リポーターが語る「事件」

たんぜべ なた。

日航羽田沖墜落事故

「私はいま、事件の現場に来ています。」


 テレビから流れてきた男性リポーターの声を聞いて画面を眺めた全員が息を呑んで固まる。

 その様子を見て画面を覗いた人まで固まる。


 男性リポーターの後ろには、機首の欠落した旅客機が水面に浮かんでいる。

 その周りを、消防隊の救助艇、海保の艦船が忙しなく動き、ゴムボートは救助者を探し走り回っている。


「ここは、羽田空港沖です。

 本日午前八時頃、日本航空350便が着陸に失敗、滑走路手前の海に墜落しております。」

 カンペを読み上げながらリポートを続ける男性リポーター


「こちらをご覧下さい。」

 不意に男性リポーターが旅客機の方に視線を移し、視線の先にカメラがズームアップする。


 旅客機の機首は胴体下に沈み込んでいる姿が、画面いっぱいに表示され、画面を見ていた人の一部が悲鳴を上げる。


◇ ◇ ◇


 さて、ここは学生食堂。

 昼食時にもたらされたニュースに多くの学生が戸惑っている中、一人の女学生が席を立った。

「私、報道のみちに進む!」

 同席していた友人たちは残念そうに彼女の顔を覗き込むのだった。

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