第184話
どうする、どうする、どうする!?
残りMPは10、後一回なら斬華が使える。
しかし、斬華を使うための武器が手元にはない。
サーチハンドを燃やすわけには行かないし、何より燃やしたところで勝てる見込みがない。
詰み。
その言葉が一瞬脳裏をよぎり、すぐに振り払う。
むしろ今はチャンスだ、間違いなくこれは発狂モード。
ここに大ダメージを与えれば核は壊せる。
ゲームでも、この世界でも、そのお約束は変わらない。
それが解っているからこそ、考えるしかない。
考えて、考えて、考えて――
一つ。
思いついた。
思いついてしまった。
正直、とんでもない選択肢だ。
避けなくてはならないと思う。
でも、使えばおそらく俺は勝てる。
そんな、選択肢。
斬華に使える、最後の武器。
「――斧だ」
ナフがさっきまで使っていた大斧。
俺がアイテムボックスに回収し、未だ眠っているそれが、ある。
しかしそれは、さすがに。
ナフにとって、この大斧は長い付き合いの武器だろう?
だから、躊躇った。
一瞬、ほんの一瞬。
そこに――
『そうだツムラさん、私の大斧がアイテムボックスにあるよね! それを使って!』
――ナフが、そう呼びかけてきた。
『いいのか?』
『言いも何も、それしかないよ! 大丈夫だって、あの大斧はオヤジが気合い入れて作った奴だから』
つまり、また作れば言いわけだ。
ドワーフ工房の店主、ナフの父親。
彼の作る武器は、最高級の既製品。
この大斧もそうだというなら。
俺は、これを使うべきなんだろう。
『解った。……悪いな』
『いいんだよ。だから……勝って!』
「――ああ!」
アイテムボックスから大斧を取り出す。
重い。
斬華に使う剣は安物のショートソード。
比べるまでもなく、重量は段違い。
だが、それ以上に。
「この斧は……重いな」
背負ってきた思いが、そこにはあった。
「――斬華!」
それを、炎に変える。
武器の形状は斧でも、巨大な炎剣にしてしまえば取り回しは変わらない。
斧の形を保てないのは申し訳ないが、ただでさえ剣の戦闘は拳ほど習熟していないのに、斧なんて振り回せるわけがないのだ。
雷神の効果時間も残り少ない。
この一撃で、終わらせる!
そう心に決めて、俺は手近な魔物を踏み台に、飛び上がった。
『ツムラさん!』
ヒーシャがこちらを目視したことで、バフと光の壁が飛んでくる。
MPで言えばヒーシャだってかつかつだろうに、最後までありがたい限りだ。
『こっちはなんとしても数秒耐えるから、ツムラさんはここで決めちゃって!』
ナフの言葉に背中を押され、俺は一気に核へと迫る。
光弾は絶え間なく降り注ぐが、DEFがあればそのすべてを弾くことができる。
最終的に、あまねく降り注いでいた光弾は、俺にだけ向けられる。
だが、それでも効かない。
むしろナフがどうにかしなきゃいけない光弾が減って、楽になったくらいだ。
「焦ったな、ようやく。――その隙、絶対に逃さない!」
剣を構え、それを振るう。
攻撃バフ、揺り籠、斬華。
俺の持てる全てを注ぎ込んだ一撃は――
核を、一刀のもとに両断した。
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