第300話
『ヒーシャ! 聖者の防陣を!』
『は、はひっ!』
咄嗟に叫ぶ。
使うならこのタイミングしかないだろう。
俺はそのまま、ヒーシャの方へ振りかぶり炎剣を振りかぶる。
「聖者の防陣!」
現れる四方結界。
直後、俺の炎剣がヒーシャの脚を掴む腕に向かって放たれるが――一歩遅かった。
腕はヒーシャを放すと、また地面に消えた。
ヒーシャも慌てて飛び退き、誰もいなくなった場所に炎剣が振り下ろされた。
『今のうちに中に入ってバステの回復だ』
『もう入った!』
中に入れば、バステの回復が付与される。
俺もナフも、再び身動きが軽くなった。
『あ、危なかったです』
『でも、問題なく間に合ったよ。それに、ここから立て直せる』
安堵する二人。
ふと、クロがあることに気付いた。
『ヒーシャ、呪われてる』
『えっ!?』
『ダイヤモンドオーガと同じもの、治療は現在進行系』
つまり、さっきタウラスに触られたとき、呪われたんだろう。
本人に自覚がないあたり、そこまで効果は強くないようだが。
後、聖者の防陣できちんと治療できているらしい。
ただ、バステの回復とはちがい、すぐに回復できるわけではなさそうだ。
『聖者の防陣の効果終了時回復で、全快』
『よ、よかったです』
『悪いことばかりじゃないぞ、見ろ』
そして俺は、再び現れたタウラスを見るよう視線で促す。
何がいいたいかは、見ればすぐに分かる。
やつの手がただれているのだ。
炎剣を両手で受け止めたからだろう。
治癒がすでに始まっているが、すぐに治る気配はない。
『こっちの攻撃も、きちんと有効ってわけだ』
『効いてないと困る』
タウラスは、これまでと変わらず挑発的な笑みを浮かべている。
次にどんな手を打ってくるか、理解ったものではない。
あの地面を潜る攻撃が、触るだけで済むならそれでいいが。
もっと苛烈な攻撃に使われたら溜まったものではないのだ。
とはいえ、あそこで触れるだけだった時点で、そこまで心配は要らないだろうけど。
『こっちも、一つ切り札を切った。だったら、それを有効に使わないと行けない』
『は、はい』
聖者の防陣の効果時間は三十秒。
すでにある程度、時間は過ぎてしまっている。
だが、今すぐに効果が切れるものではない。
ここは、その効果が切れる前に、向こうを追い詰める必要があるだろう。
『なんとかタウラスを、防陣の効果範囲内に引きずり込んで、こっちのペースで戦う』
『シンプルだけど、確実だね』
方針は決まった。
そろそろ、反撃に移っていくとしよう。
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