970 悪口
ライブは大盛り上がりを見せて終わったものの。
何故か眞子は浮かない顔をして、みんなとは離れた場所に位置どっていた。
その理由は……みんなが、崇秀の信念を理解していない様な雰囲気を醸し出してる事を懸念しての事なのだが。
***
……そうこうしてる内に、そんな私が一番懸念していた不穏な空気が流れ始める。
そぉ……『話題が、何故か崇秀の話』になって行っている。
この時点で、本当に嫌な予感はしていた。
どうせ、みんな、崇秀の事をなにも解ってないから、彼の事にはあまり触れて欲しくなかった……
恐らくこの後、誰も彼もが口を開けば、必ずしも崇秀の悪口に成るのは必須。
だから、崇秀の事が解らないなら、なにも喋らなくて良い。
もし少しでも喋るんなら、崇秀と言う人間の本質を理解してから話してくれる事を望む……
故に、その場から離れた場所の居た私は、そこに近づく事はせずに、その会話だけを聞く事にした。
「……あぁ、それにしても、仲居間さんの音は、なんともエゲツないね。あの人には、人の心ってもんが無いのかねぇ?なんで、あんな真似を平然と出来るんだろう。頭のネジが吹き飛び過ぎてるにも程が有るよ」
矢張りだ。
予想に反する事無く。
聞きたくもなかった馬鹿な言葉が、ミラーさんの口から吐き出された。
どうして、そう言う言葉が平然と出るのか理解出来無い。
ひょっとして、この人は馬鹿なんだろうか?
全米GUILDの№1ドラマーと誉れ高い人間なのに、なんとも悲しい人だ。
ヤッパリ、この人は……なにも解ってないんだ。
楽器の腕と、人間性は関係ない事が証明された事になったんだね。
非常に……残念だ。
「それは簡単な話ですよ。仲居間さんは、なにもかもが自分の思い通りにならないと気に喰わない人だからでしょうね。そう言う根底にある性分が、完全に音に現れてるのではないでしょうか」
この人も……残念な人なんだ。
なんで、そんな上辺だけを捉えて解った様な事を言うの?
ステラさんは、崇秀と一緒にアメリカに渡って、一体彼のなにを見て来たの?
そんな事を平気で言えるって事は、きっと崇秀にくっ付いて、自分の演奏の腕だけを向上させたかっただけなんだね。
この人には……ガッカリだ。
なんて理解力が乏しくも、情けない人なんだ。
もう少し頭が良い人かと思ってたけど、この人も相当な残念な人なんだね。
……可哀想な人。
「まぁ、俺が出逢った頃から、間違いなくアイツは郡を抜いていたな。それに、事そう言う事に関しては、まさに化物級の天才だったからな。アイツにとっちゃあ、他人は、自分の操り人形程度にしか認識出来ないんだろうな」
「ですよね。こう言っちゃあなんだが、仲居間さんって、ちょっとイッちゃってますよね」
「まぁ実際は努力の賜物なんだろうが、一緒に演奏したいとは2度と思わないな。俺としては2度とゴメンだな」
この人達もか……
崇秀は……そんな『性質の悪い化物呼ばわり』される覚えなんかない筈なのに。
みんなの為だけに、いつも一生懸命やってるのが、なんでそれが解らないのかなぁ?
佐藤さんもカジ&グチ君なんか……最低だ。
私は、この場に居るのが嫌になり、なにも言わず立ち去ろうとした。
どうやら此処には、崇秀を理解してくれる人間は居ない様だし。
「あぁ、でも、僕はヒデ君の音好きですよ。厳しいけど、なにか伝わって来るものがありますから。凄く良いと思います」
あっ……
私は、素直ちゃんのこの有り難い言葉に、楽屋として使ってる部屋から出て行こうとした足を止めた。
素直ちゃんは……少なからず崇秀の事を解ってくれていた。
「でも、素直チン。正直言ってさぁ。一緒にやってて疲れるのはねぇ。……アソコまで、なにもかもを強制されたら、ライブをやってても全然楽しくないし。そんなの音獄だよ」
「そうだね。まさにその音獄って言葉がピッタリ。だから私個人としては、仲居間さんの音なんかより、倉津君の音の方が好きだなぁ。なんか、同じ強制されるにしても『みんなで疲れたぁ』って感じじゃない。そう言う得も言えぬ達成感って大切だからね」
「「「「「そうだね。私も倉津君の音の方が好きだなぁ」」」」」
所詮はダメか……
折角、素直ちゃんが正当な意見を言ってくれてるのにも拘らず、この体たらく。
コイツ等は、お金を貰っているプロなのにも拘らず、そんな素人ミュージシャンが喜んで言いそうな甘っちょろい事を考えていたみたいだ。
なにが達成感なんだろか?
そんな甘い考えで、一体、どんな達成感が得られると言うのだろうか?
音楽をやる者が自己簡潔的な達成感なんて持っちゃイケナイ。
簡単に自己満足なんて得ちゃイケナイ事すらわかっていない。
本来プロなら、そんな訳の解らない様な達成感なんかより、もっともっと来てくれた観客の皆さんの事を、常に考える位の心構えで居なきゃイケナイんじゃないの?
―――本質の見えない馬鹿女共。
頭のレベルが低すぎる。
どうやったら、そんな馬鹿げた発想になるのか、頭の中を開いてみたいものだ。
それに、心構え以前に、この馬鹿な子達は根本からして間違ってる。
音の良し悪しだけで判断するなら、比べるまでもなく、そんなの雲泥の差なのに……
それにアンタ等……誰が3B-GUILDに楽曲を提供してくれてるのか解ってるの?
崇秀だよ。
その言葉が……自分達を批判してる事すら気付かないんだね。
本当に……哀れで可哀想な人達だ。
ぬるま湯にドップリ浸かって、さっさと芸能界から消えてしまえば良いんだ。
「言えてる、言えてる。強制されて歌を唄うのなんて、ちっとも楽しくないもんね。そうじゃない、素直チン?」
「あぁ……それはそうですけど。それとこれとは別の話で……」
「じゃあさぁ、素直チンは、仲居間さんの音と、倉津君の音、どっちが好き?」
伊藤舞華……そこまでしてオマエは、崇秀を貶めたいのか?
アナタは、本格的に可哀想で馬鹿な人なんですね。
素直ちゃんが、真琴ちゃんの事を好きなの知ってて、そんな事をワザと言ってんだよね。
なんて狡賢い女。
自分の意見を通す為に、そこまでするなんて……私にとっては忌むべき存在。
「まぁまぁ、舞歌。そこを素直に聞くのは無しでしょ。あまりにも野暮が過ぎるわよ」
うん……そうだよね、奈緒ネェ。
こんな質問を聞く事自体、どうかしてるし、本来は聞くまでもない話だよね。
こう言う話をする事自体が間違ってるよね。
「でも、向井さん、此処はハッキリした方が良くないですか?」
「あのねぇ、由佳。そう言う事は、誰かに言うもんじゃないの。心の中で判断する事。……それに、仲居間さんは、あれでいて良い人なんだからさ」
「……って、言われましてもねぇ。流石に、あんな無茶をされた後じゃ、説得力が……ねぇ」
「そうでありんす。仲居間さんより、真琴様の方が良いに決まってるでありんすよ」
「俺も賛成。ヤッパ、クラッさんだよな」
もぉ……良いから。
崇秀が悪口の対象に成り易い事は解ってるから、ある程度までなら我慢はするけど。
いい加減にしないと……私も黙ってないよ。
奈緒ネェが此処までちゃんと説明してくれてるって言うのに、まだあなた達は解らないの?
頭、どうかしちゃってるんじゃないの?
「いや、賛成って言われてもよぉ。俺は、なんも憶えてねぇから、なんとも言えねぇんだよなぁ」
そうだよ。
真琴ちゃん、自分で言った通り、本当はなにも出来てないんだよ。
なにも考えずに、真っ白になってベース弾いてただけじゃん。
そんなのは、なにかを成し得たしたとは言わない。
それに、確かそれ……崇秀に『ダメだ』って、去年の夏の海岸ライブでハッキリそう言われた事がなかったっけ?(序章49話参照)
それで『現・無名をクビ(解雇)』に成った事すら忘れちゃってるんじゃない?
まぁ書く言う私も、全米ツアーで何回か意識飛ばしをやっちゃったけど。
それに関しては反省もしたし、その後、私は、なんとか自分で治して克服したよ。
真っ白になってライブをする事が、観客の皆さんに対して、如何に失礼な事かって事に気付いたし、メンバーの皆さんに、結局は、多大な迷惑を掛けてるだけだって解ったからね。
もぉ少し頭を使ってライブをした方が良いよ。
意識を飛ばして演奏するなんて、ホント、中二病患者みたいで馬鹿っぽいだけだよ……それ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
あちゃ~~~悪い予感と言うのは得てして当たるもので、やっぱりこう成っちゃいましたね。
まぁ実際、あんな真似をされたら、悪口の1つも出てしまうのは仕方がない事なのですが、奈緒さんや素直ちゃんが、その辺りのフォローを入れてくれてるのに、この有様じゃあ、眞子が怒るのも無理はないかもですね。
なにせ眞子は、崇秀の彼女。
此処まで自分の彼氏を貶されて黙っている彼女なんて存在しないでしょうし、それになにより、眞子自身が一番崇秀にお世話に成っている事を自覚しており。
そうやって自身の成長を促し続けてくれた事を自覚しているからこそ、こう言った意見が出て来るってもんですからね。
さてさて、そんな中、倉津君が、眞子の逆鱗に触れる様な言葉を発してしまい。
今までは言葉を出さずに我慢していた眞子が、一気に不機嫌に成ってしまった訳なのですが、こんな感じで倉津君は大丈夫なのでしょうか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます