第185話
剣を振り抜いた時、確信があった。
勝った。
確かにそう感じたのだ。
疑いようのない手応えが、両手に伝わった。
直後、核は凄まじい音を立てて弾けていく。
間近で聞いているとやかましいことこの上ないが、情けない断末魔と思えば悪くない。
俺だって転生者、ざまぁ展開の一つや二つこなせるというものだ。
「ふぅ」
炎剣が燃え尽きながら、着地。
アレだけ重かった大斧が、もはや手元に残ってすらいない。
だが、そうしただけのことはあった。
見れば、アレだけうじゃうじゃいた魔物が一気に消えていく。
このまま、ダンジョン事態も消滅してしまうだろう。
『これ、大丈夫か? このまま消滅に巻き込まれたりしないか?』
『大丈夫。このエリアが消滅すると同時に、吐き出される。体内に入り込んだ異物みたいなもの』
『俺達は吐瀉物か』
ともあれ。
ヒーシャとナフの元へ戻る。
ふたりとも、消えていく魔物を見ながらその場に立ち尽くしていた。
呆然と……というよりは疲弊しきった様子で。
そりゃあそうだろう、ここまでずっと戦闘し続けてきたんだから。
俺だって、正直どっと疲れを感じているところだ。
「ツムラさんっ、終わりましたね!」
「おつかれ、お互い無事で何よりだね」
やれやれと、三人で大きくため息をつく。
ほんと、今回ばかりは流石の俺でも二度とごめんだ。
せめて経験値を普通の量にしてから出直してきてくれよな。
……いや、考えてみると。
経験値が5点じゃなければ、狩り場としてここは最高峰のものがある。
クソ、もしそうだったら、俺は一生ここに籠もってレベリングをするっていうのにな!
でもなぁ、5点じゃなぁ。
レベリングにはある程度効率を求めるタイプの俺にとって、それはどうしようもなく許容できない点であった。
気がつくと、俺達はダンジョンの入口にいた。
長丁場だったからか、外はすっかり日も落ちかけていて、一日が終わろうとしている。
もし、あの場所から抜け出せずにいたら――そう考えると少し怖くなってくるな。
「あ、ツムラさん! あの核ってダンジョンハザードのボス魔物と扱いは同じなんだよね!」
「ん? ああ、多分そうだろうな」
「あ、アタシ達もレベル……上がってますね、えへへ」
ふたりとも、もうすぐレベル35だ、そのときには果たしてどんなスキルを入手するだろう。
人ごとながら、少し楽しみだな。
ともあれ、俺もステータスを見てみる。
そもそも、あの核を倒せばどの程度経験値が得られるのだろう。
気になったのだ。
「――倒すだけで1500点?」
何だと……?
じゃあ、あの連戦で手に入れた経験値と、おそらく今夜もらえるであろう女神様のボーナス経験値。
それを合わせれば……一回アレをクリアするだけでレベルが一つ上がる!?
「……俺、もう一回あのエリアに迷い込んでくる」
「つ、ツムラさん!? 何を言ってるんですかツムラさん!? 待ってくださいー!?」
発作を起こし、ダンジョンに再び入ろうとする俺。
――二人がかりで、止められてしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます