第308話
タウラスがナフへ迫る。
俺は間に合わない。
絶体絶命としか思えない状況。
――それは、
「っづ、ああああっ!」
それまで、翻弄されながらも動きを見せなかったナフが、斧を迫るタウラスに合わせる。
しかし、それだけでは足りない。
今のタウラスは、これまでと比べても圧倒的に速く――鋭い。
斧で攻撃を受け止めた体制で、ナフは壁に叩きつけられた。
「ナッちゃん!」
ヒーシャの叫び。
壁は破壊され、粉塵がナフを包む。
「―ーコレデ、ヒトリ」
タウラスの言葉。
HPを0にした確信があるのだろう。
そうなれば、人は死ぬ。
あまりに、単純な結末だ。
だからこそ。
――それは、ようやく訪れた反撃の機会だった。
「――
粉塵の中から、ナフが飛び出す。
ナフは、死んでいない。
なぜ――?
答えは、とても単純だ。
「――クイシバリ、カ!」
タウラスも察したらしい。
ナフには、食いしばり効果の装備がある。
それを用いてギリギリのところで耐えたナフが、反撃に打って出た。
「シニゾコナイ……ガ!」
対して、タウラスもカウンターを試みる。
HPは所詮1、撫でれば死ぬ程度のものしかない。
だが。
「――癒やしよ!」
「癒やして!」
俺達が、ナフを回復する。
ヒーシャにも、治癒魔法は初級だがある。
俺が代理行使すれば、上級相当の回復が可能な治癒魔法が!
結果、急速にナフはHPを回復し、バステも消える。
「うおおおおっ!」
ナフの一撃は――タウラスのカウンターを弾き飛ばした。
「!!」
タウラスは、そこでようやく目を見開く。
それはそうだろう。
ナフのどこに、ここまでのパワーがあるというのか。
答えは、言うまでもなく最初に使った極昇華。
あらゆるバフが、二倍の効果を得る。
そして、今ナフが受けているバフは、自分で自分に使ったものだけだ。
「ヒーシャ!」
「うん!」
二人が、息を合わせる。
おそらく、二人にとって最高のバフだ。
もちろんヒーシャの使えるすべての数値上のバフも、ナフに乗せていく。
極昇華は五秒しか使えないが、その五秒間の間なら後乗せのバフもきちんと二倍にするのが戦闘における最大の強み。
そして、言うまでもなくバフの総量はナフ個人だけのものよりヒーシャと合わせたほうが圧倒的に多い。
「これで――――!」
再び振りかぶる斧。
五秒という、あまりにも短いナフの最強。
しかし、この瞬間。
間違いなくナフの五秒間はタウラスを越えていた。
「終わりだ!
一撃が、タウラスに突き刺さる。
その余波は、距離の離れた俺達にすら伝わった。
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