第170話

『わかった、どんな魔物も経験値が一律5点になってるんだ』

『そ、そんなぁー』


 嘆くヒーシャに、俺は心底同意する。

 アレだけ倒して5点しか入ってこないって、何かのバグだろ。

 クレームを入れてやりたくなる。


 ともあれ。

 そんな巫山戯た事実も、見方を変えれば重要な情報になる。

 ポイントはもらえる経験値が5点であるということ。


『ダンジョンハザードと同じ』

『あ、そっか。ダンジョン内で起きた異変で、魔物を倒してもらえる経験値が5点しかない。共通点は確かにある』


 ただ、ダンジョンハザードは非常に稀なことだが、定期的起きる現象であるのに対して、こちらはまるで聞いたことのない例だ。

 クロですら、この状況に説明がつけられない時点で、明らかに事態はダンジョンハザードより更に深刻である。

 幸いなことは、巻き込まれたのが俺達三人だけだったということか。


『……あ、あの。アタシ達がこうなったのって、多分、偶然じゃないですよ……ね?』

『そうだな、ヒーシャの言う通り何かしらの事件に巻き込まれたことは間違いない』


 事故ではなく、事件。

 誰がそうしたか、どうやってそうしたか。

 その二点については不明だが、は、ある程度想像できる。


『愛子と、呪い。この二つに目をつけた奴の仕業だろうな』

『多分、その二つの特異がなければ、ここに転移魔法陣で連れて来る、不可能』


 相手の狙いは俺とヒーシャ。

 そして、俺達の特異を用いてそいつはここへ俺達をおびき寄せた。

 後は、魔物たちが俺を料理してくれるのを待つだけ、というわけか。


 少しずつ、想像の余地がでてきた。

 一番最初に思い至ったのが、ここからの脱出方法だ。


『……どこかにこのダンジョンの核があるはずだ。それがどんな姿をしているかわからないが、それを探そう』

『は、はい!』

『解ったよ、ツムラさん』


 ダンジョンの核。

 ダンジョンハザード中であれば、ボス級の魔物がこれに該当する。

 この謎ダンジョンの原理がハザードと同じなら、どこかに核は存在するはずだ。


 というわけで、慎重に移動しながら核を探そうということにナッたのだが。


『――まずい』


 不意に、ナフがそういった。


『何がだ?』

『新しく開けた場所に出たんだけど、そこにいる魔物たちに混ざって――ミノタウロスの姿を見た』

『……!?』


 思わず、叫びそうになるのを必死に抑える。 


『気をつけろよ! 可能ならすぐに救援に向か――』

『――ツムラ、無理』


 俺の言葉を、クロが止めた。

 なぜなら俺もまた、新しい開けた場所に出て――そいつに出くわしたからだ。



「……ドラゴン」



 ぽつり、と口にする。

 異世界モノの定番、ドラゴンがそこにいた。

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