987 眞子の貢献度に対するサプライズ
3B-GUILDを作った眞子の功績や、GUILDの力を使って政治家さえも手玉に取って市や国から助成金を受け取っていた崇秀。
そんな彼に呆れながらも……
***
「ホント、有り得ないし……」
「それが簡単に有り得るから、俺なの。まぁ俺の知名度が、それほど高いって証拠でも有るな」
「まぁねぇ。普通だったら、中学生の話なんかを政治家さんが聞く訳ないもんね」
「だな。……でも実際に、俺の話が通っている以上、これは嘘でもなんでもねぇ。もっと解り易い証拠が欲しいんなら、隣のビルも、このビルも、殆ど市からタダ同然に貰い受けた様な物だからな。まさに、それも動かぬ証拠なんじゃね?」
「えっ?えっ?えっ?ちょっと待って!!このビルって、崇秀の所有物なの?」
「まぁな。……っで、オマエにはその感謝の念を込めてだな。店舗準備をしている業者以外の人間では、此処にオマエを初めて入れた訳だな。……あぁ因みにだがな。ウチのお袋も、まだ此処の物件には一度たりとも足を踏み入れた事が無いからな」
「えぇ~~~っ!!ちょっと!!私、お母さんより先に入っちゃったの!!」
「まぁ、そういうこったな」
あっ、あっ、あっ、あの、あの……
えっ、えっ、えぇっと!!
その、その、その、その……
ごっ、ごっ、ごっ、ごっ、ごめんなさい!!
「あっ、あの……」
「まぁそれにだ。……此処に来た序に、オマエの髪が伸びて毛先が整ってねぇのが気に成ってたから、この店の初めてのお客さんとして、ちょっとカットでもしてやろうかなって思ってる訳だ」
「えぇ~~~っ!!」
「オイオイ『えぇ~~~っ!!』ってなんだよ?そんなに嫌か?」
そんな、そんな、身に余る光栄ですよ!!
でもでも!!そんな大切な大役を、私なんかが引き受けて良いものなの?
私なんかより、お母さんの方が良いんじゃない?
「そんなの……嫌な訳ないけど。でも、でもさぁ……」
「嫌じゃないなら万事OKだ。なら、もぉ余計な事は、なにも言わなくて良いから、さっさと、そこの椅子に座れ」
「あの、でもさぁ……」
「良いから、座れっての。この店の実績は、オマエから始まらないと意味がねぇんだよ。……今のこの瞬間って言うのはな。オマエの為だけに、この時間も空間も存在してる。だから、なにも言わなくて良い。勿論、遠慮もしなくて良い。もぉなにも言わずに、そこに座れ」
「えぇっと……あぁっと……あぁうん」
あぁダメだぁ……
この人、やる事、成す事、格好良過ぎるよぉ……
こんな私の為だけに、こんな誰もが羨む様なビッグサプライズを齎してくれるなんて……絶対、他の人には出来無い事だよ。
こんなに幸せで良いのかなぁ……
……この後。
崇秀は、私の髪をザッパリ切るんじゃなくて。
前同様に剃刀で1本1本丁寧に、それでいて綺麗に、髪を揃える様にカットしてくれた。
この幸せは、ヤバ過ぎる……
あの……それでなんですけどね。
あの、なんと言いますか、この壮大な計画には、まだ続きがありましてですね。
あの、ほら……奈緒ネェってさぁ。
今、ニューヨークを拠点にして芸能活動してるじゃないですか。
……っで今現在【Nao with GREED-LUMP】って、全米を震撼させてる程のモンスターバンドがGUILDに所属してる訳でしょ。
だから崇秀はね。
その【Nao with GREED-LUMP】の実績を利用して『ニューヨークでも、これと同じ事をしてるんだって……』
もぉ呆れた行動力としか言い様がないよ。
ホント……あの過密スケジュールの中、一体どこに、そんな時間があったんだろうね?
それにね。
このニューヨークの件も『私のお陰』だとか言うんだよ。
確かに【Nao with GREED-LUMP】のバックバンドのメンバーを集めたのは、私だけど、その後は、奈緒ネェが頑張っただけで、私……基本的には、なにもしてないんだけどなぁ。
なんか気が重くなってきたよ。
***
「はいよ、終わり」
そう言いながら、髪が服に入らない様にする為のケープを外してくれ。
近くに置いてあった、箒と塵取りで、店の床を丁寧に掃除し始めた。
「あっ、ありがとう……」
私は、そんな崇秀を見ながら、感謝の言葉を紡ぐ。
でも、本当に、これで良かったんだろうか?
こんな大企画のオープニングを、私なんかで始めて……
嬉しい反面、どうしても、そこだけが納得出来なかった。
「んあ?なんだよ、その微妙な面は?なんか気に喰わねぇのか?」
「あぁ、うぅん。そんなんじゃないよ。凄く嬉しいんだけど。……なんて言うか……」
「ははっ、なにを考えてるのか知らねぇけど。オマエが気に病む事なんぞ、なんもねぇぞ。俺が好き勝手にやっただけの事だからな」
「そうだけどさぁ。……なんかねぇ」
そう言って貰えると、非常に有り難いと言えば有り難いんだけどね。
なんかねぇ……私なんかが、そこまでして貰う価値が有るもんなのかなぁ?
「オイオイ、今更なんの遠慮だよ?ホント変な奴だな。……まぁ良いや。此処は、これで終わりだ。次、行くぞ」
「えっ?まだ、どこかに行くの?」
「別に、どこも行きゃしねぇよ。ただ単に、この店の二階に行くだけのこったからな」
「ちょっとぉ~~~。この2階に、まだなにか有るって言うの?」
「当然、ビルだから2階は有るわなぁ。……まぁ、そうは言っても、そこが最終目的地だ。故に、此処よりも、オマエに見せたい物でもある訳だな」
「えぇ~~~っ、此処よりも見せたい物って……」
なによそれ?
もぉ怖いって……これ以上に見せたい物って、一体、どんな破天荒な物があるって言うのよ?
……勘弁してよぉ。
「まぁ、これも見てのお楽しみだ。……ほれ、早く行くぞ」
床の掃除を終えた崇秀は、塵取りから、ゴミ箱に下に落ちた髪を捨てながら、そんな事を言っている。
「ちょっと待ってよ。本当に怖いって」
けど私は……今の現状ですら、まだちゃんと把握出来ていないから、崇秀の言う、次の段階に進めないで居た。
「アホかオマエは?なにが怖いだ。……心配しなくても、別に、取って喰おうって訳じゃねぇんだからよぉ。ゴチャゴチャ言ってねぇで、さっさと来いつぅの」
「あぁいや、別にさぁ『崇秀が私を取って食うのは良いんだけど』さぁ。なんかね。こんな最高の待遇を受けて、体が幸せを感じ過ぎて、自分の身になにが起こってるのかさえ、なにがなんだか良く解んないんだよね」
「そうなのか?」
「うん」
「……ハァ~~~、しかしまぁ、この程度で幸せを感じるなんざ、オマエの幸せってのは安いな。まるでワゴンに置かれてる様な特価セールだな特価セール」
「どっ、どこが特価セールよぉ!!全然安くないよ!!こんな事をして貰える女の子なんて、世の中にどれほど居ると思ってるのよ?それを『安い』って、どう言う神経よ」
「まぁ、こう言う神経だな」
あぁもぉ……毎度毎度だけど、そう言う問題じゃないから!!
「だ~か~らぁ~~」
「オイ、眞子。もぉ良いからよぉ。つぅか、いつまで、そこで座って駄々捏ねてる気だよ?電気消して、店の鍵を閉めちまうぞ」
「ちょっと!!なんで、そう言う意地の悪い事を平然としようとするのよ!!もぉ……」
「はい、アウト」
マジで消す?
「ちょ!!マジで電気消すな!!見えないって!!なんにも見えないって!!真っ暗で、なにも見えないから!!」
「口惜しかった、此処まで来い」
「子供か!!」
まったくもぉ!!
平然とした顔して、政治家達ですら手玉に取る様な大人顔負けな真似をするくせに、変な所だけは子供のままなんだから!!
もぉ!!
……っと、心で文句を垂れながらも、なんとか、さっき入って来た通用口まで辿り着く。
でもですね。
通用口で、戸を開けて待っててくれたから……まぁ良しとしましょう。
「もぉ、普通、本気で電気消す?」
「消す。オマエがトロイのが全面的に悪い。それに経費節減だ」
「あのさぁ。リアルに、そういうのヤメテくんないかな。大体ねぇ崇秀。女の脳味噌は、感傷に耽たり易い様に作られてるんだから、その辺を、ちょっとぐらいは考慮しろい」
……って。
この男だけは……
「……んあ?なにそんな所でゴチャゴチャ言ってんだ?早く上がって来いよ」
……信じられない。
人が必死に反論してるって言うのに、なに2階に上がる階段を使って、先々登って行ってるかなぁ。
ちょっとぐらい、待ってくれても良くない?
……つぅか!!その前に、人の話を聞けオマエは!!
「もぉ!!今行くから待ってよ」
「あいよ」
「もぉ、優しいんだか、冷たいんだか……」
それで結局の所、崇秀の思い通りに事を運ばされると……
私は、なんと言う単純馬鹿なんだろか?
まぁ……こうホイホイと騙されるって事は、良い所、ただの『単純馬鹿』が良い所なんだろうけどね。
悲しいなぁ。
崇秀や奈緒ネェ以外の人だと、こんな風には成らないんだけどなぁ。
あっ、後、飯綱ちゃんもか。
まぁ、そんなどうでも良い事を考えながら、ビルの横に付いている2階までしかない階段を登って行く。
そんで崇秀が、二階の通用口らしき所の扉を開く。
そこには……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
結構、此処の話は、理屈や金銭的なプレゼントよりも『プライスレスな思い出作り』って感覚で書いてたんですが。
業者以外の人間で、初めて店に入り。
そこで「初めてのお客さん」としてカットして貰えると言うのは、女性としては、ちゃんと嬉しい物なんですかね?
まぁ眞子は、元々が感受性豊かな子なので、この崇秀の行為に簡単に感動してしまっている様なのですが、多分、本気で相手の事が好きなのであれば、物を貰うより、こう言った思い出系のサプライズの方が喜ぶんじゃないかなぁって思って書いてましたぁ(笑)
さてさて、そんな中。
そんな風に眞子に感動を与えた場所よりも『崇秀が眞子に見せたい物』と言うのは、一体、何なのか?
そして、その正体となる二階には、なにがあるのか?
次回はその辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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