のような質素な素材のものでした。
この麻のような質素な小袖、上流階級では下着に使われていたとも言われますが、肌触りは悪かったでしょうね。
次第に、庶民の間でも、木綿が流通するようになります。絹は高価なものとされ、上流階級との格差の証とも言えたかもしれませんね。
江戸中期になると庶民もお洒落に気を使えるくらい、懐が潤い出します。
当然、身分社会ですから上流階級である武士の真似は出来ません。農民に至っては、木綿と麻、以外の生地を使った着物を着ることすら出来ませんでした。買える買えないの話ではなく、政府の取り決めってやつですね。
そもそも、江戸時代に入って戦がなくなることで、人口も増え、特に農民の数は爆発的に増えたんです。
そこで徳川家康公が「百姓は生かさず殺さず」と言ったとされています。この一言を聞くと、服装に制限があったりして、虐げられてた?と思いそうですが、そうでもないんですよ。
勿論、格差は必要だったんですが(武士の存在意義や武士道に関する話しにもなっちゃうので、そこは割愛)、生かさず殺さずは搾取という意味ではなく「生活に困らない程度の財を残せるように」ということだったそうです。
農民の中で格差が生じたり、誰かが、あるいはどこか一部の地域が得をしたりしないよう考えてのことだったようですね。
また話がそれましたね。笑
では、町民たちの服装はどうだったのか。
農民同様に、制限はありました。
それでも、時代が進んで蓄えが出来るようになると、小袖の色や柄をお洒落に着こなすことを考えるようになりました。裕福な町民には、小袖の上に打掛を羽織る者もいたそうですよ。
打掛を作るまでいかなくとも、あるものを上手く組み合わせたり、帯の結びを考えてみたりと楽しんだそうです。
前回もちらりと語りましたが、歌舞伎役者や花魁などの錦絵を参考にすることもあったようです。錦絵は現代のファッション誌のような側面もあったんですね。
まるで、現代の学生のようですよね。
最近では校則が緩い学校や、私服の学校もありますが、制服着用の高校だと、それに合ったものを身に付けないと、イタイ服装になります。
でも、決められた制服だけじゃ、可愛くないんですよ。
裾をあげて、靴下の色や長さにこだわり、髪型、前髪をこだわり……
やりすぎると先生に、君どこのクラス?と注意される。
よく、うちの娘も「先生にスカート丈が短いって怒られた」と言ってますね。まぁ、短いんですけど。笑
江戸時代、町民で流行った柄の中には、武士が使っていた小紋なんかもあるんですよね。これなら地味だよねっ、怒られないよねって話したりしたんでしょうかね?
錦絵を見て、持ってる小袖を重ね合わせてみてたり……
うん。想像するとやっぱり現代の学生(娘)とやっていることは変わらないなと思います。
制限があるからこそ、ファッション研究に余念がないなんて人もいたかもしれませんね。
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