悪役も大変よ

桐原まどか

悪役も大変よ



お義兄様、いけません。あなたはわたしのお姉様の旦那様じゃないですか…


それがどうした?俺が本当に愛していて、結婚したかったのは、マリー、君だ。


男女がひそひそ会話していた、とある屋敷の小部屋。

その扉がガチャリと開けられた。

そこには仁王立ちで腕組みする、気の強そうな女の姿。


お姉様…。

妹が息を飲む。

リザ…。

妹に言い寄っていた夫―と言っても、結婚して三ヶ月も経っていないが。

二人を見て、露骨なため息を吐いた。


話は聞かせて頂きました。

そんなにわたくしがお嫌なら、婚約破棄なされば良かったのに…。


リザは首を横に振った。

わたくしと婚姻関係にありながら、妹に迫るなんて…。

キッと睨みつける。

わたくし、リザ・ナルフェの名のもとに、あなたたち二人を領地外に追放します!早く荷物をまとめなさい!!


そう宣言すると、リザは小部屋をさっさと出ていった。

バタンと扉が音を立てて閉まる。


追放を宣言された二人は互いの顔を見た。

追放、という事は、当然、離縁だ。

という事は…。

二人は無言で互いの手を取り合った。


自室に戻ったリザはため息を吐いた。

―まったく、骨の折れる事…。


そう、リザは知っていた。夫が妹・マリーに好意を持っている事も、マリーがそれを憎からず思っている事も。しかし。家柄がそれを許さなかった。だから。

「わたしが悪者になってあげるわ…」

ふふっ、と笑う。

―幸せになりなさいよ!

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悪役も大変よ 桐原まどか @madoka-k10

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