第2話:星を見つめる者
夜空を見上げるたびに、私は心の中でつぶやく。『星々は遠く離れた世界の窓なんだ』と。
私が住むルナリア村は、世間の喧騒から隔絶された静かな場所で、ここの夜空は格別に美しい。
今夜も、例によって、私は村の外れにある小さな丘にひとりでやってきた。遠くに広がる星空を見上げると、自分もいつかあの輝く星々のようになれるかどうか、ふと考え込んでしまう。
夜風が私の髪をそっと撫でる中、星々からの光が遥か遠くの希望を照らし出し、私の心にほのかな光を灯してくれた。
「あら……?」
いつものように夜空を眺めていた私の前に、まるで夢の中の出来事のように、一筋の流れ星が現れた。最初は遠くの宇宙からのささやかな贈り物のように思えたその光が、徐々に大きくなり、光の尾を引きながら南の森の方向へと降り落ちていくのが見えた。
立ち尽くす私の心は、興奮と好奇心でいっぱいになり、その場に留まることができなかった。私は、落ちた場所がどこなのか、自分の目で確かめたいという強い衝動に駆られ、夜の森へと足を進めた。
星が落ちたと思われる方向へと急ぐ足取りは、何故だかとても軽かった。
私は、一見するとただの小枝のような、古枝の杖を片手に取り、深く息を吸い込んだ。周囲は静寂に包まれていて、私の声だけがはっきりと響き渡る。そして、決意を込めて、詠唱を始める。
「
その瞬間、杖の先端から微弱ながらも温かい光が生まれ、暗闇を照らし始めた。
夜の森は静かで、いつもとは違う神秘的な雰囲気を放っていた。木々の間を抜ける風の音と自分の足音だけが、この静寂を破っていた。
私は、流れ星の落ちた場所へと導かれるように、一歩一歩確実にその地点に近づいていった。
森へ足を踏み入れた瞬間、キャンドラの光が周囲をほのかに照らし出す。進むにつれ、何かが私を見守っているような感覚に襲われた。突然、小さな動物が驚いて逃げる音がし、その瞬間、私の心は一瞬で緊張で張り詰めた。しかし、その恐怖もすぐに好奇心に変わり、私は流れ星を追う旅に再び集中した。森の奥深くへと進む勇気を持って、私は未知との遭遇に備えた。
「ワォォォォォォン!!!!」
森の静寂が一瞬にして破られた。大きな影が私の前に現れ、その圧倒的な存在感に息をのんだ。魔狼だ。月明かりに照らされたその狼は、銀色に輝く毛皮を持ち、深い知性を宿した目で私を見つめていた。恐怖と畏敬の念が交錯する中、私は身動き一つ取れずにいた。
「グルルルルルルル……」
しかも、魔狼は一匹だけではなかった。当たり前だ。10匹から15匹の群れで行動する動物なのだから。
魔狼の群れに囲まれた私は、恐怖で凍りついていた。
「神よ……」
本気で願った。食事の際の祈りよりも、もっと強く願った。
「グギャッ!」
そんな時、魔狼の群れから光が放たれ、突如として一人の男性が現れた。
彼の手には、不思議な輝きを放つ装置が握られていた。その装置から瞬時に放たれる光は、夜の帳を突き抜ける稲妻のように魔狼の群れへと向けられた。彼の動作は非常に迅速で、まるで戦いに慣れた戦士のように、魔狼たちに対する一連の攻撃を繰り出していた。
「……邪魔だ。どけ」
その光は、ただ明るいだけでなく、魔狼たちをその場から消し去る力を持っているようだった。魔狼たちが一頭、また一頭と、光に当たるや否や、まるで煙のように蒸発していく。彼の攻撃は、魔狼たちにとってまさに天敵のような存在であり、彼らはその光の前には完全に無力だ。
周囲の空気は彼の攻撃によって振動し、光が放たれるたびに閃光が森全体を照らし出した。魔狼たちは恐怖に駆られるかのようにうめき声を上げながら、一瞬にして跡形もなく消え去る。
「……大気組成を調べろ、ゼフ。それとあそこにいる知的生命体から言語情報をスキャンしておけ」
彼の姿は、まさに未知の世界から来た旅人のそれだった。身に纏うのは、所々に傷があり、火花を散らす不思議な質感の鎧。
そして、彼自身もいくつかの傷を負っていた。
その目は、深い宇宙のように暗く、底知れぬ知識と経験を秘めているように見えた。
長い睫毛の下にある彼の瞳は、どんな暗闇も貫く力強い光を放っていた。
腰まで長く延びた黒髪は夜空の星々のようにきらめいている。
彼は決して余裕を失うことなく、冷静に周囲を確認しているように見えた。
「……うぅ」
彼は決して余裕を失うことなく、冷静に周囲を確認しているように見える。しかし、魔狼たちを一掃した直後、突然彼の表情が変わり、その場に崩れ落ちた。どうやら、彼は未知の武器を使い魔狼を退けたことで、大きな力を消耗してしまったようだった。
「大丈夫ですか……?」
私は急いで彼のもとへ駆け寄り、彼が意識を失っていることを確認した。
「よいしょ……っと」
彼の無意識の体を抱え、私は一心不乱に村へと向かった。夜の森を抜ける道中、足元は不安定で、枝が私の進行を妨げたが、彼が私を救ってくれたことを思い出す度、新たな力が湧いてきた。
「はっ……! はっ……!」
夜の森を抜ける道は容易ではなかった。彼を抱えながら、私は何度もつまずき、枝に引っかかりながらも、一歩一歩、必死に村への道を進んだ。私の肩には彼の重さがのしかかり、呼吸は荒くなる一方だったが、彼が私を守ってくれたことを思い出す度、力が湧いてきた。
森の終わりが見えた時、私は安堵の息をつきながら、最後の力を振り絞って村へと駆け込んだ。
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