977 眞子が交わした奈緒さんとの約束

 調子に乗って凹む羽目になった倉津君を、優しく嗜める眞子。

そして徐々に倉津君の雰囲気も戻って来たので、眞子は、奈緒さんとのある約束を果たす為に……


***


「あぁ~~~……んん~~~……けど、そんな事、俺なんかに出来っかなぁ?」


おや?

元本人である私の言葉が信じられないと言うのですかね?


まぁでも、真琴ちゃんの現状を考えたら、そう言う反応にも成っちゃうかぁ。

あぁだったら、此処で奈緒ネェに頼まれてる事を、上手く濁しながら宣言してみますかね。



「じゃあ、それを証明する為にも、まずは軽く高校受験でもしてみる?行きたい学校があるんだったら、そこに行かせてあげるよ」

「はぁ?なっ、なんだと?俺が、今更、高校受験だと?しかも、この時期から行きたい高校に行かせてやるだと」

「うん、100%行かせてあげるよ。但し、真琴ちゃんが頑張る事が大前提ね」


余裕だよ。

……って言うか、寧ろそんなの全然余裕だよ。

私自身、今までクラスメイトの勉強を見て来たから、その辺の成績を上げるノウハウもバッチリだし、なにより崇秀から勉強の仕方をシッカリ学んでるから、短期間であっても成績を上げる方法なんて幾らでもある。


だから、高校受験程度の事なら、そんな難しい事じゃないんだよね。



「いや、あのよぉ、眞子。知ってると思うが、俺、スゲェ馬鹿だぞ」

「そりゃあ知ってるよぉ。だって私の体のベースって真琴ちゃんなんだよ。それに14年間も一緒に居たんだよ。真琴ちゃんの成績を知らない訳ないじゃない」

「いや、まぁ、そうだけどよぉ」

「それにね。私が勉強をし始めたのって、この体を得てからだよ。最初は九九も解らなかった様な人間が、1年間必至に頑張れば、今程度の学力なら付けれる。だったら、元から私以上の学力を持っている真琴ちゃんなら、こんなの余裕なんじゃないの?」

「マジでか……」


うん、嘘。



「うん、マジだよ。真琴ちゃんの体の細胞って、実は凄い優秀に出来てるんだよ」


こうやって私は、空気を吐く様に嘘を付く女なんですよ。


ごめんね。



「そうなのか?」

「うん、凄いよ。物事に対して徹底的に集中してさえやればね。この体って、ドンドン頭の中に勉強した事が入って来るし、その応用が出来る様に成れば大概の計算なら暗算で出来ちゃう。……それにね。楽器のベースに関しても、試しにチョコチョコってやってみたら、直ぐに弾ける様になったしね。後ね。真琴ちゃん同様に、人の演奏を見たら直ぐに弾けるよ。今じゃあ耳コピだって余裕で出来るんだもん」

「えぇ~~~っ、マジかよ」


うん、またしても嘘。

そんな夢物語みたいな事なんて現実世界ではありませんよ。

普通に考えても、努力ですよ努力。

今は真琴ちゃんの緊張感をほぐす為に気軽には言ってますが、これは努力の賜物なのです。

世の中、努力しないと、なにも出来無いんです。


そんなに、世の中は甘く無いですよ。


でも、今は、そう思い込んでくれないと困るから、思い込んでね。



「マジも、なにも、私が現に出来てるじゃない。それが何よりの証拠なんじゃないかな」

「あぁまぁ、確かにな」

「因みになんだけど、私、今、大学受験しても、大概の学校なら通るよ」

「ブッ!!」

「驚いた?」


これは、ホント。


ってかね。

勉強なんて真面目にすれば、そんなに難しいもんでもないんですよ。

勉強嫌いの子って言うのは、勉強と真正面から向き合う気持ちに成れてないから、勉強の効率が落ちてるだけの話だからね。

要するに、勉強が楽しいものだとさえ認識してしまえば、簡単に色々憶えれるもんなんだよね。


チョロイチョロイ。



「いやいやいやいや、それ、ホントに、ホントの、マジ話なのか?」

「うん、全部マジ話だよ。なんなら、どっか大学を試しに受験してみよっか?受けれるなら何所でも良いよ。まぁ日本じゃ高卒認定でもされない限り受験出来ないから、海外とか、成績や受験の合否を判断するだけなら赤本とかでもOKだけどね」

「そんなにか。……よぉ眞子。因みにだけどよぉ、東大とか受かるもんなのか?」

「う~~~ん。そこは、まだ問題次第かなぁ。だから100%じゃないけど、70%ぐらいの自信なら有るよ。……因みに崇秀は、何所でも100%受かるって言ってたけどね」

「ブッ!!馬鹿じゃねぇのかアイツ?また進化しやがったのか?」

「そりゃあそうでしょ。大体にして、私のこの体を作ったのすら崇秀だよ。その原理が解ってる時点で、進化してない訳ないじゃん」


ホント、怖い男ですよ。

まさに『グリード・モンスターキング』の称号がピッタリな男ですよ。



「アイツだけは、マジでシャレになんねぇなぁ」

「まぁ崇秀は、存在自体が漫画みたいな男だからね。凡人じゃ、その辺の感覚は解らないよ」

「いや、なに言ってんだ?オマエも大概だぞ」

「じゃあ、私が大概って事は、真琴ちゃんも大概って事だよね。だったら、高校受験ぐらい、どこでも受かるじゃん」


引っ掛ったね。

崇秀の話は、所詮、真琴ちゃんを騙すブラフだったんですよ。


見事にデコイに嵌りましたな。



「ぐっ!!」

「……って事なんで、明日から勉強しようね。っで、どこの高校行きたい?」

「いやいや、待て待て。俺は、まだ受験をするなんて1ッ言も言ってねぇぞ」

「やらないんだ。……って事は、私の言葉が信用出来無いって事だね。じゃあ良いよ」

「いやいや、そうじゃなくてだな。オマエを信用してないんじゃなくて、俺は自分自身に自信がねぇって言ってんの」


馬鹿だなぁもぉ……そんな程度の事なら簡単に出来るちゅうの!!


大丈夫だっちゅうの!!



「あのねぇ、真琴ちゃん。自信なんてものは、最初から有るもんじゃないの。自分が積み上げた実績と共にジックリ育てて行く物なの。……やる前から自信が有ったら、それはただの過信って言うの。解った?」

「なんで、生まれて1年の奴に、此処まで説教されにゃあならんのだ」

「自分の体の使い方を知らない馬鹿だから」

「酷ぇ」


酷くないも~~ん。

全部事実だも~~~ん。


でも、私は、自分の体の使い方が解ってからは凄く楽しいし、人生を満喫させて貰ってる。

だから、この気持ちを少しでも、真琴ちゃんにお裾分けしたいの。


勿論、罪の意識から逃れたいのも、事実だけどね。



「ごめん。……でもね、私、こうやって生きてられるのは、全部、真琴ちゃんのお陰だから、なにか恩返しがしたいのよ。これって迷惑かなぁ?迷惑だったら、もぉ金輪際、この話はしないけど」


これは本心。

本当に今の真琴ちゃんが居るからこそ、こうやって自分勝手に生きさせて貰ってる。

だから出来る限りの事はしないとイケナイと思う。


精一杯頑張るから、私の我儘に付き合って欲しい。



せめてもの、罪滅ぼしとして……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


以前、病院で奈緒さんと約束した『倉津君の勉強を見る件』が、此処で上手く噛み合いましたね。

まぁ、ちょっとした伏線だったのですが、なんとか上手く回収出来ましたです♪


なので後は、倉津君の気持ち次第と言った所でしょうか?


さてさて、そんな中。

この眞子の提案に倉津君は乗って来るのか?

そして、仮に話に乗ったとしたら、彼は何処の学校を志望するのか?


次回はその辺を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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