第310話
俺達に残った最後の切り札。
前にも話をした、俺のレアスキル「導きの手」を使った必殺技だ。
その時は、未だ未完成どころか、そもそもどういう形で導きの手を使うのがいいか迷っている段階だった。
何せ、導きの手はあまりにも万能でやれることが多い。
今回のこれは、対魔神の切り札という方向性にまとめることでなんとか形にしたものだ。
正直、必殺技とはいうものの、今後も導きの手の使い方はどんどん増えていくだろう。
とはいえ、今は眼の前のこと。
魔神との対決だ。
「ハハハ! ――イイナ、臆シテイナイ」
魔力を開放したタウラス。
喋り方が流暢になっているのは、魔力を開放して無理やり成長したからだろう。
完全になっていないのは、成長もまた完全ではないことの証明だ。
「手ガアル、ノダロウ? イイゾ、許ス」
「もとより許可されなくても、そっちが攻撃してくるまえに使える代物だけどな、これは」
相変わらず、常に上から目線の魔神様だ。
そりゃあ人間と魔物の上位存在なのだから当然だが。
そして、だからこそその天敵である愛子は、人でありながらこの世界の理外の外にあり。
俺は、お前を倒してレベルを上げるのだ。
「魔導解放」
すると、俺の身体に。
魔神と同じ変化がおきた。
今の魔神は、体中がひび割れているかのように線が走っている。
それは赤色の線で、如何にも暴走しているといった雰囲気。
対するこちらは、規則的な青色の線だ。
自分の中で魔力を制御しているというイメージを形にすると、こうなった。
「ホウ」
タウラスが目を細める。
そりゃそうだろう、やってることは魔神のそれと同じだ。
というより、魔神の魔力解放を聞いた時に、導きの手の使い方を思いついた。
魔力は俺達人間が、魔物や魔神と戦うためのリソース。
本来はステータスという枷の中で運用されるそれを、導きの手で直接掬い上げる。
結果、純度の高い魔力を直接使える代わりに、行動するたびに魔力が消費される。
マンガやアニメで言う、時間制限つきのパワーアップだ。
とはいえ――
「劣化品ダナ。魔神ノソレト、比ベルベク、ナイ」
「そうだな。人間の魔力は魔神のソレと比べて圧倒的に少ない。だが、解放できる出力は変わらない」
効果時間は、本当に短いだろう。
さすがにナフの極昇華よりはマシだが、アレとはリキャスト時間が天と地の差だ。
それでも、
「それでも、お前とは戦える。勝利の可能性を、ゼロからイチにすることは――できる」
だから、これが最終局面だ。
俺がタウラスを倒すか、否か。
決着をつけることにしよう。
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