第259話
「とりあえず、一つ一つ眼の前の課題を片付けていくのがいいんじゃないか?」
「っていうと?」
「将来のことは一旦置いておいて、まず挑戦すべきことに挑戦していくんだ。そういうのは得意だろ?」
「そんなことでいいのかなぁ……」
ナフは、眼の前のことから逃げるタイプじゃない。
そこに課題があると分かっていれば、挑戦していける真面目さがある。
今まではそれが、本人にとってはやればできると思えることだったから、彼女の自己肯定感は満たされなかっただけで。
「いいんだよ、何せ次は魔神討伐だぞ?」
「そういえばそうかぁ。……正直、魔神討伐はスケールデカすぎてピンとこなかったけど」
「そして、それを片付ければ今度はレプラコンでの活動だ。そっちなら、ハードルは高いけど想像のつかない困難じゃないだろ?」
「まぁ……確かに」
鍛冶師としてそれなりに研鑽を積んだ今なら、母親の天才性も理解できる。
そしてどれだけ困難だろうと、レアスキルを手に入れた今のナフなら、いずれ母親と同じものが作れる。
少なくとも、他人事ながら俺はそう確信していた。
「これからナフが挑むのは、達成すれば誰もがナフを認める偉業ばかりだ」
「そこまで大げさかどうかはともかく……そうだね、皆の期待は……伝わってくる」
「だったらその期待に答えればいい。俺はナフを応援してるし、ナフならできると信じてる」
正直、周りの人間もそう思っているだろうが、ナフはとても優秀だ。
才能があって、将来有望。
間違いなく、こんな風に悩む必要がないくらい、ナフは頑張っている。
最後に必要なのは、自分が自分を信じられるかという一点。
「それは……ツムラさんが私を仲間……えっと、ぱ、パートナーとして、信頼してるから?」
ナフにしてみれば、踏み込んだ言い方だ。
ヒーシャと同じように、彼女もまた俺とはそれなり以上の信頼関係を築いている。
そのことは理解しているつもりだし、今後も今と同じように接していればそれ以上も自然と発生するかもしれない。
多分、あの出歯亀妖精はその時も、今みたいにぐーすか寝てるんだろうが。
「そうだな。ナフは俺のパートナーだからな」
「あ、うう……うん」
さすがに、はっきり言うと少し気恥ずかしい。
何にせよ、それならまずは眼の前のこと……だ。
「いよいよ、魔神討伐は目の前だ。俺達はそのために万全の対策をしてるつもりだが、正直本当に討伐できるのか、そもそも魔神が降臨するのかすらまだ不透明」
「うん」
「それでも、やるとなったからには――勝とう、ナフ」
「うん!」
改めて、決意を一つにした。
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