第301話

 俺達が用意した切り札は、幾つかある。

 一つは斬華。

 先程のような複数体のお供を召喚するタイプの技にはとても有効だ。

 だが、かなり派手に使ったから、向こうも警戒しているだろう。

 これ以上、お供を呼び刺す技を使ってくるとは思えない。

 逆に言えば、牽制できているのでそれでいい。


 もう一つが聖者の防陣。

 もともと、かなり使い勝手がよいレアスキル。

 加えてタウラスがスキル以上の効力を誇る”特異”の呪いをばらまけるなら。

 回復手段としても期待できた。


 ともかく、現状切った切り札はこの二つ。

 他にも極昇華フルエンチャントなど、切れる切り札は幾つかある。

 だが、それでもタウラスは強力だ。

 切った切り札を、有効に使う必要があった。


「行くぞ……斬華!」


 聖者の防陣が効果中、燃え尽きた剣の代わりに、新たな剣を炎剣に変える。

 これは、聖者の防陣の有効活用方法の一つだ。

 なにかと言えば、炎剣は味方を巻き込む危険性があるが、聖者の防陣がある間は味方が一箇所に集まる。

 何より、聖者の防陣で得られた防御バフは、俺の炎剣を問題なく耐えれる数字になっていた。


 室内を丸ごと覆う炎剣に、タウラスは面倒そうな表情をしながら避けていく。

 だが、限界もあるだろう。

 エリアを覆い尽くすかという炎の柱。

 これを避けるなら、インファイト以外の方法はない。

 俺の手元を攻撃するのだ。


 もちろん、こちらの攻撃と防陣の効果が終わるのを待つ選択肢もある。

 だが、それをさせないための仲間の存在だ。


『ヒーシャ、私達も』

『うん!』


 そして、ナフとヒーシャも遠距離攻撃を開始する。

 ナフは斧攻撃を利用した、斧を振るって衝撃波を飛ばす攻撃。

 ヒーシャは、光魔法を盲撃ちしていた。

 どちらも普段使わない攻撃方法。

 そうそう当たるはずもないが、それでも手数は正義。

 タウラスを追い詰めていく。


 ここから奴が取る手段は二つ。

 俺達の方へ接近してくるか、地面に潜るか。

 回避が容易なのは明らかに地面に潜る方法。

 だが、


 タウラスは、正面から突っ込んできた。


「!!」


 どうやら、地面を潜るのにはやはり、ある程度の条件かリキャストが必要なようだ。

 そして、正面から突っ込んできた時点で、俺達の狙い通りということになる。

 迫りくるタウラスに対し――


 俺は炎剣を手放した。


「おおお! 極彩!」


 火魔法による五色バフを起動する。

 もともと、炎剣は火力をアップする類の攻撃ではない。

 向こうにステータスがないから、単純な比較は難しいが。

 俺の本命は、いつだってAKTアップからのステゴロだ……!


 タイミング、威力、速度。

 すべてが最高だった。

 俺の一撃が、ようやくそこでタウラスに突き刺さった。

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