第12話 パパは都市に入りたい
高台から見下ろした先にあるのは城壁に囲まれた都市。
やっと遂に辿り着いた。ここがアルヘイン。
ゴロ村や道中で見かけた村とは比較にならない程の大きさだが、日本の都市には流石に劣るか。残念ながら高層ビルも建っていない。
都市の中心には城のようなものがあるので、よりファンタジー味が溢れる場所だな。
ここからは、マウンテンバイクを使わずに徒歩で向かうとしよう。ゴロ村での失敗で俺は学んだんだ。森羅マーケットで手に入るものはこの世界の人にあまり見せるべきでは無いとな。
ひとまず森羅マーケットで手に入れた双眼鏡で都市の入り口を探す。とはいえ城壁の一箇所に行列が出来ているので、あそこが都市への入り口だということは一目でわかった。
なるほど。どうやら城門で身分証か何かの確認を行なっているようだな。
ふむふむ。
まずいか。
「なぁなぁナルビィさんや」
『御用ですか?』
「あの都市に入るのに、身分証とかいるの?」
「1,000BPで情報をご購入しますか?」
「……」
相変わらずですねナルビィさん。もう一種のカツアゲだ。親切心とかは欠片も持ち合わせていないらしい。
『何か?』
「いえ……払いますよ……」
『ご購入の意思を確認しましたので、BPを自動で引き落としました。都市への入場には国で発行されている身分証、又は職業ごとに発行される職業証の提示が必要になります。どちらもお持ちでない場合は都市ごとの対応となります』
身分証があるのか……ゴロ村の人達も持っていたりするのかな? それに職業証というのは聞き慣れない言葉だな。
「職業証というのは?」
「1,000BPで情報をご購入しますか?」
「…………」
もういいよそのくだり!! 会話が進まない!!
「ナルビィさん、情報は確認無しで自動引き落としとかにできる?」
『可能ですが、通知不要BPの上限を設定していただくことになります』
ん〜と、一定の金額……じゃなくてBPまでは通知を切ることが出来るということか。今は一旦5,000BPまでは自動でもいいかな。残BPは定期的に確認しよう。
「それじゃ5,000BPまでは通知不要に設定して、残BPが50,000を切りそうな場合だけ額に関係なく通知してくれる?」
『畏まりました。そのように設定致します』
よし、これでナルビィさんともある程度スムーズに会話出来るようになるぞ。
「それじゃ改めて、職業証というのは?」
『職業ごとに発行される簡易版の身分証となります。商人であれば商証、鍛治師であれば鍛治証、冒険者であればギルドカードなど、職業によって様式は異なり、独自の証明書が発行されています』
ん〜名刺みたいな物か? でもあれは一応誰でも適当に作れちゃうしな。資格とかの方が近いかな?
どちらにせよ、国が発行している身分証は手に入れることが出来なさそうなので、この職業証をどうにかして入手しなければな。
「職業証はどこで手に入るの?」
『主要都市にある各職業の組合に登録することで発行可能です。特定の組合に関しましては登録に際に一定の実績を求められます』
ということは、職業証を発行するには都市に入る必要があるのでどちらにせよ身分証は必要ってことか。そりゃそうだよね……
そうなると身分証がない場合の対応でどうにか都市に入ることにするか? でも俺はこの世界に現れたから本当のことを話しても疑われるだろうし、何よりジュノンのことは隠しておきたい。この都市に魔族がいないとも限らないしな。
さてさて……どうするか。
『都市への入場方法について、非正規ルートも御座いますがお聞きになりますか?』
えっ、そんなのあるんだ! 不法入国的な感じなのかな? というかそんな提案してくれるなんて……優しいナルビィたん!!
「お願いします」
『様々な方法が御座いますが、取り急ぎ実施可能な手段としては、商人の積荷に紛れ込む、又はお願いをする。森羅マーケットで偽造された身分証をご購入して頂く。盗賊などの裏の住人に依頼する。などが御座います』
おおおお! 犯罪臭がすごいな!
積荷に紛れ込むのは、ちょっとリスクが高いかな? ジュノンはまだ赤ん坊だからいつ泣き出してもおかしくはないし。それに盗賊とか危ない人達に厄介なるのも気が引ける。もし何ああったときに自衛出来るほどの能力を備えてないしな……
やはり……信頼できるのは森羅マーケットのみか!!
「偽造の身分証! いくらですか!!」
『一枚500,000BPとなります』
「……えっと、いくらですか?」
『500,000BPです。この値段は偽造された身分証を裏ルートで入手する際にかかる金貨をBPに換算した場合の値となります』
馬鹿野郎!! 全財産はたいても足りねぇよ!!
本気では枯葉を集めれば……あるいは? いや、一日頑張っても10,000BPが限度だ。ジュノンの世話をすると考えるとそこまで時間を使えない。単純一枚五十日……無理だ。
今並んでいる人にお願いしてみるしかないか。犯罪に加担することになるから難しいとは思うけど……
優しそうな人……いるといいな……
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