991 パイナップル

 眞子が密かに思っていた『もう一生、自身が両親を得る事はない』っと言う現実。

その心境を打破する為に崇秀は、自身の母親である静流さんを眞子の母親代わりにしようとして、2人きりにさせてみたのだが、案の定、崇秀同様にお節介な静流さんは、眞子を自分の子供の様に扱う。


そんな風に扱われた眞子はと言えば……(´;ω;`)ブワッ


***


「じゃあ、崇秀。後の事はヨロシクね。お母さんも風呂に入って来るから、私が出て来るまでには、眞子を泣き止まして置くのよ」


やっぱりだ。

崇秀はこう成る事を予測して、私と静流お母さんを2人きりにしたんだ。


って言うのも。

今までの経過を見て貰ったら解るとは思うんですが。

静流お母さんは元々の性格からして『他人の子でも、自分の子の様に扱う性格の人』なのよ。

その証拠として、小学生の頃、真琴ちゃんが悪さをして人様に迷惑を掛けた時。

何故か一緒に居ただけの崇秀も一緒に2人共ボコボコにシバかれた上に、道端で正座をさせられた、なんて事があったのよ。


まぁ、崇秀自身は、特に何か悪い事をした訳ではなかったんだけどね。

『友達が悪さをして、人様に迷惑を掛ける様な事をしてしまいそうに成ったら、止めるのが友達ってもんでしょ』って言うのが、崇秀の怒られた理由なんですよ。


こんな風に、昔から静流お母さんは、自分の子供であろうと、他人の子供であろうと容赦なく対等に扱う人なのね。


……っで、ですよ。

そんなお母さんが、今の私の現状……即ち『両親が居ない孤独な身の上っと言う設定』を知ったら、どうなるか?

必然的に同情してくれたでしょうし、今後両親が居ない私が間違った方向に行かない様に、いつも以上に自分の子の様に扱おうとする。


そう言う風に静流お母さんが考えると思ったからこそ崇秀は、私と静流お母さんの2人だけに成る時間を作ってくれたんじゃないかと想像出来る訳ですよ。


崇秀は、本当に優しい。



「あいよ。……おい、アホ眞子。いつまでも馬鹿みてぇにワンワン泣いてねぇで、ちょっとコッチに来い。最後に、もう1つだけオマエに見せて置きたい物が有るんだからよ」

「崇秀。……アンタ、自分の彼女に、その言い方ってどうよ?」

「うっせぇつぅの。密かに関わろうとせず、早く風呂に入って来いつぅの」

「崇秀……一応、言って置くけど。覗いちゃ嫌よ」

「誰が覗くかぁ糞ババァ!!眼が腐るわ!!さっさと行けつぅの!!」


あぁ!!私の大切なお母さんに向かって、なんて事を言うのよ!!

本当は極度のマザコンのクセに!!

間違っても、絶対に、そんな事を言っちゃいけません!!

今度お母さんに、そんな事を言ったら、私が許さないからね。


……っと言うのは建前で。

崇秀がこうやる事によって『オマエも、こんな風にお母さんに接して良いんだぞ』って言うのを表現してくれてるんだと思う。

そして静流お母さんも『眞子もこんな感じで良いんだよ』って言ってくれてるのだとも思う。


ホント、この親子はどこまでも優しいね。

静流さんは、私が真琴ちゃんだった時から『私を唯一怒ってくれる人』で大好きな人だったけど、今回の一件で、もっともっと好きに成っちゃったよ。


うぅん、違うね。

私のお母さんに成ってくれたんだから、大好きなのは当たり前だよね♪



「ハイハイ、ウチの馬鹿息子は我儘で困るわね」

「やかましいわ」


その一言で会話は終了。

静流お母さんは、あとは何も言わず鼻唄混じりに風呂に入りに行った。


それでですね。

部屋に残された私達2人はっと言うと……



「ハァ~~~、やっと行きやがったよ。しかしまぁ悪ぃな」

「なにが?」

「オマエも知っての通り、ウチのお袋は、あぁ言う生き物だから勘弁してくれな」

「なに言ってんのよ。あんな良いお母さん、この世の中に2人と居ないよ。贅沢言うんじゃないの」

「オイオイ、なにお袋に言い包められてんだかな。まぁ良いや。……兎に角、今日、最後の見世物を見せてやっからよ。付いて来い」

「うん?……あぁ、ねぇねぇ、まだどこか行くつもりなの?それとも家の中を散策とかする気?」

「オマエって、真性のアホなのか?自分の家の中を、探検・冒険する馬鹿が、どこに居るんだよ?またコイツ、なんかの拍子に、脳味噌を道端に落っことしやがった」

「そんなにポロポロ落ちないから!!って言うか!!一回も落としてないから!!……って言うかさぁ。なにを、そんなに隠してるのか知らないけど、もぉ此処で言っちゃえば良いじゃないの?」

「アホ。『百聞は一見に如かず』だろ。ゴチャゴチャ言ってねぇで、さっさと来いつぅの、このパイナップル」


……はて?

この期に及んで、パイナップルとはなんぞや?


なにかね、その謎のキーワードは?


・・・・・・


( ゚д゚)ハッ!!!……って、まさか!!


そう思いつつも、恐る恐る自分の髪を触ってみると。



「えっ?まさか……あぁ~~~、まただぁ~~~!!またこの髪型にされてるぅ!!いつ?いつの間にやったのよ?」


あれぇ~~~?

崇秀って、とうとう直接髪を弄らなくても、私の髪型をセット出来るなんて荒業を習得しっちゃった訳?


なんて奴だ!!

しかも、ピンポイントに狙って、いつも私だけ限定って、どういう事よ!!

こんなパイナップルな髪型じゃあ、その辺に居るギャルと印象が変わらないじゃないのさぁ!!


もぉ……ほんと最悪だよ。



「入り口で、オマエの頭を撫でた時だが、普通、気付かねぇか?」

「嘘……って事は、あの時点から、ズッと、この髪型だったの?」

「あぁ、だからオマエが玄関口で、お袋に『水道水で良いです』って言った時、思いっ切り笑われたんだよ。パイナップル頭が、水欲しがってたんじゃ。ただの果樹園じゃねぇか」

「もぉ!!最悪だぁ!!私のお母さんが持ってる印象を返せ!!こんなの最悪だぁ!!」

「まぁ、そこは、自分の鈍感さを恨むんだな」

「……フォロー無しだし」


まぁ良いけどね。

どうせこれにしたって、お母さんとの仲を取り持つ為にやってくれた事でしょうしね。

……ってな感じで、何もかもを諦めた私の態度と同時に、この話の終結を迎えた。

それで、この後は、チョコチョコと、なにやら崇秀が見せたがってるモノを見に、崇秀の後ろを着いて行くんだけど。

崇秀は、なんの変哲もない扉の前に立ち止まって『此処だ』っとだけ言って、自らの手で、その扉を小さく開き。

何故かその後は、矢鱈と私に、その真っ暗な部屋らしき物に入る様に促してきた。


そして、その表情は密かに笑ってる。


まぁどうせ、ろくでもない事なのだけは十分に解ってるんだけどさぁ。

なんで此処まで、私に部屋の中に入る事を薦めて来るんだろうね?


またしても、妙にイヤな予感だけがするねぇ。



……でも、そんな事を幾ら考えても無駄だから、もぉ、一気に開けちゃえ。


面倒臭いや。



『ガチャ』


……えっ?


ちょ!!なにこれ?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


眞子にとっては、この上ない嬉しい話ばかりが続々と出てきますね(笑)

下の店舗では、大型企画の『一番最初のお客さん』にして貰えたり。

2階に上がってからも、自分が絶対に手に入れられない筈だった『母親』を得る事が出来ました。

こうやってお膳立てされて眞子は、今まで以上に『完璧な眞子』っと言う存在に成って行く訳なのですが……これで終わらないのが崇秀(笑)


次回は果たして、なにを仕出かして来るのか?


その辺を少しでも気にして頂けたなら、また是非、遊びに来て下さいねぇ~~~♪

(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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