第175話

「これで……どうだ!」


 言葉とともにふるった炎剣。

 それが燃え尽きて消えていく。

 俺は、斬華を1本分、クレーターに屯する魔物向けてがむしゃらに振るった。

 結果は――失敗。


「魔物が補充されるスピード、倒すスピードより早い」

「やたらクレーターが広いのが問題だな、斬華の攻撃範囲で覆い尽くせないってどうなってるんだ」


 シーン攻撃だぞシーン攻撃。

 使えば画面の敵を一掃できるくらいのイメージだったそれが、まさか通用しない広さの“画面”が存在するとは。

 とんでもない話だ。


 とにかく、あの核を破壊しないことにはここからの脱出は不可能。

 斬華を振るって、道を開けようにも敵がポップするスピードが早すぎる。


「幸いなのは、敵は一定数しか増えないってところだな」

「さすがに、無限に湧かせるのは無理なんだと、思う」


 話しをしながら、俺達はクレーターを見下ろしている。

 現在は斬華で周囲の魔物をふっとばしたからか、向こうは警戒して突っ込んでこない。

 時折突っ込んできた魔物も、展開している水球でふっ飛ばされていく。

 この水球、味方がおらず敵が多い状況だと結構便利だ。


「今なら……少し試せるか。火よ!」


 そして、あることを思いついた俺は火魔法を使う。

 使用する瞬間だけ揺り籠でMAGをアップし、放たれた時点でもとに戻す。

 出来上がったのは、俺の撃てる最大火力の白熱針。

 それを、俺はラジコンのようにコントロールしながら核に向かわせるのだ。


 魔法は魔物に当たると魔物にダメージを与えて消滅する。

 だからこの白熱針は、自由自在に動かせるようにして魔物に当たらないようにした。

 クレーターを守る魔物の中には、空を飛ぶ魔物もいる。

 そいつらをかいくぐって、何とか核にぶち当てるのだ。


「微妙に動きが滑って操作しにくい!」


 アクションゲームで、キャラが移動を終えて止まるのに若干のブレーキが必要なことがあるが、あんな感じだ。

 マ◯オでいうところのルイ◯ジみたいな滑りやすさがある。

 だが、何とか魔物をかいくぐって核にぶち当てて――


 凄まじい炸裂音が、クレーターに響いた。


「当たった!」

「効いてる、はず」


 魔物たちが狂乱し、叫ぶ。

 中にはこちらがしたことに気付いて、向かってくるものもいた。


「くそ、ダメージをある程度与えた結果、ギミックが作動した感じだな!」


 おそらく、最終的に魔物のラッシュが発生するだろう。

 俺は斬華を構えて、迫りくる魔物を切り払う。

 残る斬華用の剣は三本。

 そもそも、MPだって斬華三回とさっきの白熱針を三回使えばほぼすっからかんだ。


 ダメージこそ与えているものの、核に変化は見られない。

 あと何発か打ち込んだとして、それで核を倒し切れるのか?

 難しいだろう。


「ジリ貧だな……もう少し突破口とか、情報はないのか」

『……』


 その言葉に返事はない。

 クロが揺り籠の中に入ったから当然だが。

 同時に、その沈黙はクロが何かを思案しているようにも思えた。

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