第307話
ヒーシャに回避は難しい。
ナフも難しいが、ナフなら一撃で倒されるほどじゃない。
そして俺は――ギリギリでヤツの速度に対応できる。
クロが、妖精の宿木に入っているからだ。
「ツイテクルカ……!」
高速で飛び回るタウラスを回避し、こちらから攻撃を仕掛け。
激しく入れ代わり立ち代わり、攻守が交代する中で、なんとか俺はタウラスの攻撃を生き延びていた。
AGIにバフをしたうえで、ギリギリまで他ステータスを削ってAGIを上げる。
結果、今のAGIは500近くあった。
それでもなお、若干向こうのほうが早いんだからふざけた話だ。
「ダガ……ソチラハ……イツマデ、モツカナ……!」
とはいえ。
問題はナフの方だ。
耐えることはできるが、翻弄されている。
殆ど反撃ができないまま一方的になぶられているのだ。
俺が横槍を入れて、なんとか致命傷は防げているものの。
HPは凄まじい勢いで減っていた。
「だったら……癒やしよ!」
故に、俺が治癒魔法をナフにかける。
これまで、殆ど使ってこなかったが使えないわけじゃない。
そして忘れがちだが、俺の治癒魔法は中級でも上級以上の効果をもたらせる。
「ハハ! ナラバ!」
こちらが回復できると理解った途端、タウラスは次の動きを見せる。
周囲に、闇魔法が浮かんだ。
使えることは理解っていたが、今まで敢えて使ってこなかったそれをここで使う。
少しでも意表をつこうってことだな。
ともあれ。
『ヒーシャ、借りるぞ』
『いつでもどーぞですっ!』
こちらも、対抗するようにヒーシャの光魔法を導きの手で代理行使する。
俺の火魔法でもいいのだが、闇に対する光ということもあってか、闇魔法とぶつけた時の効果は光魔法の方が高かった。
戦場は、更に混沌を極めた。
魔法と俺とタウラスが飛び交い、ナフがその中でまともに反撃できずに削られていく。
増えた手数と、闇魔法によるデバフはナフに対する回復が間に合わなくなっていく。
俺なら治癒魔法でデバフを消すこともできるだろうが、それも焼け石に水だろう。
『ツムラさん、このままだとナッちゃんが!』
『理解ってる! けど、今のところ千日手だ。こっちに火力が足りなさ過ぎる』
俺はタウラスと速度で渡り合えている。
だが、そのかわりに宿木でステータスを削っているのだ。
魔法にしろ、それ以外にしろ。
圧倒的に決定打が不足していた。
そんな中で、ナフのHPがいよいよ尽きようとしている。
まずい、と思うが――
「ココマデノ、ヨウダナ!」
――ナフのHPがギリギリであることを、タウラスが悟ったのだろう。
タウラスが、ナフに向けて飛びかかった――!
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