第178話
『レベルを上げよう』
『どういうこと、ですか?』
通信越しにヒーシャの質問が飛んでくる。
向こうもミノタウロスを倒したからか、比較的余裕がでてきたようだ。
こっちは相変わらず防戦一方だが、負けることは早々ない。
『俺の次のレベルは35だ、新しいスキルを覚える』
『ここの魔物は経験値5しか落とさないけど、さすがにこんだけ倒せばそろそろレベル35も見える。そうだよね』
『ああ』
ナフの言葉を肯定しながら、迫りくるクローバットを倒した。
こいつ、本来ならもうちょっと経験値もらえるんだけどなぁ、と嘆きたくなるがそれはそれ。
『基本的にスキルってのは、その時一番必要としているものを女神様が与えてくれる。もちろん、普段遣いでも有用なモノを』
『それを使えば、この状況をひっくり返せますよね!』
『そうでなくっちゃ困る』
女神様にとって、魔神は敵対する相手だ。
だったら、その中で愛子がピンチを迎えていたら助け舟を出すだろう。
この世界で冒険者をしてきたからこそ、確信できる程度に女神様への信頼は篤い。
『このまま行けば、あと少しでレベルが35になるはずだ。そっちはどうだ?』
『どうだろう、こっちに進めばいいんだよね、クロちゃん』
『そう。察知している魔物の気配が、私達以外に意識を向けているものが増えてきた。二人がこちらに近付いている証拠だ』
クロのレーダーを、俺達は地図代わりにしているのだ。
レーダーには、敵意を向ける魔物がびっしりと映っていると思ってもらえれば言い。
その魔物は、基本的に俺達を囲んでいるが、一部は別の方向へ向かっている波がある。
その波が、こちらに近づいているということは、ヒーシャとナフが接近しているということ。
「よし、このままレベルを上げて二人を待つぞ」
言葉とともに、俺は迫りくる魔物を見た。
――バトルオーガだ。
それは、二人と出会うきっかけになった魔物。
当時は、火魔法を使って何とか攻撃を通すしかなかったが――今は違う。
やつの握っている棍棒を避けて、回り込みながら懐に潜り込む。
後は一方的だ。
拳で奴を滅多打ちにすれば、あっという間にバトルオーガは倒れる。
思えば、ずいぶんと強くなったものだ。
相変わらず人型相手の回避は苦手なままだが。
ドラゴンの炎には突っ込めるのに、不思議なもんだ。
とはいえ、これでレベルが上がった。
ここで、この状況をひっくり返せるスキルが手に入らなかったら、俺達は詰みだ。
いや、やりようはあるだろうが、一気に難しくなるだろう。
だから、祈りを込めてステータスを開こうとして――
「つ、つきましたーーーっ!」
ヒーシャの声が、核のあるクレーターに響き渡った。
確認するタイミングを逃したが、それでも問題ないくらい嬉しい援軍の登場だ。
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