第46話 ジョーヌの『凄い』ところ。

 過去を話した後、俺たちはジョーヌを連れて近くのダンジョンに来ていた。

 その理由は――。


「エリアドイ――右翼のバランスが悪いみたいです。ローザは左から展開。――ベアウルフ、角からの攻撃を溜めています。三秒後、突進してきます」


 ”うおおおおお、ジョーヌヤバすぎないか?”

 ”有能オブ有能”

 ”これはヤバイだろ”

 ”ついに参謀がきてしまった”


 彼女の言葉通りに俺たちは敵に対処していた。

 するといとも簡単に魔物を倒すことができた。


 死の宣告すら不必要なほどに。


「ジョーヌ、凄いな。腕を上げたか?」

「そんなことありませんブラック様。誉めても何もでませんよぉ!?」


 身体をくねらせながら喜ぶジョーヌ。

 たゆんたゆんが揺れる揺れる。


 ”ジョーヌ、君は最高だ”

 ”毎日配信に映ってくれ”

 ”ちょっと上下に飛んでみないか?”


「でも本当、ブラックさんの言う通りですね」

「凄いです。私の聖剣がおもしろいように当たります」

「ジョーヌは我よりちいとばかし賢いからのう」


 ジョーヌの能力は瞬間記憶能力。


 彼女は全てのほぼすべての魔物について網羅している。

 さらには現存するダンジョン内部も全て覚えているとのことだ。


 だがそれだけじゃない。

 持って生まれの頭脳と合わせた観察力で編み出した観察眼視えていますは、対象の魔力から行動を予測できる。


 実際、施設を破壊する時の要はジョーヌだった。


 ダンジョンに来たのは、彼女の能力をみんなに説明するにはもってこいと思ったのだ。

 後は交流と配信の為でもある。

 

 2本の分かれ道。

 あみだくじでは魔物はわかっても、罠は見破れない。


 だが――。


「この右道は罠の可能性が高いと思いますわ」

「どうしてそう思うんだ?」

 

 ブラックとして訊ねるも、気を抜いたら黒斗になってしまいそうだ。


「今までの過去のダンジョンの構造で考えると、左は10% 右は90%と高いです」


 ”すげー”

 ”マジか?”

 ”そういうの関係してるのかな”

 ”気になる”


 コメントは賛否というか、やはり信じられないようだった。

 だが俺は彼女を信じている。


 ――ああ、そうか。


「よし」


 俺が歩き出すと、美琴と風華さんが焦り始める。


「え、ブラックさんどうしてそっちの道に!?」

「そうですよ。右は罠って!?」

「ジョーヌの有能さを見せたいからだ。大丈夫。彼女がいる限り、俺たちは安泰だ」


 そのまま歩き出す。

 以前かかったのは水の罠だった。


 それを思い出しながら歩いていると、カチっと音がした。

 誰かが何かを踏んだ音だ。


 それは、ローザの足元だった。


「およよよ!?」


 すると前から鉄球のようなものが落ちてくる。


 ごろごろと転がって、まるでテーマパークだ。


 ”うわああああああやべえええ”

 ”逃げてええええええええ”

 ”マジで罠じゃん”


 しかし――。


「ブラック様、これなら問題ありません。このままで」


 俺たちを安心させるかのように、ジョーヌが言い切った。


「まずいよ逃げましょう!?」

「ブラック様!?」

「美琴、風華。ジョーヌを信じろ」


 迫りくる鉄球。

 だが――直前で止まった。


 次の瞬間、後ろに穴が開く。


 これも罠だったのだ。


 後ろに逃げていたら下に落ちていただろう。


 そしてそこには針。


 鉄球は糸で繋がれているかのように元に戻っていく。


「どうしてわかったんだ、ジョーヌ」

「鉄球の体積と速度を考えると、逃げる事は容易です。つまりこれは見せかけ。この道も、イタリアダンジョンの構造とほとんど同じです」


 ”天才きました”

 ”これはダンジョンの申し子です”

 ”マジでヤバイな”


 ジョーヌの凄さはこれだ。

 自信の能力に絶対的な自信を持っている。施設を脱出する際のセキュリティも全て看破したのも彼女である。

 当然だが、警備兵の動きも。


「ハッ、行くぞお前たち。B級・・ダンジョンのクリアはもうすぐだ」


―――――――――――――――――――――――――――――


 【大事なお願いです】


「面白い」」

「この話の続きが気になる!」

「良いブラック!」


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