第172話
恐ろしいことに。
俺の拳は拮抗した。
「――――!!!!」
「くっそ、この角、重い……!」
それまで、打ち込めば軒並み一方的に敵を吹き飛ばしていた拳が、拮抗した。
少しショックだ。
だが、若干でもATKはこちらが勝っている……!
空中で激突したため、俺は角を受け止めながら地面に着地。
足に力を込めて角を両腕で掴むと、横に受けながす。
「――!!!!」
サラマンブルドラゴから驚きが伝わってくる。
まさか、自分の攻撃が受け流されるとは思わなかっただろう。
しかし向こうはすぐに気を取り直して、鉤爪を振り下ろそうとしてくる。
「当たるかよ!」
俺はできるだけ速度をだして、その鉤爪をすり抜けて懐に潜り込む。
そのまま、奴の胴体に拳を叩き込んだ。
「―――――――!!!!」
「効いてる!」
よし、と思いながら更に拳を叩き込んだ。
数発、連打がモロに懐へ入る。
サラマンブルドラゴは大きくのけぞり――奴が俺を上から見下ろした。
そして、のけぞった身体を持ち上げ、こちらに倒れ込んでくる――!
「押しつぶされるっ!」
さすがにそれはまともに受けたくない。
サーチハンドによれば、相変わらずATKに変化はないが――
それでもだ!
大きく後ろに飛んで、着地。
サラマンブルドラゴは直後、大きく地面を揺らした。
「とんでもないモンスターだな……」
怪物、という意味で。
とにかく、そこからは同じことの繰り返しが続く。
相手の攻撃をくぐり抜けては、懐で拳を叩き込む。
向こうが倒れてきたら、距離を取る。
何度も、その繰り返し。
「……ああもう、タフ過ぎる! あいつのHPどんだけあるんだよ!」
「多分、七桁」
「なっ……」
七桁!?
それ、倒すまでにどんだけかかるんだよ。
「それに、DEFも高いからあんまりダメージが通ってない」
「だろうな……クソ、俺の魔力を使った攻撃はだいたい炎属性だからな」
とにかく、ダメージが出ない。
ダメージを通そうにも、炎属性を付与しないと俺のダメージは上がらない。
どうしろってんだ。
攻撃と退避を繰り返しながら、考える。
サラマンブルドラゴの特徴を考えてみよう。
炎属性の攻撃には耐性がある。
ATKがとんでもなく、DEFもそこそこ高い。
逆にAGIはほとんど無いようだ。
あの巨体で、動き回られたらとんでもなく厄介だったが、その様子はない。
次に、こちらの手札。
有効札がない、高火力の攻撃は大体炎を使う。
おそらく向こうにこちらへダメージを通す手段はないから、このまま殴り続けていれば勝てるが、途方もない時間がかかる。
いっそ、あの全身プレスを受け止めてみるか?
理論上は可能だろうし、受け止めた状態で攻撃すれば、一方的に倒せる。
だが、俺にそんな度胸があるかと言うと――
「――度胸?」
そう考えて、俺は。
あることを思い出した。
逆転のための、鬼札って奴だ。
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