第11話 パパは異世界でマウンテンバイク
長袖で過ごすには少し暑く、半袖では人によっては寒く感じる穏やかな気候の今日。
俺は異世界でマウンテンバイクを漕いでいる。
「ジュノーン! 風が気持ちいいな!!」
「あぅあー?」
まだ生え変わる前のほわほわな髪を
この風はやはり……男のロマンか。
今日も穏やかな一日だ。
ジュノンと共に旅を始めて既に五日が経過し、六日目になる。
こんな小さい子を連れて旅をするなんてどうにかしていると思うが、森羅マーケットを有効活用することでなんとか乗り切ることが出来ていた。
まず、大荷物を持たなくていいのが大きい。育児に必要な物はその都度購入出来るし、余ったり要らなくなったら万象ゾーンでBPに還元する。流石に等価で返ってくるわけではないが、三割から四割程度のBPが返ってくるので有難い。
もちろんそれだけではいずれBPが底を尽きてしまうので、道中で時間を作ってBP稼ぎをする必要はある。とは言ってもジュノンの体調優先で旅を続けていれば、あやしながら雑草を抜いたりすることは出来た。
移動はこのマウンテンバイク。元々馬車が通るように舗装されている道だが、日本の道路のようにコンクリートで出来ているわけでは無い。そこで、サスペンションが付いているマウンテンバイクであれぼ振動も軽減させるためジュノンにも負担が掛からなくていい。
夜になれば基本はキャンプだ。道中に村などはあるが、どこに魔族が潜んでいるからはわからないため念のため避けている。本当は宿をとって休むのが一番いいだろうが命には代えられないしな。
おっと、そろそろミルクの時間か。
「ジュノン、あの木陰で少し休もうか」
「ぶっ」
休めるのに適度なスペースがある木陰で止まり、マウンテンバイクを木に立てかける。
「森羅マーケット」
このワードにも慣れたものだな。今では人目があっても普通に言えるほど自然になってしまった。
ここ数日、森羅マーケットを使ってみたが、森羅マーケットには便利な機能があることを知った。まずは、このウィッシュリスト機能だ。
ウィッシュリスト機能は普段からよく購入するものをリスト化し、保存しておくことが出来る。馴染み深いのはカート機能だが、カート機能は欲しいものをストックしていって一括購入できるのに対し、ウィッシュリストは部類ごとに購入するセットを自分で組めるといった使い方が出来る。
いつどんなときでもジュノンの授乳セット、ジュノンの沐浴セット、ジュノンの着替えセット、ジュノンのおむつ替えセット、野営セット、簡易飯セットなど普段使いする物を一括で、一瞬で購入できる。超便利。
他に見つけた良さそうな機能としては、購入した物を任意の場所に出現させることが出来る機能だ。
任意とはいえどこでもいいわけではなく、あくまで効果範囲内ではあるが、もしかしたら有効活用できるかもしれない。自衛のために何かを出現させるとか、高いところから重たいダンベルを落とすとかね。
という感じで最近は移動してジュノンのお世話をして、休憩して移動してジュノンのお世話をして、休憩してBPを稼いでジュノンお世話をして……とある意味順調な日々を送っていた。
そんな日常だからか、色々なことを考えることも出来た。
ここ最近一番考えていることは、ジュノンの出生についてだ。
ジュノンは魔王の娘。つまり魔族だ。
この世界において魔族という存在が人間とどう違うのかはわからない。もちろんどんな立場でも俺の接し方が変わることはないがな。だが、世間の考えも俺と同じということはないだろう。魔族が平和派、統一派といった派閥が存在する以上、人間側にも魔族を排除しようとする思想があってもおかしくない。
ジュノンの親が既に死んでしまっているという件に関しては、あの魔族と対峙した時は冷静ではなかったので関係ないだろと思ったが、俺が一番理解してあげるべきだとも考えた。
娘の成長を見守ることが出来なかった魔王。
俺は奏音の成長を十七年見守ることが出来だが、それでも正直短かったと感じている。
きっと魔王もジュノンの成長を見守っていきたかったに違いない。
ジュノンをが捨てられていたことに対して仕方がないと言い切りたくはないが、今となっては託されたのかもしれないと考えるようになった。
任せろ名も知らない魔王。今度はちゃんとジュノンを守る抜くから。
「ぷはっ! ぶぅ……」
「あれ、もうないないする?」
「ばぁ!」
「はい。バイバイね」
まだ言葉は理解してないだろうが、こうやって話しかけると返答されている気がする。もしかして……天才か?
最近はミルクにも慣れてきたのか、一回で150ml以上飲むようになってきたし、そろそろ首が座ってもおかしくないほどキョロキョロしている。
この時期の子供は目に見えて日々の成長を感じれるからな。
さて、ジュノンの授乳も終わったことだし、目的地までの道のりでも確認しておくか。
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