976 説得するのは心に余裕のある側が

 和解後、崇秀が用意した打ち上げの場所に移動するメンバー達。

だが、まだ控室には1人だけ、その場には向かわず、壁に凭れている人物の姿が……


***


「真琴ちゃん」

「眞子……」

「ふふっ、なにをそんな所で暗い顔してるのよ?そんな事してないで、一緒に、ご飯食べに行こうよ」

「えっ?オマエ、もぉ怒ってないのか?」

「怒る?うん。別に、もぉなにも怒ってないけど。なんでそんな事を聞くのよ?」


もぉ怒ってないっての。

そんなに長時間、怒りの継続は出来ませんよ。

……って言うかね。

そんな私の怒りなんかより、これから真琴ちゃんには、もっとシッカリして貰わなきゃいけないから、此処は早く立ち直って貰わないと困るの。



「だってよぉ、俺、さっき……」

「そんなの、もぉ忘れた。なんの事?なにも憶えてないんだけど」

「オマエ……本気で、それで良いのかよ?俺、アイツの事、なんも解ってなかったんだぞ」

「そんなの嘘だね。……本当は解ってたけど、場の空気に飲まれちゃっただけなんでしょ。私は、真琴ちゃんから出来た人間なんだよ。それぐらい解ってるっての」


まぁねぇ。

多分ねぇ。

基本的な部分で私達って、ただの調子乗りな気質だから、真実だけを突き詰めれば、こう言う事なんだと思うんだよね。


所詮、ベースが一緒の人間だから、この辺の感覚は、ほぼ同じだと思うしね。



「まぁなぁ。けどよぉ。あの時はよぉ。マジで崇秀に勝てたと思って嬉しかったんだよな。俺さぁ、アイツに出逢ってから、なにをやっても一回も勝った事が無かったから、つい、浮かれちまってよぉ。……マジ、気分の悪い思いをさせたな」

「解ってくれてるなら、もぉ尚更、それで良じゃない。私の方こそ、意地の悪い事を言ってゴメンね」

「あぁいや、眞子は、全然悪くねぇんだぞ。俺が、あんな事を言っちまったんだからな。彼女だったら、誰だって、怒って当然だ」

「じゃあ、真琴ちゃんが悪いって事で終了ね。その代わり、これからも崇秀と仲良くしてね。それが許す交換条件ね」

「眞子……」


いやいや、私達って、飴と鞭が大好きな生き物なんだよね。

だから、こう言う風に優しく諭されると、真琴ちゃんは簡単に喜ぶ。


この人……間違いなく天性のドMだからね。


多分、私もそうだし(笑)



「なになに?もぉ良いじゃない。また4人で一緒に遊びたいから早く仲直りしよ。仲直り仲直り♪」

「ハァ~~~、もぉまいったなぁ。……生まれて、たった1年しか経たないオマエが、あの化物の崇秀を篭絡出来たのが良く解るわ。……オマエって、やっぱスゲェわ」

「そうかなぁ?私が凄いんじゃなくて、実は真琴ちゃんがドン臭いだけなんじゃないの?」

「オマエ、嫌な事を言うなぁ」

「だってさぁ。基本に成る体のスペック同じなんだったら、私が出来る事は、真琴ちゃんにだって出来る筈でしょ。……じゃあ自ずと、真琴ちゃんがドン臭いって事に成らない?」


出来る出来る。

やれるやれる。

頑張れ頑張れ。

心配しなくても、君は必至にやれば、なんでも出来る子だよ。


頑張れ頑張れ。

……なんて、松岡修三さん節は、どうでしょうか?



「まぁな。……けどよぉ、俺とオマエじゃ心構えが違い過ぎる。それに置かれてる環境も違う。中々割り切れねぇもんだぞ」

「そっかなぁ?私は、真琴ちゃんにならやれると思うよ」

「なんの根拠が有って、そんな事を言ってるんだ?体のスペックの話か?」

「うぅん、違うよ。そんな些細な話じゃないよ」

「じゃあ、なんだよ?その他に、なんの根拠が有るって言うんだよ?」

「うん?あぁ、それはね。真琴ちゃんには、人を惹き付ける魅力があるって部分。それが私の言う確証」

「へっ?」

「これは崇秀にはなくて、真琴ちゃんにだけある力なんだけどね。って言うか、これだけで人が真琴ちゃんの周りには集まって来てくれてるんだから、単純に考えても、その集まってくれた人達から色々学べば、もっと色々出来る様に成るじゃないの?」


……って、崇秀本人も、それを仄めかす様な事を言ってました。


だから間違いないと思うよ。

そして『人から学ぶ』っと言う事さえ忘れなければ、人はどんどん成長するものだと思うよ



「はぁ?ちょっと待て。人から学ぶ理屈は、なんとなく解るんだが。……崇秀より、俺の方が人を惹き付ける力があるってのは、ちょっと眉唾もんじゃねぇか?」

「うぅん、全然有るよぉ。だって、今日の事も然りじゃない。ライブの後、みんな、崇秀じゃなくて、真琴ちゃんを褒めてたでしょ」

「あぁ」

「そう言うのがさぁ。利潤を越えた人間関係を構築出来てる証拠なんじゃないかな?『ヤクザの組長の息子』ってイラナイ様な肩書きを込みにしてでも、真琴ちゃんと付き合いを持ちたいと思ってくれてるからこそ、あぁ言う有難い言葉がみんなから出たんだと思うよ」

「そっ、そうなのか?」

「うん!!……だからね。それを真正面から受け止めて、みんなの期待に応えられる様に頑張った方が、真琴ちゃんにとっても、みんなにとっても良い事だと思うんだよね。努力して損な事なんてないと思うよ。……どんな形であれ、結果は、自ずと付いて来る筈だしね」


当初の私には、それが出来なかった。

いや、それ処か、そんな当たり前の事にすら、なにも気付く事すら出来なかった。


……でも確かに、当初の私には、なにも出来なかったのは事実だけど。

それに対する答えを、模索し続ける事だけは辞めてはいなかった筈。


特に『クローン』の話が出た時からは、この真琴ちゃんの為に、なにか出来る事が無いかと思って、そこを更に深く模索していた。


その結果が、これ。


少しでも、それを理解出来た私が、真琴ちゃんのメンタルの部分で支えてあげて、もっと高い向上心を真琴ちゃんに持たせてあげれば良いだけの事。

そうしたら、最低でも、私と同じレベルの人間ぐらいには成れる筈だからね。


少々上から目線には成っちゃってるんだけど、実質、私の方が、今の所は上なんだから、これは仕方が無い事だと思う。


……ってか、出来る限りフォローするから、その辺の感覚はオマケしといてね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


なにか身内同士で諍いがあった場合、心に余裕のある人間が、相手のフォローをしてあげれば万事上手く行く事が多い。

此処で諍いを起こした相手をあざ笑うかの如く、立ち去ってる様では『人として終わってます』からね。


まぁまぁ、眞子自身が、今の倉津君に負い目がある部分が大きいので、こうやってうまくフォロー出来ましたが、皆さんは、こう言う場合、上手く立ち回れているでしょうか?


さてさて、そんな中。

眞子の言葉で、倉津君の気持ちも大分落ち着いたみたいなのですが。

この後、ちょっとした伏線回収がありますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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