990 おかあさん

 静流さんに気を使って、ロクに話も出来ない眞子。

そんな状態の中、静流さんが『とっておきの話』をしてくれたのだが。

その内容と言うのが『崇秀が初めて家に連れてきた彼女が眞子であり』『凄く大切に扱っている』との話で……


***


「ぐすっ……私……崇秀君の役に立ててますか?邪魔してませんか?」

「さぁね。それは、あの子本人にしか解らない事だけど。あの子が、貴女の事を大切にしてる事だけは確かな事よ。此処だけは間違いないわね」

「あっ、あぁ……ぐすっぐすっ……私なんかをですか?崇秀君がですか?」

「そうよ。だから、眞子ちゃんが嫌じゃなければ。これからも融通の利かないウチの馬鹿息子と仲良くしてやってね」

「ぐすっ、ぐすっ……あぁ、はい。……全身全霊を掛けて仲良くさせて頂きます。大好きですから……」

「そぉ。……だったら眞子ちゃんは、正真正銘ウチの子ね。崇秀が悪さしたら、ちゃんと私に言いなさいね。こんな可愛い女の子を泣かす様な馬鹿息子なら、私が、とっちめてあげるから」


静流さん、崇秀は悪さなんてしませんよ。

偶に悪戯はしますけど。

それは、私とのコミュニケーションみたいなものですからノーカウントです。


あんなに良い奴は、この世に2人と居ません。



「あの、崇秀君は、私に悪さなんて1つもしませんよ。それ処か、いつも必要以上に気を遣ってくれて、親切にしてくれてます。だから、出逢ってから、1度たりとも悪さなんかされた事が有りませんよ」

「そぉ。それは良かった。こんな可愛い子を泣かす様じゃ、あの子の父親と一緒だからね。少し安心した」


あぁ……そっか……

崇秀のお父さんは、静流さんを放ったらかしにして研究に没頭する様な人だし、女癖も良くない。

その血を引いてるだけに、私が、自分と同じ状況に置かれてないか不安だったんだ。


……でも、こう言う事を、静流さんの思い出させちゃったのは、完全に『×』だね。

私が変に気を遣って貰う様な事をしなければ、こんな事にはならなかった。


ちゃんと謝罪しなきゃ。



「あの、オバ様……」

「眞子ちゃん。嫌じゃなければ、私の事を、オバ様じゃなくて、お母さんって呼んでくれる?オバ様なんて他人行儀な言葉はイラナイし。私は、貴女みたいな可愛らしい娘が欲しかったからね」

「えっ?……えぇっと、良いんですか?初めてお逢いしたのに、私、馴れ馴れしくないですか?」

「なに言ってるのよ。眞子ちゃんは、いずれ、本当のウチの子になるんでしょ。だったら、今から練習しといても良いんじゃないの?遠慮なんてしなくて良いのよ」


この家系は、神様の一族なんですか?


なんで、私が求めてる物が、全部わかっちゃうんですか?


……正直言うとね。

奈緒ネェの家には養子にして貰ったけどね。

私は、誰1人として、奈緒ネェ以外の家族の顔も知らない。


それにね。

奈緒ネェがアメリカに行っちゃって、日本に居なくなっちゃったから、私にとっての家族が日本に誰も居なくなって、一人ぼっちで寂しくてしょうがなかった。


勿論この間も、家には飯綱ちゃんが居てくれたから、そう言う気持ちの部分を一杯助けては貰ってたけど、彼女は、まだどこまで行っても大切な友達であって、家族の域には達していなかった。


……私は、向井眞子である以上、本来は、親を持たない天涯孤独の身。


この静流さんの言葉はね。

こんな自分勝手な私に、本当の親を与えてくれた様な気がした。



本当に『お母さん』って呼ばせて貰って良いものなんだろうか?


そう思いながらも……



「あっ、あの、じゃ、じゃあ……おっ、おっ、おか、お母さん」


心にある本音を上手く調整出来ずに、直ぐに言葉にしてしまった。



「なぁに眞子?」

「あの、あの、おっ、おか、お母さん……お母さん……お母さん、お母さん。本当に、私なんかのお母さんに成ってくれますか?こんな出来の悪い娘でも良いですか?本当に、本当に、私なんかが、崇秀君のお母さんを、お母さんって呼んでも良いんですか?」

「うんうん。その様子じゃ、ご両親が亡くなってからズッと寂しかったのね、眞子。一杯甘えて良いのよ」


あぁ……もぉダメだ。

こんな事を言われたら、今まで『親が居なくて寂しい』っと言う抑えていた欲求が、完全に歯止めが利かなくなってる。

眞子と言う存在に成った時から、完全に諦めて、我慢していた『両親が欲しい』って感情が止まってくれない。


もぉ1人は嫌だよぉ。


私は、静流さんの言葉に甘えて、厚かましくもコタツから飛び出して静流さんに抱き付いていた。



「うわ~~~ん!!お母さん!!お母さん!!お母さん!!」

「ハイハイ、泣かないの」

「だって、だって、お母さんも、崇秀君も優しすぎますよ。こんなの我慢出来無いですよ。うわ~~~~ん!!うわ~~~ん!!」


神様だ。


この家族は、本当に神様の様な家族だ。


なんで、こんなに自分勝手に振舞って生きてる私なのに。

私は……なんでこんなに幸せで居られるんだろうか?

身勝手に、今までの倉津真琴と言う自分を『破壊』した上に、誰彼構わず、私に関わった人に迷惑ばっかり掛けていると言うのに……


崇秀と言う、掛け替えの無い親友で有り、彼氏が居て。

奈緒ネェと言う、最高に優しくて、綺麗なお姉ちゃんが居て。

真琴ちゃんと言う、私の全てを受け入れてくれた兄弟が居て。

それでその上、崇秀のお母さんである静流さんまで、私を娘として迎えようとしてくれてる。


こんな最高に幸せな環境を味合わせて貰っても良いんだろうか?


私は、なにも恩返し1つ出来無いって言うのに……


なんで、こんな卑怯な私に、神様は、こんなに素晴らしい人ばっかりを与えてくれるんだろう?

なんで私なんかに、こんな素晴らしい人間関係を『創造』してくれるんだろうか?


もし、神様が本当に居るのなら、私ほど幸せな人間は居ないよぉ……



「んあ?なんだこりゃあ?お袋、なんでコイツ泣いてんだ?」

「自分の手を胸に当てたら」

「ほぉ、なるほどなぁ。そりゃあまた中々ドキドキする展開だな」


……えっ?


まさか崇秀は、静流お母さんと私がこうなる事を解っていた……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


眞子自身は『今の自分が両親を求める事は無理』だとは解っていたのですが。

静流さんは将来の事も含めて、眞子を自身の娘の様に扱ってくれてましたね♪


まぁまぁ、静流さん自体が、実子の崇秀は当然として。

昔から倉津君や、飯綱ちゃん等のゴンタクレなんかも『自分の子供の様に扱う』様な人なので、これはある意味、当然の流れだったのかもしれませんがね(笑)


因みになんですが『飯綱ちゃんが唯一頭の上がらない存在』だったりもします。


さてさて、そんな中。

眞子を自身の娘の様に扱う静流さんを見て、崇秀はなんとも思っていない様な態度を取っているのですが。


これは、ひょっとして……


ってな感じで、次回の話は書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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