第311話
俺の拳と、タウラスの拳が。
一瞬の空白の後。
エリアの中央で激突する。
速度は――ほぼ、互角。
正面からの打ち合いはあまりしたくないが、俺はできるだけタウラスを圧倒しなくてはならない。
理由は――
「ハッ!」
タウラスが、笑みを浮かべながら魔法を展開しつつ距離を取る。
こちらの思惑を察しているからだろう。
魔法はやたらめったらに散らすよう打ってくる。
魔法で反撃したいところだが――今は1MPでも惜しい。
いまのラッシュですら結構MP持ってかれたんだぞ?
結果、釘付けになる。
タウラスはこのまま、距離を取っていればいい。
とはいえ、さすがにそれはさせないけれども。
「らあ!」
地面に脚を叩きつけ、大地を割る。
壁のように地面が隆起し、俺はそれを蹴ってタウラスに突っ込んだ。
タウラスは回避するも、その場で身体を制御して追撃。
今の俺は、雷神を使って身体を制御している状態に近い。
魔法という形で出力していない分、よりダイレクトに身体を動かせている。
――だからか、正面からのラッシュにも、そこまで恐怖を抱くことはなかった。
今の俺は、自分自身を俯瞰してコントローラーで操っているような感じで動いている。
結果、正面にタウラスがいてもそこまで臆さず動けていた。
加えて、イメージによる身体制御は普通に身体を動かすよりも身体の動きがスムーズだ。
創作におけるVRMMOモノはこんな感じなんだろうか。
とはいえ、状況を俯瞰すると解る。
俺はかなり理想的な動きができている。
何よりでかいのが、人型を相手にしても攻撃を受けれているという点だ。
アレだけ苦戦した人型魔物へのタンクが、ここまでスムーズにできるようになるとは。
おそらく雷神状態でも出来ただろうが、最近はタンクなんてする必要なかったからな。
新しい発見だ。
そのうえで、俺とタウラスの戦闘は若干俺が不利だ。
原因は――
「消エロ!」
タウラスが魔法を放つ。
それは俺の横をすり抜けていった。
――間に合わない!
「導きの手!」
MPの消費を無視して導きの手を使う。
すると、タウラスが魔法を放った先にいたヒーシャとナフが目の前に現れる。
「フン」
タウラスは距離を取った。
追撃はない。
「ツムラさん」
「ごめんね」
「いや、大丈夫だ」
まだ戦える。
だが――これは常に俺が抱えるウィークポイントである。
二人はこの戦いについてこれていない。
早すぎるのだ。
だから、守る必要がある。
結果、先程のように導きの手を使ってMPを消費してしまったりする。
タウラスは、そんな俺を嘲笑っていた。
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