6.ボスと戦うためにレベリングするレベリング中毒者
第186話
「……初めて聞きましたよ、魔物を湧かせ続ける“核”のあるエリアに迷い込むなんて」
レベッカさんの、いろいろな感情が入り混じった声が室内に響く。
俺達は現在、ギルドの応接室に案内されて、レベッカさんに事情を話ていた。
核の一件から一夜明け、疲れも少しは取れたところだ。
流石に、昨日すべてを話すにはあまりにも俺達は疲れすぎていたから、レベッカさんが取り計らってくれたのである。
そして、こうやって事情を改めて話たわけだが……
待っていた反応は、真剣でありながらも困惑と心配が入り交じるものだった。
「レベッカさんですら知らないとなると……下手するとこれまでに例のない事件だったかもしれないな」
「少なくとも、ニシヨツのダンジョンでそういった事例が報告されたことはありません」
まぁでも、それは当然といえば当然かもしれないが。
どう考えても、あんな場所に迷い込んで普通は脱出できないだろう。
俺達以前にその事例が発生していても、そのまま行方不明になっていると考えるのが自然だ。
俺達がアレを突破できたのは、相応の実力以上に、手に入れたスキルや必殺技があの状況で有効だったのが大きい。
もしもあのエリアを何事もなく突破できる冒険者がいるとすれば、それはレベル40を越えた一流の冒険者くらいだろう。
少なくとも、ニシヨツを拠点としている冒険者では、不可能なはずだ。
「……おそらく、そのエリアに迷い込んだのはツムラさんたちが初めてだと思います」
「と、いうと?」
「ニシヨツのダンジョンを拠点とする“愛子”は、ツムラさんが最初の例ですから」
まぁ、そう言われるとそうなんだろう。
今回の件に、俺の愛子としての“特異”が関わっていないとは思えない。
事件体質というのは、まったくもって厄介なことだ。
「――でも、それだけじゃない」
ふと、クロが揺り籠から顔を出す。
「愛子の他にもう一つ、“核”は反応した」
曰く、愛子だけでは、今回の件は起きなかった。
もう一つの条件が揃って初めて、“ダンジョン”は核という魔物のいる場所まで俺達を誘導した。
クロはそう言っている。
「じゃ、じゃあそのもう一つっていうのは……」
話を聞いていたナフが、前に乗り出して問いかける。
視線は、ほんの一瞬ヒーシャを向いた。
「呪い。ヒーシャの母親にかけられ、ヒーシャにも遺伝した――」
一拍。
ほんの少しだけ、クロは沈黙を挟み。
「魔神タウラス。あのダンジョンの主である奴の呪いを受けたヒーシャと、愛子ツムラ。二人がいて、初めてダンジョンが目を覚ました」
そう、言った。
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