第2話 <幕間>「エリカ」の夕暮れ
面白いお客さんだったわ。
午後六時。店主は、夕暮れの中店じまいの支度をしていた。結局、今日来たお客は二人だけ。朝方に来たお散歩帰りのおばさんと、あの女の子。確か、美咲さん。あの子、多分記者だわ。時々、原稿みたいなのを読んで、ペンを入れてる。
「美味しいので、か。」
橙色に色づく店内でひとり呟く。
「みんなそんなに単純だったら、ねえ。」
店主の堀りの深い顔に暗い影が落ちる。
「さて、片付け片付け。」
店主は小さく頭を振り、カップを棚に戻し始める。
記者さんがこんなところに何回も来るものだから、少し警戒してしまったけれど…。彼女は、私のお茶とケーキを純粋に楽しむためにわざわざ休日を半分つぶしてここまで来てくれていたのだ。
来週も、来てくれるかしら。あの子。別に、来た所で何も変わらないのは分かっているのだけど。
店主は、手際よく片付けを進めていく。
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