六王女の歓迎際と黒い宣教師の冒険

黒のクワメと白のシレシア

プロローグ

「ううおおおおおおーーーーーーーー!!!!?」


ゴド――!!


「痛っー!」


さっき、ボクは確かに自分の部屋で聖書朗読の練習をしていた。


それがどうなっているか、いきなり変な耳鳴り音が襲ってきて、閃光と共にボクをまるで天から突き落とさせてきたかのようにこんな訳のわからー、...え?


「………」


どういう訳か、確かに床へと落下してきたボクだったが、起き上がっていくとこの周りの景色は明らかに自分の家でも、自分が住んでいた【アイン・グナイダー】という小さな町の一部でも全くなくて、見覚えのないものばかりだ。というか、そもそもこういうデザインの室内は本当に見たことないんだ!


「……どど、どうなってるんだよー!?」


キョロキョロと周りを見渡せば見渡すほど、更に混乱が広がる感じがした。


ボクの驚き具合を誰から見ても納得できるものだ。


何故なら、砂漠とオアシスで建てられた町々、そして川沿いに位置した何箇所ばかりで主要な都市や王都が複数に立ち上げられたボクの出身地、【ウルゲナム王国】とは明らかに建築要素や意匠の異なる豪華なホールがここにあるからだ!


この室内は何かの神殿か王宮なのか、それとも大規模のお城なのか、天井が何気に高いのだ!


そして、この屋内のあっちこっちも見ても分かると思うが、どこにでも一杯の尖塔っぽい柱が壁沿いの殆どで並べられていて、その突端には丸っこい青色の大きな光ってる宝石みたいなのがくっついている様子だ。


それだけじゃなくて、このホールの中心部もあっちからこっちまでを一線の赤くて綺麗な模様が描かれている絨毯が敷かれていて、絨毯の左右には一定の間隔で並んでいる四角い柱がいくつもあり、ホール内の灰色と白い色が主な配色で作られた床、壁と見事に溶け込める存在感を放っている。


「ようこそ!南地からの宣教師殿よ!」


ん?


辺りを見回していた内に、どうやら前方から声が聞こえてきたようなので、視線をそこに向けると白いローブに白い神官っぽい帽子を被っている若い女性がいる。


彼女は20代前半の容姿をしていて、肌は今までボクが28歳まで生きてきた中で見たこともないような真っ白い色を帯びており、なんか神聖さと清潔感満ち溢れる艶のある皮膚に見えて、ちょっとドキッとなった。


「私はミリアムと申しますが時間はありません。詳しい話は【六王女殿下様】が全てお話になりますので、失礼ながらも転移魔法で移動させて頂きますね」


ピカアああ―――――――――――――!!

「ううおーーー?今度は何なんだー!?」


どういうことか、いきなり眩し過ぎる閃光が走ったかと思うと、床を見下ろせば巨大な模様が入っている光ってる円陣があり、これもまた見たことないものなんだ!


「こ、こここれってなん何だよぉ―!?」


「魔法ですよ?エンクルマ 殿は南の【アブジブ大陸】出身なんですから、魔法が一般的ではない大地だったのは聞いたことがありますが改めて過剰な反応されると不思議ですね。魔法がまったく浸透していない土地って本当にあるなんて.....では!」


ぴかあああああああーーーーーーーーーーーーーー!!


いっそう眩しくなった光がボク達を包んで、そして次に目を開けた時に、


「おぅ、来たのだな、エンクルマ宣教師殿(ヒーマヌ)!その黒い肌は初めて見ることになるが、確かに【エルカライ教】を信仰しているウルゲナム王国民全てに対して教えを教授する任務を背負う何百人にも及ぶ宣教師(ヒーマヌ)の一人だと確認!その灰色のローブとスカルキャップを見れば一目瞭然だね、【南地勉強】の禁書通りに」


さ、さっきの女神官に続いてまたもぼー、ボクの名前をー!?誰だ!?初めて来た場所で面識もないはずなのに、それを口にィ……


えっ。


………マジで?


ね?ねね?本当に大マジでー?


それしか感想として出てこないのは、やっぱり、目の前の黄金色の長い髪を持っている女性があまりにも美し過ぎるからだ!


ボクの近くにいる女神官よりも何千倍も綺麗なあそこの十代後半らしき女性は、またも今まで見たことないような金色の麗しい髪を誇っているに飽き足らず、容姿がとっても端麗で美形すぎる!


まるで女神のようなその美貌に見惚れている内にボクの心臓をこうもドギマギとさせられるほどだ!


ローブっぽい赤い服装を着ているあの身長の高い女性も、両手を赤い手袋や、胴体と脚を足元まで隠すようなデザインなんだけれど、何故か胸元、両肩、両腕や頭全部が丸見えになっていて、肌面積の多さにちょっと心拍数が上がった気がした(自分の国では女性みんなは公共の場で肌を隠す文化と教えがあるからだ)。


今までの28年の人生の中では煤の色したり、ダークチョコレート色したりする肌しか見たことないボクだったので、眼前にいる彼女の白い肌が晒されることについてちょっと刺激が強すぎて恥ずかしくなったボクは視線を彼女の下へ移動させてしまうと、どうやら彼女の足も肌が丸見えになっていることに気づいた!


ちょっと後ろの踵が上がったような変な尖ってる出っ張りがそこの靴裏から下に向けて突出しているようなんだけど、これも見たことない割になんか一瞬でセクシーだなって単語が自然と出てきちゃうよう未知な体験すぎて頭も混らー


「エンクルマ殿?どうされてますか?硬直したばかりで顔も真っ赤に見えますが?」


心の声が言い終わらぬ内に女神官に話しかけられた! 


いかん!ボクの挙動と表情の変化にいち早く気づいたミリアムさんなんだけど、慌てて反応することに、


「あ、あ、いや、何でもない。ところで、君もだけど、どうしてあの赤い…ローブ?を着ている女性にもボクの名前を知っているんだい?良く思えばボクの出身国もお仕事である【 エルカライ教】の宣教師(ヒーマヌ)としての活動も何でも知っているような……」


「それに関しては後ほど説明する予定だから、まずはこちらが名乗ることから始めるのが礼儀かと。では、私はジョセフィーヌ・フォン・マールデリックといって、【マールデリック王国】における18歳の第一王女にして王太子妃でもある。ちなみに、余談だがこちらが着ているのはローブではなく【ドレス】なのでな」


長い金髪の後ろ髪をかき上げながら凛と響いた力のある声が彼女の口から出てきて木霊してきた。


「ほ、ほえー……」

感嘆しか出てこなかった。


何故なら、今まさに、ボクの目の前には一国の王女が立っていて、しかも次期の王位継承権を持っている、彼の国における一番偉い女性が目の前に堂々とその存在感を強調するように直立不動にして不敵な笑みをボクに見せながら両手を腰に添えているからだ!






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

六王女の歓迎際と黒い宣教師の冒険 黒のクワメと白のシレシア @silesia156

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ