第174話

「……これだけ厄介な相手でも、経験値は一律5点か。笑えないな」

「ここじゃなければ、数千点は堅い相手」

「それを聞くと、更にげんなりしてくる」


 しかも、ドロップアイテムもないと来た。

 せめてもの救いは、女神様がくれる善行経験値が、普通よりは多いだろうってことくらい。

 この状況、解決しないとどう考えてもヤバイからな。


「んで」


 気を取り直して、揺り籠で通信を行う。


『こっちはドラゴンを倒したぞ、そっちは大丈夫か!?』

『た、倒したんですかぁ!? ドラゴンをお一人で!?』


 ヒーシャの驚きに満ちた声が聞こえてきた。

 様子を見るに、ふたりともまだ大丈夫そうだ。


『さっすがツムラさん! こっちは正直ちょっと危ない、けど戦闘事態は安定してるよ』

『ならよかった。……行けそうか?』

『――


 ナフからは、それ以上返事がなかった。

 いつにない真剣な声音。

 おそらく、向こうは言葉以上に危ない状況だろう。

 だが、勝機はあるし、それをナフは疑っていない。


 なら、信じよう。

 二人は、それくらい強い。


『俺達はこのまま、おそらくあるであろうこの場所の“核”を目指す。二人はミノタウロスを倒したら、目指してくれ』

『ひゃ、ひゃい!』


 伝えることを伝えれば、後は十分だ。

 俺は、ドラゴンのいた場所を後にした。


 そのまま先に進みつつ、ついでに蓮華の検証をする。

 残念ながら、斬華のような広範囲攻撃にすることはできなかった。

 初級だとイメージに使えるMPが足りないのだ。

 こればかりは、いくら自在にイメージを作れる俺でも難しい。


 とはいえ、水球によるノックバックはかなり有効な手段だった。

 魔物の数は膨大で、いちいち相手している暇はない。

 吹き飛ばせば、無駄な敵の相手をしなくて済むし、何よりMP消費が少ない。

 今のところまだまだMPに余裕はあるものの、斬華はなんだかんだ、一回の使用でMP10は持っていかれるからな。


 そうこうしているうちに、俺はそこへたどり着いた。

 方法は簡単で、クロに最も魔物がいる場所を探知してもらったのだ。

 そこが敵の心臓であると考えて。

 そして――


「……やばいな」

「やばい」


 俺達は、それをながらつぶやく。

 そこはクレーターのような場所だった。

 クレーターの中に、無数の魔物がいる。

 これまでの比じゃない数。

 はっきり言う、冗談じゃない。


 そして、中央には淡く光るキューブのようなものが鎮座していた。

 いかにも、核って感じの形状。


「あのキューブ、一番強い反応感じる。間違いなく、アレ」

「だろうな。……しかし」


 どうしたもんかな、この数。

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