第187話
「え……魔神って、あの魔神?」
「魔神レプラコンの事ですよね……魔神タウラスって……?」
ヒーシャとナフが、魔神タウラスという言葉にそういう反応をした。
これは、この世界では普通の反応だ。
俺も魔神については多少本で読んだことがあるが、タウラスの名前は聞いたことがない。
「お二人はこの世界で一番有名な魔神レプラコンについてはご存知とは思いますが……そもそも魔神とは何だと思いますか?」
「えっと……魔物のもっと凄い奴ですよね?」
レベッカの問。
対するヒーシャの答えは近しいが正解ではない。
「魔神とは、魔物の上位存在です。私達人間にとっての女神様と考えてください」
「は、はぁ……」
魔神。
この世界が誕生した時、世界には大地と魔力、そして魔力の根源である神がいた。
女神ヴィエナ・メラノス。
この世界の人類が信奉する神にして、ステータスを人類に与えた存在。
対して、魔物を作り出した神もいた。
これを一般的に魔神と呼ぶ。
「これは、一般的に知られてはいないのですが、この世界に神は十二柱いると言われています」
「そ、そんなに!? 女神様と魔神レプラコンだけじゃなくて!?」
「はい、その中で女神様と敵対し、人類を攻撃する存在を“魔神”と呼称します」
一般的にこの世界で知られているのは、女神ヴィエナと魔神レプラコンだ。
ただ、両者に直接のつながりがあるわけじゃない。
十二柱の神の中の二柱でしかない。
ではなぜ魔神レプラコンが知られているかというと、実在するからだ。
レプラコンはいまからずっと昔、実際にこの世界に降臨し人類を滅亡一歩手前まで追い詰めた。
そして、
「魔神レプラコンは討伐されたって聞いたんですけど、他にも魔神がいるって、それとっても危ないんじゃないでしょうか……」
「そうでもないぞ、魔神は特定の条件を満たさないとこっちの世界に出てこれない。でなけりゃレプラコンが出てきた時に、他の魔神も出てきて世界は終わってる」
だが、そうはならなかった。
討伐された――誰に? 愛子にだ。
レプラコンが降臨した時、この世界にやってきていた愛子が仲間たちと共にそれを討伐した。
これは、この世界においてはもはや神話レベルの昔の話だが、事実として歴史に記されている。
そして、だからこそ女神を信奉する人間にとって、魔神は一柱であることが望ましいし――すでに討伐されているということにしたほうが、民衆は安心できる。
「だから一般的に、十二柱の神の存在は公にはされていません。ですが、知ろうと思えば知ることはできます」
ここらへんは、中世風異世界であることが大きいな。
現代みたいに情報封鎖をしなくても、公にしなければ知られることはない。
「ですから――これは、あまり吹聴しないほうがいいのですが」
「ん? なんだ?」
――と、ここまでは俺も知っている情報だった。
の、だが。
「魔神は、すでにレプラコン以外にも二柱討伐されています。記録に残されていない物を含めれば、もう少し増えるかも」
流石レベッカさん、俺が知らないところまできっちり把握していた。
っていうか、結構気軽に討伐されるな魔神……
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